ニュース時事能力検定とは?就活に活かせる?過去問題や試験の裏側も
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今日みなさんが得たニュースは本当に正しい情報ですか?
多くの情報があふれているウェブ上やSNS上には、誤った内容やフェイクニュースも多く紛れています。
そのような中で正しい情報を見極めるには、目の前にある情報だけではなくこれまでのニュースの流れを多角的に理解し、公正に判断できる「時事力」が求められます。これを身に付けることができるのが「ニュース時事能力検定(N検)」です。
ビジネスパーソンや就職活動を控えた学生からも人気のN検。以前から主催をしていた毎日新聞社や地方新聞社に加え、2019年度からは朝日新聞社も加わることとなり、毎日新聞社・朝日新聞社の2社がタッグを組むと大きな話題になっています。
そこで今回は、N検の特徴や活用シーンと併せて、朝日新聞社との取り組みなどを、元・毎日新聞記者で、株式会社毎日教育総合研究所の代表取締役社長の澤圭一郎氏に伺いました。
Q1 現在のニュースが置かれている状況を教えてください。
現在のニュースは「報道メディアの多様化に伴ったメディアごとの信頼度のバラつき」や、「社会が複雑になったことによる内容の難化」などの課題を抱えています。
中でもポータルサイトやSNSアプリといった媒体は、その手軽さからニュース配信サービスとして年々シェアを伸ばしているものの、インターネット上のニュースに関して、信頼が置けないと感じている方は少なくありません。
インターネット上にあるニュースの信頼度について、公益財団法人新聞通信調査会の世論調査では2008年度から緩やかな下降線を描いており、2018年度には100点満点中50点を切っています。
(数値データ参考:公益財団法人 新聞通信調査会「メディアに関する全国世論調査」 第1回~第11回)
一方、昔から報道メディアの中で大きな信頼を寄せられているのが新聞です。その信頼度の高さはもちろん、例えば書店に行って知らない本を見つけるように、自分の知らない領域のニュースを得られるのは、検索が必要なインターネット上のニュースにはない長所といえます。正確な情報を幅広く得られるため、ビジネスパーソンや就職活動を控えた学生がニュースを得るのに最も適したツールなのではないでしょうか。
しかし、新聞からニュースを得ている方は年々減少傾向にあり、新聞は「信頼はされているけれど読まれない」という矛盾した状況に置かれています。
私のように編集に関わっていた立場から見ても、この「新聞離れ」の一因は新聞の難しさによるものだと考えられます。社会の状態が複雑化したために新聞記事の内容も難化しているということに加えて、新聞を作る際は紙面の文字数や表現も考慮しているのですが、実際手に取った方、特に若い世代には慣れないものが多く、表現や見せ方に難しく感じられる場合もあるのでしょう。
▲毎日新聞1960年3月22日の1面(クリックで拡大表示)
▲毎日新聞2019年3月22日の1面(クリックで拡大表示)
一方で59年前と現在の新聞を比べると、文字の大きさや内容など、かなり読みやすく改良されていることが分かるのではないでしょうか。難しいニュースをどれだけかみ砕いて分かりやすく伝えるかという点は各新聞社が長年にわたり取り組み続けている重要課題です。
Q2 N検はどのような検定なのでしょうか?
Q1にあるようにニュースの受容をめぐる状況は複雑ですが、間違いなく言えることは、世の中に「ニュースを知りたい欲求」があるということです。N検を主催する日本ニュース時事能力検定協会の理事でもある池上彰さんが出演するテレビ番組は毎日のように放送されていますし、テレビ番組に限らず、ブログ上やSNS上でも専門家やコメンテーターの発言に注目が集まっています。
N検を運営する株式会社毎日教育総合研究所が毎日新聞社のグループ会社であるという強みを活かして、このような「社会の出来事をよく知りたい」「ニュースをもっと理解したい」というニーズに応え、受検者の「時事力」をさらに高められるよう公式教材(テキストや問題集)を制作し、検定試験を実施しています。
公式テキストは1級~5級の対象年代によって、同じ内容でも表現を変えたり質問の投げかけ方を変えたりと工夫をしている上、毎年3月には次年度に合わせた内容に全面改訂しています。
特にビジネスパーソンや就職活動を控えた学生におススメの1級~準2級では表面上のニュースのみならず、「なぜそのような事態に発展したのか」や、そのニュースに寄せられている賛成・反対意見の主張内容を掘り下げて学習できるため、新聞を読む際のガイドブックとしてはもちろん、社会と学習する方を結ぶ懸け橋となるでしょう。
Q3 主催に朝日新聞社が加わったことについて教えてください。
2007年に毎日新聞社や全国の地方新聞社・放送局の主導で開始されたN検ですが、2019年度からは朝日新聞社もその主催に加わりました。
外部の方から見ればライバル紙がどうして共催するのか、と思われるかもしれませんが、高等学校野球ではこれまでも協力関係にありました。春の選抜大会を毎日新聞社・高野連(日本高校野球連盟)が主催、朝日新聞社が後援し、夏の全国選手権大会を朝日新聞社・高野連が主催、毎日新聞社が後援するという形で連携しています。また、文化事業では将棋の「名人戦」を両社で主催しています。
<第91回センバツ高校野球>
第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が23日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕した。「平成最後の甲子園」で出場32校が頂点を目指す。(6面に関連記事)
約2万8000人の観衆が見守る中、午前9時に始まった開会式では、槙原敬之さんが作詞作曲した「世界に一つだけの花」に「どんなときも。」のメロディーを組み入れた入場行進曲に合わせて、各校の選手たちは力強く行進した。
▲毎日新聞から抜粋(2019年3月23日)
毎日新聞社・朝日新聞社の2社がN検のリーディング企業となるのは新聞業界でも大きなインパクトになったと思います。これまでの試験で協力をいただいている地方新聞社からも反響があり、N検をさらに盛り上げていこうと士気が上がっています。早速、今年度の6月検定は昨年度と比べて受検者の増加が見受けられました。
新聞紙面ではそれぞれの新聞社の持つスタイルがありますが、試験にはこれまで通り事実や史実のような揺らぎのない問題が出題されるのでご安心ください。
また、告知はもちろん、「世の中のために何ができるか」という部分でも力を合わせていきたいと考えているところです。
【朝日新聞社コメント~N検主催への加入にあたって~】
朝日新聞社は、これまでも新聞を活用したさまざまな教材を、教育の現場に届けてきました。新聞から正しく情報を取り出し、自ら考える力を養う教材を提供することは、新聞を読解力、思考力の育成に利用したいという教育現場の期待に応えるばかりでなく、将来の読者を育み、新聞業界を活性化することにもつながると考えております。2019年度より、毎日新聞社はじめ全国の新聞社が主催してきたN検に加わったことも、その延長線上にあります。
「新聞離れ」が叫ばれるなか、N検が果たすべき役割はますます重要になるでしょう。今後は主催の各新聞社と協力しながら、N検のさらなる普及・促進に努めてまいりたいと考えております。
Q4 N検はビジネスや就職・転職活動の場面で活用できますか?
ビジネスパーソンや就職活動を控えた学生の時事力を鍛えるのに、N検はぴったりだと思います。受検者※を対象としたアンケートにおいても、受検動機の問に対して「就職活動に役立ちそうだから」「社会人として仕事や日常生活で役立ちそうだから」という回答が過半数を占めています。
※回答者はグラフ下部
受検を決めた動機は何ですか?
※回答者:短大/専門学校生、大学1年生~4年生、大学院生、会社員、公務員、団体職員、自営業、アルバイト、無職、その他
N検を導入している企業に話を伺ってみると「取引先の年代にかかわらず、ニュースをきっかけに雑談をして距離を縮めることができるようになった」「時事的な会話からビジネスのチャンスが生まれた」など、N検で鍛えた時事力がビジネスに直結したという声が聞かれました。
時事力に関して「社会に出たときに活用できるのか」という疑問を耳にすることがありますが、やはり社会の風向きを敏感に感じる力があればビジネスシーンでの取引や就職・転職時の面接でも信頼を得ることができるのではないでしょうか。
また、例えば近年増加している高齢者の交通事故に対して、「怖い」「悲しい」という感情的な面だけではなく、自動運転化やインフラ整備にまで目を向けることができれば、その分野の知識が身に付くことはもちろん、ビジネスの活路を見いだして社会をより良いものにすることも可能です。
時事力は、身に付けたら明日すぐにアイデアが湧くというような即効性があるわけではありません。しかし、全方位的に社会の状況を見渡すことで社会の課題をチャンスに変えることや、会話の「引き出し」を増やすことはできます。そういった点でN検はビジネスパーソンや学生の「質を保証する検定」として大きなアドバンテージになると思います。
Q5 N検ではどのような問題が出題されますか?
問題は「政治」「経済」「暮らし」「社会・環境」「国際」の5分野で構成され、そのうち約6割が公式教材から出題されます。
また、検定日の約1カ月前(目安)までのニュースを踏まえた問題もあります。各時事問題の背景や経緯を理解しているかを問う形式が多いため、公式教材と日々のニュースの関係を整理しながら学習を進めてください。
2019年度6月検定2級 問26
2019年度6月検定準2級 問1、問19 より
※本問題の著作権は、株式会社毎日教育総合研究所に帰属します。また、本問題の無断転載、無断営利利用を厳禁します。本問題の内容や解答等に関するお問い合わせは、受け付けておりませんので、ご了承ください。
Q6 元・新聞記者としてN検の運営に込めた思いを教えてください。
N検には、多くの方に長い人生を生き抜くための知識を蓄えてもらいたい、そして社会の出来事に対して自分なりの考えや答えを見いだしてほしいという思いが込められています。
近年、特に若い世代のビジネスパーソンや学生はニュースに触れる機会が減少しているといわれています。しかし、ニュースを知らないためにこの先どのようなことが自分に降りかかるかが分からないという状態はあまり賢明ではありません。
例えば、「老後2000万円不足」問題にしても、今日・明日の自分に問題はないかもしれませんが、数十年先、60代になったときに自分がどのくらい貯蓄できているか、何歳まで働かなければならないかなど自分のことに置き換えてみてください。小さな興味からニュースやその周辺の知識を取り込んでいけば、いつかきっと役立つはずです。
また、時事力を身に付けることで人間性を磨いてほしいという考えもあります。
昨今のジェンダーや人種の問題、コンプライアンスの問題などを正しく理解していないがゆえに、不用意な発言や行動で誰かを傷つけてしまう、誤解を招いてしまうといったことが度々報道されています。世の中の風向きを捉えることはさまざまな立場の人が暮らす現代社会において心配りや思いやりにつながると信じています。
いかがでしたか。
世界は今、新たな産業の発展や個々のパーソナリティの尊重、企業による環境問題への取り組みなど、多くの局面で急激な変化を迎えています。それに伴い既に人々のモラルや考え方、概念も時代に即した新しいものに変わりはじめていると感じる方も多いはずです。
N検の学習・受検で得られる時事力は、実際の報道や世の中の幅広い意見、ニュースの基礎となる知識を包括しています。これらは変化を続ける世の中との共通認識でもあり、ビジネスパーソンや就活生としてはもちろん、現代を生きる一人としてもますます欠かせない教養となっていくでしょう。
公式サイト: https://www.newskentei.jp/