漢検1級に出題された超難問3選!
こんにちは!漢検1級リピーターのあびです!平成29年度(2017年度)第3回試験から受検を始め今までに10回、漢検1級を受検をしています。
漢検1級では時としてリピーターをも唸らせるトリッキーな難問奇問が出題されることがあります。
ということで今回は漢検界隈を震撼させ、かつ僕の中で印象的だった難問を3つ紹介したいと思います!
難しい漢字も出てくるので、できるだけ噛み砕いてユルめに書きます!!
伊弉諾尊乃ち大樹に向かって【溺】まる
1つめは令和2年度第2回の訓読みの問題からです。この問題、訓読みの出題史上屈指の難問だと思います。試験直後Twitterではこの問題の話題で持ちきりでした。
初っ端からまがまがしい漢字の羅列で申し訳ないんですが「伊弉諾尊」は「いざなぎのみこと」です。日本神話の神ですね。
なので簡単に書くと
いざなぎが大樹に向かって「溺まる」
という文意です。
さて問題の「溺まる」はなんと読むのでしょうか?
「溺」の漢字自体は漢検2級配当の常用漢字なので見たことがあると思います。「溺れる(おぼれる)」や「溺愛(できあい)」とかで使われますね。
ただこの問題は一筋縄ではいきません。訓読みということで「おぼ−れる」に当てはめると「おぼ−まる」??そんな言葉聞いたことないですね。
「〜まる」になりそうな言葉で考えてみても、「からまる」?「あつまる」?「せまる」?うーーーん。わからん。。。
じつはこの「まる」が厄介であり、この問題が難しくなった原因(?)なんです。なんと「溺まる」の「まる」は送り仮名ではありません!!
えぇ〜〜!!そんなんあり???いかにも送り仮名っぽい顔してるのに!
じゃあこの「まる」は何なのかというと、動詞の「まる」です。
動詞の「まる」ってなんだよ、と思った方。大丈夫です。僕もそう思いました。
古語でそういう動詞があるようです。さすがに古語の知らん動詞出されたら対応できないですね。ただ、子供用の便器である「おまる」の「まる」はここに通じているようです。なるほどねー。(漢字では「御虎子(おまる)」です。)
となると「溺」を「まる」する(排泄する)と考えることができ、「溺」は「ゆばり/いばり」と読むのが正解です。「ゆばり/いばり」というのは要するに小便のことです。ただこの訓読み自体も難易度が高いものなので、もっとわかりやすい文脈で出題されても難しいですね。
というわけで難しい読みがわかりにくい文脈で出されたという難問でした!
ちなみに「溺」という漢字、「おぼれる」の意味のときは音読み「デキ」ですが、「ゆばり/いばり」の意味のときは音読みが「尿」に通じて「ニョウ」になります。ややこしい。
其の嫣然とし一笑するに当たりてや、【ササ】たる皓歯の朱唇の間に見るるは〜
2つ目です!これは僕が初受験したH29-3の文章題に出題された書きの問題です。この回の文章題は尋常じゃないほど難しく平均点が3.8/20点という大記録を打ち立てています笑
この文章の前後ではずっと「美人の描写」がなされていて、この部分も美人の顔の説明をしている場面です。
・「嫣然(エンゼン)」は「美人がほほえんでいる様子」。
・「皓歯(コウシ)」は「白い歯のこと」でよく美人の形容に使われます。
つまりわかりやすく書くと
美人がにっこりしていて、【ササ】な白い歯が赤い唇の間から見えてるのは〜
という内容です。
さぁ、「ササ」を考えます。うーーーんわからん。。。
もちろん「笹」ではないですよね。「サ」という読みの漢字が2つ連続するのだろうな、というところは推測できるのですが、「沙沙」?「紗紗」?「瑣瑣」?どれもしっくりこないなぁ…
こんな感じで漢検1級で知らない熟語にあったときは「読み」や「前後の文章」から推測して熟語を作り出すことがあります。受検者は「白い歯」の説明に使われそうな「ササ」を一生懸命ひねり出します。
では正解の発表です。答えは……
「瑳瑳(ササ)」でした!「瑳」は「切瑳琢磨(セッサタクマ)」とかに使われている漢字ですね。
漢検1級の勉強をされていない方からしたら「ふーん。これがそんなに難問なの?」と思うかもしれませんが
これ、、、めちゃくちゃ難しいです!!!!
どこがそんなに難しいのか。たしかに「瑳」は漢検1級配当の漢字ですが、そこが難しいのではありません。
まずこの「瑳瑳」という熟語は国語辞典にも漢和辞典にも載っていません!(あび調べ)
もし「広辞苑の言葉全部覚えたぜ〜〜!卍卍」という人がいても、この「瑳瑳」は知らなかったと思います。
ただ絶対に答えらない問題か、というとそんなこともないんですよね。
「瑳」の意味を見てください↓
「瑳」
①玉の色が白くあざやかなさま。
②あざやかに美しい。
③歯をちらっと見せて笑うさま。
④みがく。
(『角川新字源』)
おそらく最も有名な意味は「④みがく。」だと思います。「瑳く」で「みがく」という訓読みもありますし、「切瑳琢磨」も「みがく」の意味で使われています。ここまでは多くの1級受験者なら抑えているはずです。
ただ今回注目したいのは「③歯をちらっと見せて笑うさま。」です。
ドンピシャじゃないですか!!にっこり笑って歯を見せる、という今回の文章にぴったり当てはまる意味を持っているんですよね。
この文章題では「瑳瑳」という熟語を知ってるかとどうかではなく、「みがく」以外の「瑳」の意味、用法を知っていて「サ」の音と前後の文脈から推測できるかが問われていたんですね。①②の白い、美しいの意味からもアプローチ可能なので、しっかりと知識があれば解けなくないという点で良問であり超難問ですね。
めっちゃむずいです。参りました。
ちなみにこの回の合格率は5.0%で全国の合格者数は55人でした。(下の表)
合格者の大部分はリピーターなのでこの回に初合格した人はほとんどいなかったと思われます。
「ビランバ」→劫初、劫末に吹くという暴風のこと
最後に紹介するのは僕が初合格した、令和2年度第3回の語選択に出題された問題です。正直この回は難問奇問が出すぎて一つに絞れないんですがインパクト強めなやつを選びました!
「語選択」というのは漢検1級にしかない問題形式で、簡単に言うと「意味→漢字にする」みたいな設問です。わかりにくいんで例を出すと
意味:①あさの太陽。
選択肢〈ゆうひ・あさひ・まんげつ〉
という問題があったら
選択肢の中から「あさひ」を漢字にして①の答えは「朝日」、とまあこんな感じです。
そもそも出題形式が語彙力の本質をついてくるものなので大問そのものが難しいのですが、R2-3でとんでもない熟語が出題されました。
意味:劫初、劫末に吹くという暴風
選択肢:〈びらんば〉
びらんば??なにそれ??????
ダミー込みで他の選択肢もあるのですが「ビランバ」という読みが特殊すぎて浮いてます笑
受検者はここで「劫初、劫末に吹くという暴風」という意味の「ビランバ」を考えることになります。ただ、これはもう意味から推測するとかそういう事ができないんですよね。なぜかというとこれが仏教語だからです。
音の響きや意味にある”劫末(ゴウマツ:この世の終わり)”などから、この語を初めて見る人でも「あっっ、仏教関係の言葉だな」と察しがつきます。
仏教語はサンスクリット語からの音訳で漢字が当てられることが多いので漢字の意味とかもう関係ないわけです。
(「阿弥陀(アミダ)」や「般若(ハンニャ)」に漢字の意味が関係ないのと同じです)
「ビランバ」は『漢検漢字辞典』(漢検が出している漢和辞典)に載っていないので、その時点で難問にあたるのですが
『漢検漢字辞典』に載ってない言葉+仏教語
ということで、ただ『漢検漢字辞典』に載ってないだけではなく、仏教語の要素が追加されたことで難易度が跳ね上がりました。
仏教語なんて普段馴染みがないし、当て字っぽいからただでさえ覚えにくいのに〜〜〜という苦しみです。
こうなると仏教語で使われてそうな「ビ」「ラン」「バ」を当てはめていかねばなりません。そんなんあてずっぽうで当たらんて……
ということで正解は「毘藍婆」でした!
文句なしで難しい!!三字熟語っていうのもポイント高いですよね(?)
ここまで読んでいただきありがとうございました!漢検1級の世界を垣間見ることができたでしょうか?
ちょっとでも気になった方は漢検1級の世界で待ってます!
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四字熟語だけでしりとりしてみたり
過去の難問をまとめてみたり(今回の「毘藍婆」も登場!)
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「漢検1級」で検索すると出てきますので、是非見に来てください〜
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日本漢字能力検定1級
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取りたい資格:
漢字文化理解力検定三段
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