Vol.28 【国家試験】知的財産管理技能検定 2019.06.27

インタビュー
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★この企画では、読者のみなさんに代わって日本の資格・検定編集部が資格・検定試験の運営団体にインタビューを行い、その魅力をお伝えしていきます!
Vol.28では、国家試験「知的財産管理技能検定」を主催する一般財団法人 知的財産研究教育財団 知的財産教育協会を取材しました。

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「知的財産」と言うと、語感に少し硬めの印象を受けますが、実は私たちの生活において、身の回りにある多くのものがこの知的財産に当てはまります。
例えば、SNS上やウェブ上に溢れる動画・画像データや文章も知的財産として扱われていますが、自分でこれらのデータを作成・発信するという方も多いのではないでしょうか。インターネットが発達したことにより、知的財産は確実に私たちの生活に溶け込んでいるのです。
このような社会環境の変化を受けて、重要度を増しているのが「国家試験『知的財産管理技能検定』」です。(図1)
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(図1)累計申込者数
※第1回~32回までの累計申込者数。
※1級(コンテンツ)は第7回より学科試験を実施、第8回より実技試験を実施。
※1級(ブランド)は第17回より学科試験を実施、第18回より実技試験を実施。
特にビジネスの世界では、この知的財産の存在が年々影響力を強めています。実際に、受検動機の中で最も多くを占めるのが、「3.業務に役立てる」という理由です。(図2)従来までは開発・研究に携わる方や、法務関連の業務に従事する方が学ぶイメージが強かったのですが、現在ではマーケティングやブランディング、営業戦略の基礎として必須のスキルと言っても過言ではないことから、受検者層の裾野を広げています。
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(図2)受検動機
※2017年3月試験~2018年11月試験の任意アンケートより
そこで今回は、知的財産管理技能検定の情報と併せて、知的財産がビジネスにおいて最大限に生かされた事例や、これからのビジョンを一般財団法人 知的財産研究教育財団 知的財産教育協会に伺いました。

Q1 知的財産とは何ですか?

知的財産とは、人が生み出したアイデアやブランドなど「形はないけれど価値があるもの」を指します。日本では2002年に「知的財産立国」として知的財産の創造や保護、活用についての要綱が国家戦略に組み込まれました。
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(図3) 知的財産の例と種類
もともとは戦後から長きにわたり、アメリカで開発されたものをブラッシュアップさせる手法で経済を成長させてきた日本ですが、1980年代、アメリカがプロパテント政策※1に転換しアメリカの技術の利用が難しくなったことや、グローバル化・デジタル化が進み、国の域を超えて競合企業が増加したことで1990年代に入り国内産業の成長に陰りが見え始めました。これによる問題意識が、日本において知的財産という考え方を発展させるきっかけとなったのです。
※1プロパテント政策:特許などの知的財産を重視し、保護・強化する政策
この状況が進むにつれ、国土が狭く、資源や人材が限られた日本国内では、何か一つの製品を流通させるまでに必要な「開発→製造→販売」という段階のうち、製造の段階をコストの安い国外に頼ったり、開発のみを国内で行い、その発明を国外にライセンス契約したりするようになりました。
また、近年においては人々の消費活動に対して知的財産はますます重要性を増しています。消費者の動向として、製品そのものだけでなく、その製品を通じて利用できる専用ソフトやサービスが購入動機になりつつあることや、シェアリングエコノミーの普及、共感や体験を重視し、価値が「モノ」の消費から「コト」の消費へシフトする流れなどが見られます。これらに関係するコンテンツやアプリケーション、ビッグデータなども知的財産の一種であり、知的財産を駆使した新しいビジネスモデルが次々と登場しています。(図4)
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(図4) 知的財産が関連する身近な消費活動の例

Q2 近年ではビジネス戦略にも知的財産が活用されていると聞いたのですが…。

ビジネスにおける知的財産というと、特許や商標の調査・権利化のような法務的なイメージが強いかもしれません。しかし、近年では知的財産をビジネスツールとしてうまく利用して、マーケティングやブランディングに生かす流れも見られ、今や知的財産は経済の発展や個々の企業の成功を握る重要なカギとなっているのです。
ここで知的財産をビジネス戦略に生かした事例をいくつか見てみたいと思います。

1. オープン&クローズ戦略

オープン&クローズ戦略とは、企業が生み出した技術を他社に利用・活用させ、市場の拡大や製品の普及を促進させる「知的財産のオープン状態」を実施する一方で、自社でアイデアやノウハウを独占し、競合する他社との差別化を図ることにより市場でのシェアを得る「知的財産のクローズ状態」を組み合わせた戦略です。(図5)
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(図5)  Appleの例
自社の知的財産に大きな強みがある場合に有効で、特に欧米諸国の一部の企業では、このオープン&クローズ戦略を駆使し、市場の拡大と収益の増幅を実現しています。他社の動向を注視しながら、自社の強みを明確化し、戦略を組んでいく必要があります。

2. ソフト面・体験重視のブランディング戦略

これまでの販売戦略では製品の物理的な機能や目に見える特徴などのハード面が重視されてきましたが、近年では次第に製品の内面的なイメージ、ブランド、体験といったソフト面で他社や他製品との差別化に注力することが主流となりつつあります。
例えば、製品の新しい使用シーンや使い方の提案により、製品そのものの価値をさらに拡張したり、企業と顧客の間でコミュニケーションを取ることで得た信頼感や親近感をマーケティングに生かしたり、中には、製品が新しいライフスタイルを喚起する場合もあります。
この戦略ではブランド価値を蓄積し、ブランドを守るための商標権が重要になります。
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(図6) 冷蔵庫のプロモーションの例

3. AIの進化と知的財産

AI(人工知能)の深層学習(Deep Learning)※2には豊富なデータが必須です。ITビジネスの最先端を行くGAFA※3の強みも、膨大な顧客データを基にAIの深層学習を進め、分析精度を向上している点にあると言われています。
※2 深層学習(Deep Learning):規則性や関連性を見つけ出し、物事の判断や予測を行わせるためにAIに大量のデータを読み込ませること
※3 GAFA:Google、Apple、Facebook、Amazonの4社のこと
深層学習に用いられるデータはもちろん知的財産に位置付けられますが、同様に、AIによって導き出されたパラメータ※4もまた知的財産となります。AI機能の進化によって顧客ニーズの正確な読み取りや社内業務の効率化が可能になるなど、AIを利用したビジネス戦略と知的財産は切っても切れない関係になっていくと言われています。
※4 パラメータ:AIが判断・予測を行うために深層学習によって調整された数値

Q3 知的財産管理技能検定について教えてください。

知的財産管理技能検定では、3級から1級まで自分のレベルにあった級を受検することで知的財産についての知識を学び、国家資格である知的財産管理技能士を得ることができる試験です。1級は知的財産に関する専門的な業務に携わる方の受検が中心ですが、2級・3級はビジネスのための教養として幅広い年代、業種・職種の方が受検しています。
40歳・医薬品メーカー研究開発室 所属10年
今回、受検しようと思ったきっかけは上司に勧められたからです。
知財の担当ではありませんでしたし、手続き等は特許事務所にお願いすることが多かったため、あまり身近に感じることはありませんでした。
〈中略〉
勉強を進める中で断片的だった特許や商標などの知識が体系付けられ、また、私自身の業務に関わる内容の多いことに驚きました。
知財に関する理解が深まり、関連業務を俯瞰的に捉えることで仕事の幅も広がった気がします。

Q4 知的財産管理技能士とその活躍の場所について教えてください。

企業や団体の中にいながら知的財産を適切に管理・活用するのが知的財産管理技能士の主な業務です。社内の法務を担当する方には既にこの資格をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
加えて、近年では企画やマーケティング、ブランディングなど法務部門以外の業務においても、ビジネスパーソンの教養という意味で知的財産管理技能士の資格を持つ方が増加していて、業務やキャリアアップに活用されています。
20代・住宅設備機器メーカー 広報部門2年
現在、メーカーの広報室で社内外に向けた広報活動を行っています。
受検のきっかけは、広報活動でも様々な知的財産・特に著作権に関わると気づき、部門メンバーの薦めもあり受検しました。
〈中略〉
ふとした時に、特に著作物に関して扱い方や基準となる考え方を学ぶことができ、日常業務に役立っています。
また一方では、感度の高い学生の間でも徐々にその人気が広がりつつあります。知的財産の専門的な業務を目指す場合でなくても、社会に出る前の教養として身に付けたいという方や、ゼミ単位で合格を目指しているというケースも見られます。
資格を取得できれば就職活動の際に知的財産の基礎知識を持っていることをアピールできますし、何より、入社後には頼れる「知的財産のご意見番」として活躍できるのではないでしょうか。
23歳・一橋大学大学院 商学研究科2年
私は学部・修士課程ともに経営学を専攻しており、卒業後はシンクタンクにてコンサルティング業務に従事することになっています。今日では、メーカーに限らずあらゆる企業の戦略を分析・立案するうえで、知財戦略は無視することのできないテーマになっています。プラットフォームビジネスやオープン&クローズ戦略の議論に代表されるように、単に法律を知っていればよいというわけではなく、自社の戦略ビジョンに合った知財戦略を考え、実行することができるかどうかが企業の業績と産業の将来を左右すると言っても過言ではないと考えます。
このような考えのもと、日々の企業行動の理解・分析を行ううえで最低限必要な知財に関する体系的知識と理論を学び、そのベンチマークとすることを目的に本検定を受検しました。
また、知的財産を扱うという点で弁理士資格と比較されることもありますが、実際にはそれぞれ全く異なる性質のものです。弁理士が企業や団体の外部から知的財産の権利化や取引契約、知的財産に関する紛争解決を行うのに対して、知的財産管理技能士は企業や団体の内部で社内の知的財産に関わる業務をこなすことが主な業務となります。
知的財産に関する共通言語を利用して、弁理士と企業の間で窓口となることができるのも知的財産管理技能士の大きな強みです。
50代・エンジニアリング会社設計部所属1年
知財関連はすべて親会社の知財部にお願いしている関係で、申請やエンフォースメントでそちらとのミーティングが頻繁となる中、制度や法規、用語に疎い部長ではいけないとの思いで、着任後一ヶ月で本資格取得を思い立ちました。
今では知財部員や弁理士の方々のお話もよく理解でき、こちらからの提案も的を外すこともなく、打ち合わせも快調に進みます。
※合格者の方の声は知的財産管理技能検定の公式ホームページから引用しています。

Q5 知的財産管理技能検定ではどのような問題が出題されますか?

知的財産管理技能検定は、知的財産管理に関する知識と技能を測るもので3級から1級までそれぞれ学科試験と実技試験で構成されており、両方に合格することで晴れて知的財産管理技能士となります。
各級の試験科目等は知的財産管理技能検定ウェブサイトに掲載されている「試験科目及びその範囲」で確認が可能です。
また、3級と2級にはそれぞれ学習のための公式テキストがあります。実際に出題された問題は知的財産管理技能検定ウェブサイトに掲載されている過去問題にてご覧ください。
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「知的財産管理技能検定3級」
第32回学科試験(2019年3月実施)問2より
第31回実技試験(2018年11月実施)問15・問22より
※本問題の著作権は、知的財産教育協会に帰属します。また、本問題の無断転載、無断営利利用を厳禁します。本問題の内容や解答等に関するお問い合わせは、受け付けておりませんので、ご了承ください。
※本問題を含む知的財産管理技能検定の過去問題はこちら

Q6 知的財産を巡る動きに関して今後の展望を教えてください。

これからの社会で知的財産の占める役割はさらに大きくなると考えます。Q1でも触れているのですが、ビジネスにおいて、形のあるものから形のないものへ価値の比重が移ったことにより、消費者側の意識がものを「所有すること」から「シェアすること」へ傾き始めているためです。
現に車や家など形のあるものをシェアするサービスは現代でもよく見られるようになりました。そして、更にこれからはサービスやアイデアのような形のないものをシェアする時代が来ると考えられています。これにより、知的財産とビジネスの関係性も変化を遂げ、今後ますます必須知識としての立場を強めていくのではないでしょうか。
また、現代社会の流れの顕著な点として、価値観やライフスタイルの多様化が挙げられますが、これも今後の知的財産のあり方に大きな影響を与えるとされています。
価値観やライフスタイルが多様化するにつれて、個人の能力やアイデアの特有性が顕著になれば、良質でバラエティに富んだ知的財産が生み出され、国内の経済や産業は大きく発展を遂げることができるはずです。

いかがでしたか。

今や知的財産を扱うという経験は決して特別なものではありません。日常生活の中にも、ビジネスの中にも当然のように知的財産は存在します。知的財産に関する知識は語学やマナーと同じように誰もが持つべき基礎的なスキルとなってきているのです。

知的財産管理技能検定はそんな知的財産の最新ノウハウを得ることができる国家試験として、常に先を見通すビジネスパーソンから支持を集めています。ぜひみなさんも知的財産について学んでみてはいかがでしょうか。
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