ここが変だよ会社法!~会社法を読む~
令和元年12月,実務上も関心が高い会社法の一部改正が成立しました(令和元年法律第70号)。
この改正は,上場企業等に社外取締役を設置すること義務付けることなどを内容とするものです(執筆時点で,施行日は未定)。
法律に携わる者―これには,当然に受験生の皆さんも含まれます―は,条文を丁寧に読み込み,その趣旨を理解しておく必要があります。受験生の皆さんは,これらに加えて,条文の内容を暗記しておくことも必要です。
臨機応変に条文を使う力(条文力)は,日々条文と向かい合う中で養成されるものです。
私も,日々条文と向かい合っているのですが,その中で気付いたことがあります。
それは,条文にも「ミス」があるということです。
「人間のすることにはミスがある」などと言われますが,条文も例外ではないのです。
ここでは,司法書士試験のほか,いくつかの国家試験の科目となっている会社法のミスの一例を挙げておきます。太字部に注目してお読みください。
【ミス①】
会社法100条1項と101条1項では「設立しようとする株式会社が…」(太字は筆者による。以下同じ。)となっているにもかかわらず,同法99条では「設立しようとする会社が」となっているというミス
【ミス②】
会社法783条2項は,「…吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(以下この条において「合併対価等」という。)…」として,「合併対価等」という用語を同条でしか使わないものとして定義されている。しかし,次の条文である会社法784条1項では,「吸収合併又は株式交換における合併対価等の全部又は一部が…」として,再び「合併対価等」という用語が使われるミス
他のミスについては,私のブログの以下の記事をご参照ください。
実は,【ミス②】は,平成26年の会社法の一部改正により修正されました。
具体的には,現在の会社法783条2項は,「…吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(以下この条及び次条第1項において「合併対価等」という。)…」として,「合併対価等」という用語を783条2項と784条1項で使うものとして定義されることになりました。
私は,会社法の専門家である司法書士になるための登竜門である司法書士試験に一人でも多くの受験生を合格していただくために,今日も会社法を読んでいます。
くれぐれも誤解していただきたくないのは,決して,会社法のミスを探すためではないということです…汗
ただし,次の会社法の一部改正により,いくつのミスが修正されているかには注目しましょう。
受験生の皆さんも,条文力を養成しましょう。
具体的には,まず,試験問題に対する条文の出題の割合を正確に把握し,また,どの分野の条文がよく出題されているかを把握した上で,その分野の条文を出題されたことがあるものから順に,読み込んでいきましょう。条文を書き写すことはおすすめしませんが,音読は意外と有効です。
講師プロフィール
姫野 寛之(ひめの ひろゆき)氏
TAC/Wセミナー司法書士講座 専任講師
2002年度司法書士試験合格。 司法書士試験合格に必要な知識を鋭く講義する。受験生心理と過去問を知り尽くしており、常に過去問を意識した視点からの解説は、受講生から“絶賛”されている。
Wセミナー司法書士講座「基礎総合コース」「上級総合本科生」の教材も執筆している。