Vol.31 賃貸不動産経営管理士 2019.09.05

インタビュー
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★この企画では、読者のみなさんに代わって日本の資格・検定編集部が資格・検定試験の運営団体にインタビューを行い、その魅力をお伝えしていきます!
Vol.31では、「賃貸不動産経営管理士」を運営する一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会を取材しました。
みなさんは、今の住まいにどのような設備が欲しいですか?
賃貸物件の場合、全国賃貸住宅新聞が『2018年度版「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」設備ランキング』と題して全国322の不動産会社を対象に行った調査では、前年度に続いて「インターネット無料」が1位に選ばれており、2位に「宅配ボックス」、3位に「エントランスのオートロック」と続きます。
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▲2018年度版「【単身者向け】この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」
設備ランキング(全国賃貸住宅新聞社調べ) 
物件検索サイトなどで新しい住まいを探すときには、設備条件を絞って表示する場合も多いのではないでしょうか。そのため、賃貸住宅を貸しているオーナーからは「人気エリアや駅チカなど、どんなに好条件の物件でも新しい設備を用意しなければ探す方の目に留まらない」といった悩みも聞かれます。
そういったオーナーの悩みを解決するため、賃貸住宅の新しいニーズを捉えながら管理・運営を行うのが「賃貸不動産経営管理士」です。2007年に誕生して以来年々規模を拡大し、今では受験者数で宅地建物取引士(宅建士)に次ぐ不動産系資格となっています。
そこで今回は、賃貸不動産経営管理士の業務内容や注目の理由などについて一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会に伺いました。

Q1 賃貸不動産経営管理士とはどのような資格ですか?

賃貸不動産経営管理士は賃貸不動産のスペシャリストです。主に不動産の管理業者に所属し、オーナーから受託した不動産の管理・運営を行います。
不動産オーナーに対する業務
入居者募集の提案や入居してからの対応、退去時の原状回復、敷金の返還、賃貸住宅経営における改善の提案や長期修繕計画の策定など多岐に渡りますが、それらの業務を通して、オーナーの財産を維持・向上させるのが賃貸不動産経営管理士の重要な役割です。
入居者に対する業務
賃貸住宅に関するトラブルへの対応も賃貸不動産経営管理士の業務に含まれます。2017年度に全国の消費生活センターへ寄せられた商品・役務等別相談件数ランキングの4位が、「賃貸アパート・マンション」にまつわるもの、特に退去時の原状回復におけるトラブルが主で、また設備故障や騒音、ゴミ出しといった入居者間トラブルも多いのが現状です。
賃貸不動産経営管理士は最新の情報をもとにトラブルの防止策を練ったり、実際に起きてしまったトラブルに際して丁寧かつ迅速な対応を行ったりと、安心・安全な住環境を提供します。
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 ▲2017年度版 国民生活センター 商品・役務等別相談件数http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/syouhin.html
専門知識と高い倫理観を有し、公正中立な立場で業務を行う賃貸不動産経営管理士は、入居者・オーナー双方にとって「暮らしを支える、信頼される良きパートナー」なのです。

Q2 賃貸不動産経営管理士が注目されている要因を教えてください。

近年、賃貸不動産経営管理士が注目を集めているのは、制度の改正や新しい法制度の施行でその役割が増えたことが要因だと考えられます。
賃貸住宅の管理業にはこれまで一定のルールがなく、トラブルや問題が多発していました。そこで2011年、国土交通省は管理業務の適正化を図るために「賃貸住宅管理業者登録制度※1」という任意の制度を創設し、オーナーと入居者の利益保護を図っています。
※1 賃貸住宅管理を業務として行なう場合に一定のルール。国土交通省の告示に基づき、賃貸住宅管理業者として登録した事業者はこれを守る義務があります。
そして制度創設から5年後の2016年8月、管理業務の一層の適正化に向け、制度の一部が改正されました。
大きな改正点として、登録制度に登録している登録業者は、

1、「事務所ごとに1名以上の賃貸不動産経営管理士等※2を設置」しなければならない

2、「貸主に対する賃貸住宅管理に係る重要事項説明及び書面への記名・押印」や「貸主に対する賃貸住宅の管理受託契約書への記名・押印」は賃貸不動産経営管理士等※2が行う

といったことが義務付けられました。
※2 賃貸不動産経営管理士等:賃貸不動産経営管理士の他、6年以上の実務経験者を含みます。
この制度改正の影響により、2015年には4,908人だった受験者数が制度改正のあった2016年には13,149人と大幅に増加しています。
また、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法) ※3においても住宅宿泊管理業者としての役割が与えられ、観光客の増加や東京オリンピックの開催を受けて注目を集める「民泊サービス」においてもますます活躍が期待されます。
※3 「住宅宿泊事業法」:住宅宿泊管理業を行うためには賃貸不動産経営管理士の登録や2年以上の住宅取引に関する実務経験などが必要です(個人の場合)。 

Q3 宅地建物取引士(宅建士)との違いや共通点は何ですか?

賃貸不動産経営管理士、宅建士ともに不動産に関する資格ではありますが、宅建士は「宅地建物取引業(宅建業)」、賃貸不動産経営管理士は「管理業」と行っている業務の範囲が異なります。
例えば、不動産の賃貸において宅建士が行う宅建業は、入居者の募集、広告、賃貸借契約締結など「入居するまでの業務」を指しますが、賃貸不動産経営管理士が行う管理業は、入居後のトラブル対応や設備故障対応、退去時の原状回復など「入居後(賃貸借契約締結後)の業務」をメインとしています。
業務範囲の違いはありますが、賃貸不動産において宅建業と管理業は切っても切れない関係であり、実際にはこれらを並行して行っている不動産会社や社員の方も多くいます。
また、賃貸不動産経営管理士の試験範囲に含まれる「賃貸借契約に関する事項」は宅建士試験の範囲にも含まれますので、宅建士資格を既に取得されている方やこれからチャレンジする方にとっては比較的学習しやすいといえるでしょう。
現在では不動産業界全体で賃貸不動産経営管理士の認知が広がっており、会社によっては昇進や資格手当など評価の対象になっているという話をよく耳にします。少しずつではありますが「宅建士の次は賃貸不動産経営管理士を取得しよう」という流れになっていると感じています。

Q4 賃貸不動産経営管理士のオススメの学習方法を教えてください。

テキストを繰り返し読み込むのが良いかと思います。3年分の過去問題もホームページに掲載されているので、こちらも併せて取り組むとよいでしょう。
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「賃貸不動産経営管理士」2018年度試験
問1、問17、問35 より
※本問題の著作権は、一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会に帰属します。また、本問題の無断転載、無断営利利用を厳禁します。本問題の内容や解答等に関するお問い合わせは、受け付けておりませんので、ご了承ください。
また、「賃貸不動産経営管理士講習」という2日間の講習会を実施しており、この講習を修了すれば試験問題40問のうち4問が2年間免除※4となります。2018年度試験においては、合格者の3人に1人が本講習の修了者です。試験の要点も抑えることができるので、公式テキストを独学で読み解くよりも効率的に学習ができるでしょう。
※4 2020年度に行われる試験からは、出題数50問のうち5問が免除されます。 
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Q5 賃貸不動産経営管理士に関わるこれからの行政動向を教えてください。

近年、サブリース契約※5時に重要事項の説明がなされないことによって「毎月20万円の賃料収入が30年保証されると聞いていたが、賃料を減額された」「賃料収入がどんどん減り、ローン返済が難しい」など家賃保証を巡るトラブルが発生しています。また、依然としてQ1のような日常におけるトラブルも後を絶ちません。
※5 サブリース契約とは、管理業者が賃貸住宅をオーナーから一括して借り上げて、入居希望者に転貸することをいいます。 
このような状況を受け、本年7月に国土交通省は、複雑化しているトラブルの実態を正確に把握し、賃貸住宅管理業の適正化につなげるための調査を実施しました。
現在の管理業は宅建業と異なり法制度が整備されていないので、今後「賃貸住宅管理業者登録制度」の法制化を視野に入れた見直しが近々の課題に挙げられています※6。制度が見直されれば、既に本制度に位置付けられている、賃貸不動産経営管理士の社会的必要性がさらに高まり、より多くの場で賃貸不動産経営管理士が活躍することが予想されます。
※6 不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~概要資料はこちら   

Q6 運営団体として賃貸不動産経営管理士に期待することを教えてください。

現在、高齢者や障がい者、外国籍の方などのいわゆる住宅確保要配慮者が物件を借りるのが難しいという問題があります。これを打開するべく、公正中立な立場から、どのような方に対しても入居を受け入れる環境を主導的に整えていくのも賃貸不動産経営管理士の課題です。
人口減少、少子高齢化、空き家問題、グローバル化、ニーズの多様化に伴い、さまざまな問題が複雑化する中、専門的知識を有した賃貸不動産経営管理士の存在は今後ますます必要性を増すでしょう。
協議会では、賃貸不動産経営管理士がこのような社会的要請に応えられるよう、「国家資格化」を目指し、オーナーや入居者の生活に一層貢献をしていただきたいと思っています。

いかがでしたか。

賃貸住宅管理にまつわるトラブルが社会問題化したことで、登録制度のさらなる適正化のために、本格的な調査、実態把握が進んでいます。この流れの渦中にいるのが「賃貸不動産経営管理士」であり、話題になりつつある今が学習の絶好のチャンスです。

賃貸住宅に関わる職業の方はもちろんですが、部屋を借りている方、借りたいと思っている方にとっても賃貸不動産経営管理士の知識は役立つといえます。ぜひこの機会に学習して賃貸不動産経営管理士試験にチャレンジしてみてください。