試験の準備は入念に
秘書検定準1級の面接試験日前夜、私は絶望していた。
あるはずの黒のパンプスが見当たらないからだ。
きっと祖母の法事で帰省したときに、そのまま実家に置いてきたのだ。
家にあるのは履きくたびれたスニーカーとオープントウのミュール、そしてピンクのパンプスだけ。
秘書検定の面接試験と言えば、言わずもがな服装だって見られているだろう。
だから前の週末に準備しておけばよかったじゃない!と自分を責めるも仕方ない。
時刻はすでに夜の11時。これから駅に向かっても、お店の営業時間には間に合わない。
困ったことに翌日の試験は朝一だから、試験前に購入するのも無理だろう。
せっかく筆記試験をパスしたのに受験を諦めるか…?
半ば諦めモードになっていたとき、あることを閃いた。
すぐに家を飛び出しコンビニへ、
買ったのは油性マジック。
初任給で買ったお気に入りのピンクのパンプスを、油性マジックで黒く塗った。
マジックで塗ったパンプスは、近くでみるとアウトだけれど、遠くでみれば大丈夫そう。
黒塗りパンプスで迎えた試験はなんだか逆にリラックスして受けられて、しばらくしたら合格通知が自宅に届いた。
今後は絶対、試験前の週に準備をしようと心に決めたのでした。