国家試験「知的財産管理技能検定」合格者にインタビュー!宇宙産業を支える知財担当者の勉強方法とは? 2020.12.03

知的財産管理技能検定
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今回は、国家試験「知的財産管理技能検定(以下、知財検定)」について、JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)の知的財産課で働くみなさんにお話を伺いました。
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知的財産や知財検定について詳しく知りたい方はこちらもチェック!
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知財検定2級合格・知的財産アナリスト(コンテンツ)取得
田中良恵 さん
夜勉派 独学
研究開発部門 研究戦略部
知的財産課 主任 
勉強時間
1日2時間×2週間

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知財検定3級合格
A.E さん
夜勉派 独学
研究開発部門 研究戦略部
知的財産課 主任
勉強時間
1日1~2時間×1カ月半

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試験に向けて勉強中!
皆川健太 さん
夜勉派 独学
研究開発部門 研究戦略部
知的財産課  課長
田中さん:私たちはJAXAの知的財産担当者として勤務しています。

JAXAが主に取り扱う知的財産は特許権※1と著作権※2で、研究成果を特許として守っているということはイメージできる方も多いかもしれません。
※1 発明を保護するための権利
※2 作者の思想・感情が表現された文芸・学術・美術・音楽などを保護するための権利


JAXAの公式サイトでも、「フレキシブルな太陽電池」や「セラミック繊維強化複合材料」など、JAXAが保有する特許技術のうち、広く他社・他分野の事業に利用可能で技術活用の可能性が特に高いものを一覧にして紹介しています。
使ってみたいJAXA特許/JAXA

一方の著作権については、研究で使用するプログラムや解析ツール、また、ロケットなどの画像・地球観測衛星などの衛星データから作成した画像をはじめとして保護の範囲に含まれています。一部の写真・動画に関しては申請や利用料の支払いによって企業・団体でも利用が可能です。

有償でのJAXA画像・映像のご利用について/JAXA

そもそも知的財産に関する業務は幅が広く、JAXAでは具体的に「どのような形で協力企業や共同研究企業と知的財産に関する契約を結ぶのか」、「研究の成果を特許として出願するのか、もしくは機構内のノウハウとしてのみ管理するのか」などを検討します。

加えて、特許として出願した場合には、「その特許をどのようにして他の企業に使ってもらうのか」などの戦略を練るライセンス業務も私たちの大切な役割です。

皆川さん:実は、私たちの所属する知的財産課は機構内で分散していた知的財産業務を集約して、2019年10月に発足しました。

現在は知的財産の関連業務に加えて、研究開発活動の成果を知的財産として価値の高いものにするために、知的財産ポリシーの制定や職員向けの研修の実施など、機構内の知的財産の取り扱いを改善するべく取り組んでいる最中です。 
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田中さん:私はもともと法学部出身ですが、学生時代は知的財産に触れることもなく、一旦は全く別の職種に進みました。ただ、そこで働くうちに知的財産が世の中で注目され始め、強く興味を引かれたため大学院への入学を決心しました。

修士課程を修了後JAXAに就職し、その後、資格として知識を可視化したいと感じたため知財検定の受検に踏み切ったのです。

皆川さん:私も法学部出身で、知的財産について授業を受けたこともありました。

卒業後、法務担当としてJAXAに就職したのがちょうど国際宇宙ステーションの打ち上げ前だったのですが、日本はアメリカやカナダ、ヨーロッパなどと国際宇宙基地協力協定を締結しており、その中に宇宙ステーション内での研究成果や発明などの知的財産をどのように扱うべきか規定されていました。

このときに初めて知的財産を意識するようになり、他の法務系の業務をこなしながら勉強を始め、今は知財検定の受検を目指しています。

A.Eさん:私は学生時代、法律とは全く別分野の勉強をしていましたが、友人の手伝いでチラシのデザイン制作をした際に、画像やフォントの使用許諾について少し学んだことがありました。

ただ、実際に知的財産について勉強するきっかけとなったのは、以前、JAXAとは別の職場で働いていたときにフランチャイズ店舗の取りまとめを行っていた際のことです。


店舗の方々と知的財産に関する意識を共有することの難しさを感じ、それをきっかけに知財検定に向け勉強を始めました。 
A.Eさん:私は当時の同僚と2人で問題を出しあったり、励まし合ったりしながら1日1時間から2時間ほど、1カ月半にわたって勉強しました。

田中さん:私は直前にならないと集中できない性格もあり、2週間、公式テキストと問題集を並行して1日2時間の勉強を進めました。

皆川さん:私はまだ勉強中の身ですが…(笑)

働きながらの勉強では、短い時間・少ない勉強量でどれだけ知識を定着させるかがポイントだと思うので、テキストも1ページ目からではなく、今進めている業務に近い内容の部分を読んだり、会議で出た専門用語を深堀りして調べたりと、日々の業務と知識をすり合わせながら試験に備えています。
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A.Eさん:宅建士資格の勉強をしたことがあったため、法律の条文を読むことに対して慣れはあったものの、知的財産にかかわる仕事をしたことが無い状態で公式テキストを読んでもなかなかイメージが湧かず、その点が最も苦労した部分だと思います。

1ページ目からひたすら暗記するなど、ひとまず「資格試験に受かるための勉強」に徹したことでなんとか合格でき、その後、技術系のニュースや記事を読む中で「テキストで読んだ内容はこういうことだったのか」と、納得しながら理解を深めました。

田中さん:社会人になってからの資格取得で、なおかつ業務の繁忙期と重なったこともあり、勉強の時間を捻出したり自分のペースで勉強したりすることは簡単ではありませんでした。勉強期間の2週間はなるべく早めに帰ること、そして飲み会には参加しないことを決めて過ごしました(笑)。

テキストで法律の条文や理論といった知識の面を、問題集で実務に近い面をバランスよくカバーすることができ、2週間という短期集中での合格が叶ったと感じています。

皆川さん:やはり社会人として働きつつ資格取得に向けた勉強時間を作るのは難しいと感じています。昼間は仕事がありますし、まだ子供が小さいので、世話をしたり寝かしつけながら自分も寝てしまったりと夜の勉強時間を確保するのも一苦労です。  
田中さん:知財検定は、他者との知識の共有をスムーズにしてくれる点で大きく役立っています。

私たちの課では約6割が知財検定を取得していることもあって、共通の知識を持っている前提でコミュニケーションをとることができ、このコロナ禍でも対面で調整すべき内容以外はリモートワークでも比較的支障なく業務を進めることができています。

また、知財検定の勉強・受検を経て知識と実務の間を埋めることができたため、他部署への共有や伝達の際にも、専門知識を噛み砕いて「どんな理由で何をすべきか」をきちんと伝えることができます。
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A.Eさん:一言で知的財産といっても、著作権、特許権など権利の対象ごとに細かく分類されていることに加え、それらの権利の保護から知的財産の活用、知的財産に関する規定・法律など、学ぶべき範囲がとても広い分野です。

特に知財検定はそのほとんどの範囲を網羅しているために難しく感じている方も多いのではないでしょうか。

ただ、やはり実務で知的財産を扱ってみると、例えば「あるデザインを意匠権で保護するよりも著作権で保護したほうがビジネスとしてうまくいく」など、さまざまな知識を得たために対応できた事例が多くありました。

私は知財検定で幅広い知識を学んだからこそ、今の仕事に活かすことができています。 
皆川さん:知的財産課の課長として、JAXAにおける知的財産活動を浸透させるという大任を受けているので、現状では個人としての知的財産の実務能力向上がどうしても後回しになってしまいますが、今後は自分自身の実務知識も向上させ、より強く知的財産活動を推進していきたいと思います。

A.Eさん:私は現在、知的財産に関する学習コンテンツの制作・提供や業務改善を担当していますが、知的財産管理技能士の資格を持っていても、知的財産の法律的な難しさはもちろん、実際に知的財産をうまく活用する難しさをいつも感じています。

今後も実務を積み、成長していくことで、より知的財産課の一人として研究者をサポートし、JAXAの研究成果が社会の役に立つ一助となれたらこれほど嬉しいことはありません。  

田中さん:2020年に新しく制定した知的財産ポリシーに沿って、社内業務の改善を進めると同時に、知的財産課としてJAXAの成果をより広く社会に還元できるよう、今後もより学びを深めていきたいと考えています。 
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知的財産管理技能検定
知的財産管理技能検定は、発明や商品デザインなどの知的財産の管理を行う法律知識と実務能力を有していることを認定する国家試験です。
日程 
年3回実施
受験料
【1級】〔特許専門業務・コンテンツ専門業務・ブランド専門業務〕
学科:8,900円 実技:23,000円
【2級】 
学科・実技:各7,500円
【3級】
学科・実技:各5,500円(各非課税)
受験資格
【1級】
①知的財産に関する業務について4年以上の実務経験を有する方
②2級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務に1年以上の実務経験を有する方 ほか
【2級】
①3級技能検定の合格者
②知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する方
③ビジネス著作権検定上級の合格者 ほか
【3級】
知的財産業務に従事している方、または従事しようとする方
取材日2020年9月16日
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