国家資格・土地家屋調査士とは?業務内容から試験の難易度、合格のコツまでチェック!
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今回は「土地家屋調査士」について日本土地家屋調査士会連合会を取材しました。
不動産、特に住宅は人の生活に欠かすことのできない基盤であり、重要な財産です。その財産を守り、支えている「土地家屋調査士」という職業をご存知でしょうか。
不動産を購入・売却するとき、家を建てたとき、土地を相続したとき、災害に遭って家が倒壊したとき・・・調査や手続きによって「不動産の姿」を明らかにする、縁の下の力持ちです。
2020年に国家資格の制度制定から70周年を迎えた土地家屋調査士。その起源は明治時代、税務署に配置されていた土地調査員にまでさかのぼり、土地や不動産を巡る長い年月の中で確立された歴史のある資格なのです。
そして現在、地域の再開発や超高齢社会における相続問題の増加により、この土地家屋調査士が注目を浴び始めています。今回は土地家屋調査士とはどういった職業なのか、どのような試験を経て取得することができるのかなど、詳しい特徴やその魅力を伺いました。
土地家屋調査士の仕事とは
土地家屋調査士とはどのような仕事をしているのですか?
土地や建物などの不動産を調査・測量して「表示に関する登記」の申請を行うのが主な仕事です。「表示に関する登記」とは法務局の持つ「登記簿」に不動産の場所、広さ、形、用途、所有者などを記載する手続きです。例えば、建物を改築したり、兄弟で土地を分割して相続するときなど、登記簿に記載されている内容に変更がある場合は必ず登記しなければなりません。
「表示に関する登記」は、土地所有権の証明や、不動産の価値を定めることにつながる非常に重要な仕事で、土地家屋調査士だけができる独占業務となっています。
また、土地の境界線を定めるのも重要な仕事の一つです。こちらをご覧になったことはありますか?
見たことはあるけど何だか知らない、という方も多いと思います。実はこの地面に埋まっているボタンのようなものは、土地の境界を表す「境界標」という土地における標識です。この境界標を地面に穴を掘って打ち込む作業も土地家屋調査士が行います。
なぜ今土地家屋調査士が注目されているのですか?
現在、高齢化社会の影響により空き家や所有者不明の土地が問題になっています。特に所有者不明の土地は九州を超える面積まで拡大しており、2040年には北海道本島に匹敵する720万ヘクタールになるといわれています。
この問題解決のために注目されているのが土地家屋調査士です。所有者不明の土地は見た目での判断が難しく、登記の依頼を受けたときに隣家を調査して初めて発覚するというパターンが多くあります。そうしたときは土地家屋調査士が登記の情報や過去からの土地の経緯などを調査し、所有者や相続人を特定します。
注目度が上昇しているのには、全国的にマンションの建築が好調であることや、団塊の世代からの相続が増えていること、また所有者が不明な土地の問題が取り上げられ、社会問題として解決が急がれているからです。
どのような方が向いていますか?
独立して働きたい方や、フィールドワークとデスクワークどちらもやりたい、という方に向いています。不動産という「財産」を扱う仕事のため責任が重く、土地家屋調査士法人以外の一般企業で雇用されて土地家屋調査士として働くことはできません。そのため、ほとんどの方が独立して自分の事務所を持ちます。定年もなく、長く働けるので自分の力で稼いでいきたい方にはピッタリだと思います。
現地に足を運んで近隣の方とやり取りをしながら仕事をするフィールドワークと書類作成や作図などのデスクワーク、どちらも重要な業務です。そのため「パソコンでの仕事もしたいけれど外に出た仕事もやりたい」というようなフットワークが軽く、切り替えのしっかりできる方は向いているのではないでしょうか。
フィールドワークとデスクワークのどちらも求められる分、依頼者の方はもちろん、隣接する方や行政の担当者と接する機会も多いので、コミュニケーション能力の高い方はその力を存分に発揮できると思います。
最近では境界紛争の解決も業務の中で大きな割合を占めます。このような紛争は勝った負けたの問題ではなく、境界を挟んだ両者の心と心の問題です。その土地の歴史を踏まえた上で、双方が納得できるような解決案の模索や、今後も良好な関係でいられるような細かい気遣いができることも資質として挙げられます。
また、近年は特に女性の土地家屋調査士の需要が高まっています。以前に比べて不動産を所有する女性が増加したことで、現在では不動産の状態確認や購入・売却にあたっての相談依頼の約半数が女性からです。新居の準備や土地運用だけではなく、ご家族やご自身のデリケートな事情が絡む場合もあり、同性の土地家屋調査士の方が相談しやすいという声を頂きます。
取得後の働き方について教えてください。
独立の場合は、一つずつ地道に依頼をこなして信頼を得ていくというパターンが一般的だと思います。そのためには、自ら企業や個人に営業活動を行う正攻法だけでなく、周囲の他士業の方と連携を取りながら依頼を得たり、行政書士や宅地建物取引士(宅建士)などを取得したりと、他とは違う強みを持って活動することが必要になってきます。
また、最初は土地家屋調査士法人に所属して経験を積んでから独立する方も多くいます。
土地家屋調査士とWライセンスについて
一緒に取得すると役立つ資格はなんですか?
行政書士、司法書士、宅地建物取引士(宅建士)の資格を取得すると業務の幅が広がるのでおススメです。
特に、行政書士資格を取得していると業務を進めやすいと思いますよ。
例えば、依頼の多い「農地から宅地への転用」のケースで説明します。農業用の土地に住宅を建てる場合、農業委員会※に農地を住宅用地に変更する許可・届出が必要になります。この業務は行政書士の資格を持っていなければできません。土地家屋調査士と行政書士両方の資格を取得していれば農地転用から住宅の完成の登記まで一人で行うことができるので、ぐっと仕事の幅が広がります。
司法書士とのWライセンスでしたら自分の登記した土地の権利書を作成することができますし、その土地を担保に入れる手続きを行うことも可能です。また、宅建士資格も併せ持てば登記した土地を仕入れて分譲販売することもできます。
土地家屋調査士は他士業ととても相性が良い資格であり、資格の組み合わせによっては業務の幅を大きく広げることができます。
土地家屋調査士試験について
どのような方が受験していますか?
転職の際に選択肢の一つとして目指す方が多いので、受験者の約半数を40代以上が占めており、年齢層が高めです。また、案件1件当たりの報酬が高く、需要が高いことから安定して高収入を得られる上、定年退職がないので、他業種から一念発起して転職する方も多いです。受験資格も問われていないため、年齢や業種に関係なくチャレンジしやすい資格と言えるのではないでしょうか。
私どもとしては、若い方にも積極的に受験してもらいたいです。現在、60代以上が土地家屋調査士全体の約半数を占め、不動産がある限り需要は減らないのに対して人手が足りない状況に陥っています。また、全体の高齢化が進み、インフラ整備などの長期的な計画に関われる方が少ないため、若手の土地家屋調査士への需要が高まっているのです。
どのような問題が出題されますか?
土地家屋調査士の試験は筆記試験(知識問題、平面測量・作図の問題)と口述試験に分けられます。知識問題では民法や不動産登記法、土地家屋調査士法を中心に出題されます。
試験に向けておススメの学習方法を教えてください。
測量士、測量士補、建築士1級・2級の資格取得者は平面測量・作図の問題が免除されます。そのためおススメは、一番難易度の低い測量士補の資格を取得することです。回り道のように感じるかもしれませんが、試験が免除になる上、受験に慣れることで解き方のテクニックも身に付きます。
出題内容が近い範囲もあるためステップアップとしても最適です。実際にほとんどの方がこの免除制度を利用して土地家屋調査士試験に合格しています。
土地家屋調査士の魅力とは
土地家屋調査士の魅力ややりがいを教えてください。
今後、士業であってもAI(人工知能)に取って代わられる可能性があると報道されています。
しかし、土地家屋調査士はある一定のルールに従えばできるような業務ではありません。代々守られてきた土地の歴史を知り、現場に足を運んで人と対話することでやっと仕事を机上に持ち込むことのできる、いわば「血の通った仕事」です。時に、「祖父母の代からの問題を解決できた」と涙を流して喜ばれる依頼者もいます。「ありがとう」という言葉が何物にも代え難いやりがいだと思います。
全国的にマンションの建築が好調であることや、団塊の世代からの相続が増えていくことにより、仕事は増えていきますが、その基盤となっているのは土地家屋調査士が登記をしている土地や不動産です。地域のさらなる発展へ向けて新しい創造の余地を作っていくという意味で土地家屋調査士はとても夢のある職業ではないでしょうか。
いかがでしたか。
土地家屋調査士という職業は、不動産を持たない若い世代の方にはあまり関わりがなく、これまでピンと来なかったという方も多いでしょう。実際に、不動産の測量・調査やその登記は分かりやすく目に見えるものではなく、土地や建物の開発の過程の一つとして陰に隠れてしまいがちです。
土地家屋調査士は「不動産の姿」を明らかにすることで私たちの財産を守っている、まさしく「縁の下の力持ち」なのです。
みなさんもぜひ、土地家屋調査士として活躍してみませんか。
公式サイト:https://www.chosashi.or.jp/