食の楽しさを広めたいあなたへ。「フードコーディネーター」3級から広がる“食”との新しいかかわり方
カフェに入ったとき、居心地がいいと感じる。レストランの料理写真を見て、思わず食べたくなる。そんな「なんとなく」の感覚には、実は理由があります。
それを意図的に設計するのがフードコーディネーターという仕事。メニュー開発からスタイリング、地域食材のブランディングまで、食の魅力を多角的に伝えるプロとして、近年注目されています。
「センスや専門知識がないとなれない」というイメージのこの仕事ですが、実は「料理を食べるのが大好き」、「趣味がカフェ巡り」といった「食を仕事にしたことはないけれど、興味がある」という方でも活躍できるのだとか。その入り口となるのが「フードコーディネーター」3級の資格です。
今回は、九州を拠点に多方面で活躍する杉水流 直子さんにインタビュー。20年前、3級の学びから踏み出した一歩が、今の活動にどう繋がっているのかを伺いました。
お話を聞いたのは……
学校給食の栄養士として「食について、楽しく伝えたい」という想い
店舗プロデュースから商品開発など幅広く手掛けるフードコーディネーターの杉水流さん。その第一歩は学生時代のこと。もともと「食の楽しさを広めたい」という想いが強く、大学では栄養学を専攻します。
「でも、いざ本格的に学んでみると、少し違うかも……という違和感がありました。実は私、細かく栄養を計算するのがすごく苦手で(笑)。それよりも『どうすれば食をもっと楽しく伝えられるか』を企画することに楽しさを感じるタイプでしたね」。
卒業後は鹿児島・甑島の学校へ栄養士として赴任。そこで始まったのは、子どもたちに“食”の楽しさを伝える日々でした。甑島はキビナゴの水揚げ量が日本でもトップクラス。しかし、地元では食べなれてしまって魅力に気づいていない子どもたちも多かったのだとか。
「せっかくだから、キビナゴを好きになってもらおうと、調理法を工夫したり、クイズを企画したりしていました。島特有の食材の魅力を伝えたかったんです」。
その他、なかなか普段の食事では出会わない料理への入り口になればと、世界の料理を月替わりで紹介するなど、自分なりに「食の楽しさ」を届ける工夫を重ねていきました。
「子どもたちが、食べることや料理にどんどん興味を持ってくれるのを肌で感じました。反応が変わっていくのを見て、栄養バランスを守るだけでなく、その魅力を『どう見せて、どう伝えるか』を考える楽しさを噛みしめましたね。それが私にとって、食をコーディネートする原点になっています」。
杉水流さんが魅せ方や宣伝材料となる写真を担当した抹茶メニュー。発想力で食の魅力を引き出すのがフードコーディネーターの仕事だ。
「これこそが自分のやりたかったことだ」と確信した杉水流さん。食を総合的にプロデュースするフードコーディネーターという職業に就きたいという想いが高まったのはこの頃でした。
「当時はまだ今ほど一般的な職業ではありませんでしたが、知れば知るほど、自分がワクワクする要素がすべて詰まっている仕事だと思って、どうやったらなれるだろうと考えていました」。
その後、偶然にも地元でフードコーディネーターの求人を見つけ、迷わず応募。狭き門を突破し、ついに憧れの職へと踏み出したのです。
現場に出て気づいた、プロとして働くための土台づくり
しかし、いざ現場に立つと、思い描いていた姿とのギャップが待っていました。
「『ターゲット層に刺さるメニューのコンセプト作り』や『ポスター用の美しい盛り付け』など、フードコーディネーターとして求められていることは分かる。でも、それを実行する知識の引き出しが足りない。栄養士としての知識だけではカバーしきれない、デザインや企画力が必要だったんです」。
そのもどかしさから、まず基礎を体系的に学ぼうと「フードコーディネーター」3級を受けることに。
「テキストを開くと調理法や栄養学だけではとどまらない世界にすごくワクワクしました。とはいえ、テーブルセッティングや色彩学、店舗経営やマーケティングまで、多岐にわたる知識が詰め込まれています。最初はどこが重点なのか掴みきれない部分もありました。でも、『対策講座』などを活用することで、この資格が求められていることや試験のポイントが分かるようになって。約3カ月間の勉強を通して、今まで自分の中でバラバラだった知識が1本の線につながり、試験を突破することができました」。
対策講座では、3級試験のポイントをわかりやすく解説。2週間の配信期間中は 自分の好きなタイミングで視聴可能。
勉強してみると、今までの経験や知識が繋がり、日常の景色が一変したと杉水流さんは話します。
「例えばカフェに入ったとき、入り口の看板やメニュー表、レジ横のPOPまで、すべて理論があることを理解して見ることができるようになったんです。盛り付けや、キャッチコピー、掲載されている写真の大きさ……すべてに理由がある。3級で学んだことが日常の中にたくさんあることに気付くたびにワクワクしました」。
「フードコーディネーター」の勉強は、ただの知識ではなく、食にまつわるあらゆることを読み解くための視点。杉水流さんは、ますますこの仕事を極めていきたいと強く感じたのだそうです。
答えがないからこそ、学び続けるのが面白い
3級を勉強したことで、「もっと知りたい」という気持ちが次々と湧いてきた杉水流さん。基礎を学んだことにより見えてきたフードコーディネーターとしての可能性に惹かれ、学ぶことが楽しくなったと振り返ります。
メニュー開発に携わったスイーツをより魅力的に見せるために器選びやシーンのイメージなどを提案して形にしていく。
「3級で基礎ができたことで、知的好奇心がぐっと膨らんだ時期でもありました。料理教室に通ったり、パソコンでチラシを作ってお店に置いて反応をみたり、経営用語についていくために、1か月に10〜15冊の本を読んでいました。でも、こうして独学や実践を迷わず進められたのは、3級の学びを通じて、食の仕事に必要な知識の全体像を先に掴めていたからだと思います。自分が今何を学ぶべきかが明確だったからこそ、スムーズに進められたんですね」。
そして3級で学んだ理論は、現場でも大きな支えになっているのだとか。
「3級で学ぶ色彩やテーブルコーディネートの基本は、『なんとなく』のセンスを、理論に基づいた説得力のある言葉で説明できるようにしてくれるんです。プロの現場で提案するとき、『私の感覚です』ではなく『こういう理由で美味しそうに見えます』と、言語化して伝えられる。それが今、大きな強みになっています。感覚という曖昧なものを自信を持って言葉にできるようになったのは、3級で得た一番の宝物ですね」。
その後、フードコーディネーターとして独立し、現在13年目。今もなお学びを深め続ける理由を、次のように語ってくれました。
「この仕事にはゴールがありません。社会が変われば求められるものも変わる。答えがないからこそ飽きずに追求し続けられるし、それぞれの現場で形にする面白さを感じています」。
1人じゃないと思える、「エリア制度」という支え
着実にプロとして歩んできた杉水流さんですが、この仕事を続ける中で感じてきたのが、独特の「孤独感」だったといいます。
「フードコーディネーターって、組織の中でも複数人必要なポジションではないことが多いです。フリーランスで活躍する方も珍しくありません。そうすると、悩みを誰にも相談できなくて、1人で立ち止まってしまうこともあるんです。だからこそ、日本フードコーディネーター協会の『エリア制度』で仲間と繋がれることが、本当に心強くて」。
福岡・糸島の食材を巡るツアーを開催。
「エリア制度」とは、全国の会員が地域ブロックごとに分かれ、勉強会や産地見学などのイベントを通じて交流できる仕組み。現在、杉水流さんは九州・海外エリアのリーダーとして、全国の仲間との交流を深めています。
「悩みを共有するだけで、視界がパッと開けるんですよ。集まるメンバーも、フードコーディネーターとして仕事をされている方だけでなく、会社員やパン教室の先生だったり、飲食店経営者……本当にさまざま。でも共通しているのは、みんな『食べることが大好き』ということ。おいしいものが好きな人に、怖い人はいません(笑)。同じ『好き』でつながれる仲間がいると、新しい一歩も軽やかに踏み出せると思うんです」。
「フードコーディネーター」3級は暮らしを豊かにする、最初の一歩
杉水流さんの原点は、「食が好き」というシンプルな気持ち。
「『フードコーディネーター』の勉強は、『食を仕事にしたい』と明確に思っていない人にこそ、おススメしたいんです。外食で料理を撮りたくなる人、週末のカフェ巡りが何より楽しみな人。そういう人にとって、3級の学びは毎日の食体験を何倍も楽しくしてくれるエッセンスになると思います」。
「フードコーディネーター」の資格は、レストランでついつい写真を撮ってしまう人にピッタリ。
専門知識がなくても問題ないと、杉水流さんは続けます。
「基本から学べる資格なので、これまで食に関わってこなかった人でも大丈夫。『美味しいものが好き』という気持ちさえあれば、公私で活かせる知識が身につきます。人生の幅が、確実に広がるんじゃないかな」。
他の資格や得意分野と「掛け算」できるのも、フードコーディネーターの強み。
「野菜ソムリエやワインソムリエなど、別の専門を持っている方とも相性のいい資格だと思います。3級で身につくマーケティングや戦略の視点を掛け合わせれば、自分の専門知識を仕事として活かす道筋が見えてくるキッカケになるのでは」。
最後に、AIや機械化が進むこの時代だからこそ、フードコーディネーターには可能性があると教えてくれました。
「人の心を動かすのって、やっぱり人の手によって作られたものだと思うんです。最適な構図や盛り付けをAIが教えてくれる時代かもしれない。でも、ちょっとした野菜の表情や、切り口の美しさ、色合いのバランス……。目の前にある食材やお料理の細部の魅力を感じ取って、お届けできるのは、人だからこそ。きっとこれからも、フードコーディネーターは確実に求められ続けると思います」。
杉水流さんの話から見えてきたのは、「フードコーディネーター」の学びによって得られる「日常の見え方を変える力」だ。それは、いつもの食卓や飲食店での体験を豊かにしてくれるヒントのようなもの。
食が好き、食関係の仕事に携わりたいという人はもちろん、料理の写真を撮ったり、SNSで発信したりすることが好きな人にとっても、この資格は新しい一歩につながるかもしれません。一緒に頑張れる仲間や、新しいキャリアとの出会いが待っているはずです。
文=SUGARBOY










