Vol.36 メンタルヘルス・マネジメント(R)検定試験 2020.02.27

インタビュー
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★この企画では、読者のみなさんに代わって日本の資格・検定編集部が資格・検定試験の運営団体にインタビューを行い、その魅力をお伝えしていきます!
Vol.36では、「メンタルヘルス・マネジメント(R)検定試験」を主催している大阪商工会議所を取材しました。 
近年、社会全体の大きな問題になりつつあるのが、メンタルヘルス不調を訴えるビジネスパーソンの増加です。

厚生労働省が毎年発表している「精神障害などの労災補償状況」※からも、メンタルヘルス不調による労災申請件数が年々増加傾向にあることが分かります。
※厚生労働省 精神障害等の労災補償状況 
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また、社会で働く人の58%が業務や職場環境について「強いストレスとなっていると感じる事柄がある」※と回答しており、その要因としては業務量・業務内容、業務での失敗・責任の発生、職場の人間関係などといった問題が大きな割合を占めています。
※厚生労働省 平成30年労働安全衛生調査(実態調査)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h30-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
このような働く人の「心の健康問題」に一般社員、人事・経営幹部のそれぞれの立場から取り組むべく、メンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得できるのがメンタルヘルス・マネジメント検定試験です。

そこで今回は、メンタルヘルス・マネジメント検定試験の特徴や職場での生かし方、学習方法などを大阪商工会議所に伺いました。

Q1 「働き方」の変化と近年の職場環境について教えてください。

2016年※に「働き方改革」が唱えられてから数年。現在、各職場で推進されているのがワーク・ライフ・バランスのとれた働き方です。
※働き方改革実現会議の設置年

高度経済成長期から1990年代ごろまでの日本では、労働の量的側面(労働時間)に重点を置いた働き方が一般的でした。特にサラリーマンを中心に、ハードな勤務をこなす人は「企業戦士」と呼ばれ、1989年には「24時間戦えますか」というキャッチコピーが流行語となっています。多くの企業において、長時間働くことで高く評価されるのが一般的だったのです。

一方近年では、働く人のライフスタイルが多様化したことや、働く人の心と身体の健康に目を向けられるようになったことを受けて、各職場において「できるだけ残業を減らす」「効率よく働く」など、労働の量的側面ではなく質的側面に重点を置いた働き方への転換が推進されるようになってきました。

若い世代を中心にこの変化を歓迎する一方で、働き盛りの頃に企業戦士と呼ばれて活躍した世代には新しい働き方に対応することへの戸惑いも見受けられ、これが世代間ギャップとして職場環境にひずみを起こしている場合もあるようです。

こうした中、現在の望ましい働き方とはどのようなものなのか、なぜワーク・ライフ・バランスが重要なのか、どのように職場の環境改善を進めるのかなど、世代間で共通の認識を持つとともに、各職場において一人一人が心の健康管理に取り組んでいくことが強く求められています。 

Q2 メンタルヘルス・マネジメント検定試験とはどのような検定ですか?

メンタルヘルス・マネジメント検定試験は、厚生労働省策定の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」※を参考に構築しており、職場内での役割に応じたメンタルヘルスケアの知識や対処方法を学ぶことができる検定です。
※厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
メンタルヘルス不調の未然予防に重点を置き、産業保健の視点だけでなく、人事労務管理の視点から、実務的で幅広い知識を体系的に学ぶことができるので、世代や業種・職種を超えて働く人たちの健康づくりに役立つ内容となっています。

2006年の試験開始時には、まだ「働く人の心のケア」や「メンタルヘルス不調者のケア」などの重要性が十分に認識されていませんでしたが、2010年代に入り、「ブラック企業」「ハラスメント」などの問題が社会の関心を集めたり、2015年12月からはストレスチェック制度が施行され、企業が従業員の心身の健康に積極的に関与する「健康経営」の取り組みが広がりを見せたりと、メンタルヘルスケアを取り巻く社会環境は変化の時を迎えています。

メンタルヘルス・マネジメント検定試験の受験申込者数も拡大を続け、累計40万人※を突破するまでとなりました。
※2020年2月現在

大阪商工会議所では、企業の社会的責任や労働生産性の向上、リスクマネジメントの観点からも、メンタルヘルス対策が重要であることを広く発信し、いきいきと活躍する人材の育成や働きやすい職場づくりに貢献していきたいという思いでメンタルヘルス・マネジメント検定試験を実施しています。

Q3 経済産業省が進める「健康経営」への取り組みとメンタルヘルス・マネジメント検定試験の関係とは?

健康経営とは、社員の心と身体の健康管理を経営の視点から考え、戦略的に実践することを指します。

社員の健康増進はもちろん、生産性の向上や離職率の低下、企業ブランドのイメージアップといった効果が見込まれることから、多くの企業・団体で健康経営への意識が高まり、社員のメタボリックシンドローム対策や社内禁煙活動、社内での健康イベント開催などの取り組みがなされています。もちろん、企業のメンタルヘルス対策も健康経営において重要な項目の1つです。

2016年度に経済産業省が行った調査では、就活生の約76%が「健康経営が就職の最も重要な、もしくは重要な決め手となる」、就活を控えた学生を持つ親の約73%が「健康経営が就職を勧める際の最も重要な、もしくは重要な決め手となる」と回答※するなど、健康経営への関心度の高さが伺える結果となりました。
※経済産業省「健康経営の労働市場におけるインパクト調査②7ページ目」(2016年度調査)
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/jisedai_healthcare/kenkou_toushi_wg/pdf/013_02_00.pdf
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このように注目が高まるなか、経済産業省では毎年、特に優れた健康経営を実施する企業・団体を「健康経営優良法人」※として顕彰しています。
※健康経営優良法人:従業員の健康管理を経営的な視点で考え、実践している企業・団体を顕彰する施策。大規模法人部門、中小規模法人部門の2部門に分かれ、健康経営に取り組む企業・団体の社会的な評価向上を目的に実施されています。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
この選定要件※の1つである「管理職又は従業員に対する教育機会の設定」の中で「健康知識等の向上に関する検定等の受講・資格取得支援」が評価項目となっているのです。
※健康経営優良法人2020(大規模法人部門)認定基準はこちら
 健康経営優良法人2020(中小規模法人部門)認定基準はこちら
そのため、社内でメンタルヘルス・マネジメント検定試験を導入し、従業員の受験を推奨・支援することも、職場のメンタルヘルス対策の推進はもちろん、健康経営に積極的に取り組む企業として評価されることにつながります。

Q4 メンタルヘルス・マネジメント検定試験はどのような場面で生かすことができますか?

メンタルヘルス・マネジメント検定試験には3種類のコースがあります。Ⅰ種では経営幹部や人事労務管理スタッフの視点で考える社内のメンタルヘルス対策の推進を、Ⅱ種では管理監督者の立場から部下のメンタルヘルス対策の推進を、Ⅲ種では従業員自らのメンタルヘルス対策の推進を、それぞれ目的にしており、職場内での立場に合わせて受験することが可能です。
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(クリックで拡大)
各級の活用場面例は以下になります。
Ⅰ種 (マスターコース:人事労務管理スタッフ、経営幹部向け試験)
■ストレスチェックの実施後のフォローアップに
ストレスチェック制度の導入により、その実施が義務づけられた事業所のうち、約80%※の事業所でストレスチェックが実施されていますが、実際に結果を正しく分析して、改善につなげることができているケースは必ずしも多くないという印象があります。
※厚生労働省 ストレスチェック制度の実施状況より(2017年度調査)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000172336.pdf
Ⅰ種では、社内のメンタルヘルスケア体制の構築に活用できる内容を扱っているため、ストレスチェックの結果を分析した上で全社を挙げた取り組みに反映したり、メンタルヘルスに関する社員教育を行ったりと、社内の環境改善やそれに伴う生産性・社内モラルの向上に役立ちます。
■採用コストの削減に
新卒者の入社後3年以内の離職率が依然30%※を上回る状況で、人材の確保に苦慮している企業・団体は少なくありません。加えて、メンタルヘルス不調による社員の休職が発生した場合、それをカバーするために非正規社員の派遣契約や臨時採用を行う必要性も想定されます。
※厚生労働省 新規学卒者の離職状況より(2018年度調査)
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000556419.pdf
人材を獲得するためには、面接や選考などの「時間・労力的コスト」と求人広告などの「金銭的コスト」の両方がかかり、これは企業にとって大きな負担です。経営や人事業務を行う中で、社員の心のケアや社内の環境改善に力を注げば、離職率も下がり、採用コストの抑制にもつながるのではないでしょうか。
Ⅱ種 (ラインケアコース:管理監督者向け試験)
■部署・部門内での対応に
上司としての部下への日ごろの対応をはじめ、部下がメンタルヘルス不調に陥った場合の対処方法や相談対応、メンタルヘルス不調による休職から復職する部下への対応など、管理職が現場で実践できるノウハウを学ぶことができます。

産業医など産業保健スタッフとの連携についてもまとめられているため、実際に部署・部門内で部下に異変があったり、不調が見受けられたりした際にも効果的にサポートできるでしょう。 
■望ましい働き方と労務管理について考える機会に
Ⅱ種でメンタルヘルスケアの考え方や部下との接し方といった知識を学ぶことで、心と身体の健康やワーク・ライフ・バランスを重視した望ましい働き方について改めて考える良い機会になるはずです。

メンタルヘルスケアの正しい知識を持ち、職場環境やマネジメントのあり方を見据えた上で、業務の量的な負担や精神的負荷を考慮しながら安全配慮義務に則った対応ができるようになることが、到達目標です。 
Ⅲ種 (セルフケアコース:一般社員向け試験)
■メンタルヘルスのセルフケアに
Ⅲ種には、メンタルヘルスの基礎知識や自分の抱えるストレスの気付き方、対処方法がまとめられています。

業務に追われていると、その忙しさから体調を崩しているのか、メンタルヘルス不調で体調を崩しているのか分からずに心の病を悪化させてしまうというケースも多く、自分の異変に自ら気付いて対処するというのは多くの人が考えるよりも難しいものです。

セルフケアの知識があれば、自分に異変が生じても専門家に相談するなど、早めの対処ができるのはもちろん、同僚や周囲の人の異変を感じ取って声を掛けることもできます。社会に出る前の基礎知識として、これから社会人デビューを控える学生の方にもおススメです。

また、Ⅲ種の内容は仕事以外のストレスにも有用ではないでしょうか。家庭問題などの生活上の出来事で悩んでしまった場合にも、Ⅲ種で学ぶことができるストレスの対処方法や、相談機関などに関する知識が生かせるでしょう。 
メンタルヘルス・マネジメント検定試験ではどんな問題が出る?(次ページへ)
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