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経営承継アドバイザーとは?学べる内容や取得のメリットをインタビュー!

インタビュー

経営承継アドバイザーとは?学べる内容や取得のメリットをインタビュー!
企業経営アドバイザーや相続検定・年金検定を主催する日本金融人材育成協会が、新資格「経営承継アドバイザー」を創設!今回は経営承継アドバイザーの資格監修と講師を務める方と実際に資格を取得して活躍している方に、資格の内容や取得してみて役立った点、取得のメリットなどを伺いました。


お話を聞いたのはこちらの方

資格監修・講師:大山 雅己 氏
合同会社ゆわく 代表社員
ジュピター・コンサルティング株式会社 代表取締役
TAC経営承継アドバイザー講座・経営承継編講師

資格取得者:渡辺 昇 氏
不動産・経営コンサルティング業
株式会社 府中ミルクセンター(親族経営会社・食品卸業)顧問
所持資格:企業経営アドバイザー/1級販売士/宅地建物取引士/マンション管理士



新資格「経営承継アドバイザー」とは?

――経営承継アドバイザーの資格の創設にはどのような背景があるのでしょうか?


経営承継アドバイザーは、各企業の内外で事業承継について気軽に相談できる人材を育成するために創設されました。

現在国内には、350万社を超える中小企業が存在し、これは国内企業の99.7%を占めるとされています。

利益や財務状況にかかわらず、それぞれの企業に技術、立地、地域とのつながりなど特長や独自性がある一方、その多くが経営者の高齢化や後継者の不在による事業承継問題を抱えているといわれていて、今後もその数は増加する見込みです。

日本政策金融公庫総合研究所が実施した後継者の決定状況についての調査では、事業承継が叶わずに「自分の代で廃業予定」と回答している経営者は回答者全体の半数以上を占めます。

参考:後継者の決定状況について/日本政策金融公庫総合研究所(2019年)


さらにその中には事業内容に高い独自性がある企業や安定的な経営をしている企業も一定数存在しています。



参考:経営状況/日本政策金融公庫総合研究所(2019年)


このような状況を受けて、中小企業庁でも相談窓口の開設や補助金給付をはじめとする対策が打たれるなど、事業承継のサポートや事業承継に携わる人材の育成は日本経済の大きな課題となっているのです。


中小企業は生き物の生態系に例えられることがあります。例えばネジを製造する中小企業があって、そのネジが調味料の製造機械に使用されているとします。

ネジを製造する企業に後継者がなく廃業してしまったら、最悪の場合にはそのネジを使った機械で作られる調味料が姿を消し、さらにはその調味料が使われている食品も存続が危うくなるということです。

中小企業を守るということが私たちの生活の豊かさや、ひいては地域の文化・活力を守ることにもつながっています。

――経営承継アドバイザーとはどのような資格でしょうか?


経営承継アドバイザーとは、企業経営アドバイザーや相続検定・年金検定を主催する日本金融人材育成協会の新しい資格です。

既に取得している他の資格や従事している業務の知識・経験をベースに、事業承継のノウハウを得て業務の幅を広げてもらいたいという意図から2021年12月に創設しました。

経営承継アドバイザーの資格はWEB講座とWEB試験を修了することで取得でき、講座では事業承継に関する制度面はもちろん、「事業をどのように受け継いでいくのか」という点を重点的に学ぶことができます。

事業承継問題への注目度が高まっていることもあり、資格創設以来、講座やセミナーに多数のお申し込みを頂いています。

▼経営承継アドバイザー WEB講座カリキュラム ※クリックして拡大

――経営承継アドバイザーの役割を教えてください。


経営承継アドバイザーの取得者の主な役割は大きく分けて2つあります。

まず1つ目は「中小企業経営の伴走者」となり、経営者や場合によってはその社員・家族との対話を通して、事業承継を含む中小企業経営の課題を可視化・解決に導くことです。

経営承継アドバイザーの行う対話では、経営者の考えや事業の状況、解決すべき課題を導き出すことが求められます。その課題を共通認識とした上で、経営者と共に事業の未来を考え、サポートを行います。

2つ目の役割は、経営者と専門家をつなぎ、両者間の連携をスムーズ化して課題解決に導く「中小企業と専門家との間の翻訳機能」を果たすことです。


経営承継アドバイザーが事業承継をサポートする中で、課題が発生した際には経営者と税理士・会計士・弁護士などの専門家をつなぐことはもちろん、経営者の考え・意図を専門家に、専門家の対応を経営者に、それぞれかみ砕いて丁寧に伝えることも求められます。

特に製造業や加工業では、専門用語や生産の仕組みなど、社外や業界外の方に分かりづらい部分もあり、経営承継アドバイザーが経営者と税務・財務・法務の専門家との間に入って相互理解を促す「翻訳機能」を担うべきだと考えています。

また、税務・財務・法務の専門家と連携する以外に、中小企業の真の課題を踏まえて行政サービスや補助金制度を紹介する場合もあります。


事業承継の新しい考え方「事業承継2.0」とは?

――経営承継アドバイザーの資格の特徴はどのような点でしょうか?


経営承継アドバイザーの資格の最も大きな特徴は、事業承継にまつわる税務や財務、法務の基礎知識を身に付けるだけではなく、事業価値を再認識して次の世代に受け継いでいく方法を重点的に学べる点だと思います。

事業承継というと、制度や手続きの面ばかりに気を取られがちですが、承継する事業の価値や事業の意義を再認識し、後継者に伝えていくことも大切です。

実際、M&Aでは事業を買収する前に、財務や経営状態以外にも事業の価値や意義を深く調査しますが、親族内承継や従業員承継ではそういった点の伝承がおろそかになる場合も多く、この解決策となるのが経営承継アドバイザーの存在と「事業継承2.0」という考え方です。

――「事業承継2.0」について教えてください。


経営承継アドバイザーでは、事業の持続性を高める考え方を「事業承継2.0」と呼んでいます。

制度や手続きに目を向ける考え方を「事業承継1.0」として、「事業承継2.0」は事業の意義や沿革などを踏まえた上で「事業の価値を高めるには何をすべきか」を明確化し、より踏み込んだ事業承継支援を目指す考え方です。


経営承継アドバイザーはこの「事業承継2.0」の考え方をベースに経営者一人ひとりと向き合い、「そもそもどんな事業なのか」「この事業が無くなったら、社会にどんな影響があるのか」といった対話を通して事業価値の再認識を導きます。

――実際に事業価値を引き出して事業承継を成功させた例を教えてください。


ある産業用送風機のメーカーでは5億円の債務超過で、経営が立ち行かないような状況が続いていました。

産業用送風機というとニッチな印象ですが、例えば製粉工場では送風機を粉の搬送の仕組みとして活用したり、ガスが発生する工場では送風機によりガスの循環・排出の仕組みとして活用したりなど、さまざまな工場で欠かせない設備の1つとなっています。

それに加えて、汎用品ではない個別のニーズに合わせた高機能の産業用送風機を製造している企業が少ない点や、製品に対して多くの大手企業の信頼が長く続いている点からも、事業価値は十分にあると考えました。経営課題を一つ一つ解消しつつ、提供する製品の果たしている多様な提供価値や長年培われてきた技術をもとに、金融機関による事業への評価・理解に基づく支援も得ることができ、10年の時間を経て、最終的に10数億円の価値がある企業として新たなステージを歩んでいます。

顧客提供価値や価値創出を支える技術・仕組み、知的財産、人材、立地、人や企業とのつながりなど、財務状況や資金繰り以外の視点から事業の価値を高めることができた一例となりました。

また、「経営課題は特にない」と感じている経営者の方に対しても、対話を通して気付きを引き出し、潜在的な経営課題や改善点を明確にすることで、より効果的な経営アドバイスを行えます。


経営承継アドバイザー資格を取得するメリットとは?

――経営承継アドバイザーの講座で学んだ内容で、特に役立った点を挙げるとしたらどの部分でしょうか?


私が最も役立ったと思うのは「15の対話の視点」という内容で、これは事業に関する15の質問をまとめたものを指します。

「対話」というと、テンプレート的な会話の暗記をイメージしがちですが、実際は全く異なり、実務での再現性が高く学べてよかったと思える知識の1つです。

例えば「なぜこの事業を始めたのか」「なぜこの時期・場所でこの事業を始めたのか」といった質問でその企業を深く知り、なおかつ経営者の目線に立って事業承継や経営のアドバイスを行うことができます。


私自身、不動産のコンサルタントをしつつ家業の後継者として食品卸業を手伝っている身で、それぞれの立場で業界・業種が全く異なる相談者様・お客様と接しています。

そういった状況下でも、「15の対話の視点」は業界・業種にかかわらず潜在的なニーズを引き出したり、相手の経営に深く携わったりするきっかけとなりました。


――経営承継アドバイザーはどのような方におススメの資格ですか?


まず、家業の経営者の方・家業を継ぐ予定のある方にはぜひおススメしたいです。

後継者として会社を継いだ方の中には、家族の病気や相続の問題で突然事業を継ぐことになったという事例も少なくありません。早めに事業承継の考え方を身に付けておけば、もしものときにも安心です。

その他にも、経営者の方と接する機会が多い地域の金融機関の方でしたら、「中小企業経営の伴走者」や「中小企業と専門家の間の翻訳機能」として適任ではないでしょうか。専門とする分野の知識・経験に「事業承継2.0」の考え方を兼ね備えているとなれば、まさに鬼に金棒です。

特に20代~30代の方は、今後10年以上の長期的な目線で経営のサポートを行っていくことも考えられます。若い方ならではの視点から経営者の方やその家族の方、社員の方の間に入り話し合いの起点となることも可能でしょう。

人と人との距離が遠くなった現代だからこそ、「御社の近くに寄ったから」とこまめに足を運んで経営をサポートしてくれる経営承継アドバイザーがいる安心感は、経営者にとって何物にも代えがたいと思います。


――士業や経営・金融系の資格などとのWライセンスはおススメでしょうか?


経営承継アドバイザーは税理士や中小企業診断士、会計士、弁護士、FPなど、事業承継にまつわる制度・法務・財務の知識を豊富に持つ専門家の方のWライセンスに大変おススメです。

金融系の資格を持つ方や士業系の専門職の方が制度・法務・財務の知識を土台に、経営承継アドバイザーの「事業承継2.0」の考え方を身に付けることで、コンサルティング力が補完され、より踏み込んだ提案・アドバイスが可能になるのではないかと思います。

――渡辺さんはコンサルタントと家業の後継者の両方の顔をお持ちですが、経営承継アドバイザーを取得したメリットはありましたか?


経営承継アドバイザーの資格を取得したことで、コンサルタント・家業経営の両方の業務にメリットをもたらしたと思います。

まず不動産のコンサルティング業務では、不動産の知識と経営承継アドバイザーとしての視点を併せ持つことで、不動産にとどまらず事業承継や経営を包括した適切なアドバイスができるようになりました。

お客様の中には経営者の方も多くいるため、そういった方に対しては「15の対話の視点」をもとに対話を重ねることを意識しています。その結果、これまで以上に信頼を寄せてもらえるようになり、「中小企業経営の伴走者」としての成長を感じています。

また、家業の後継者という面でも「事業承継2.0」の視点があったからこその気付きがあり、経営課題や改善点の抽出に役立っています。

事業を長く続けていくためには、その事業の強みや歴史的背景、そして現代社会の風向きを知って何ができるかを考えることが重要だと感じています。私たちも近年では、取り扱う商品の幅を広げたり、販路を広げたりといった施策を行って、これからの食品卸業のニーズを探っている最中です。



経営承継アドバイザーの今後は?

――経営承継アドバイザーはこれからどのように活躍すると考えられますか?


核家族化や都市化によって、親の家族と子世代の家族に距離があったり、親の営んでいる家業を子世代が深く知らずに過ごしていたりする場合も少なくありません。

事業承継では家族や親子だからこそ話しづらいこともあり、そういった際に間に入って事業承継を導く経営承継アドバイザーのニーズは今後高まっていくと思われます。


経営承継アドバイザーの強みは、事業承継のサポートのみを目的としているのではなく、事業承継を経営の1シーンとして捉え、長期的なサポートを行える点です。

数ある中小企業の中でも、事業承継に対して十分に取り組んでいる企業はほんの一握りとされています。後継者への承継に備えて事業の棚卸を行う「プレ承継期」から、承継・引継の期間、そして後継者が経営力を身に付けていく「ポスト承継期」、さらにそれ以降も伴走できる経営承継アドバイザーは、今まさに社会が求める存在と言えるでしょう。


もちろん、資格取得者のビジネス性・社会貢献性の両面も充実させられると思います。ぜひこれから多くの方に経営承継アドバイザーを志していただきたいです。



経営承継アドバイザーの公式サイトはこちら


資格情報

取得方法

経営承継アドバイザー資格認定講座の「経営承継編」と「制度理解編」の両方のWEB講義を受講・修了し、WEB修了試験に合格する必要があります。WEB修了試験は8割以上正解で合格となります。
合格後に発行される認定申請書を提出することで資格取得となります。

受講料

110,000円(教材費・消費税込)

講座受講資格

どなたでも受講できます


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