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電気工事士として輝く「#現場女子」にインタビュー!女性が建設の現場を変える

インタビュー

電気工事士として輝く「#現場女子」にインタビュー!女性が建設の現場を変える

今、Instagramで「#現場女子」というハッシュタグが盛り上がりを見せているのをご存知ですか?
 
工事や建築などの現場で働く生き生きとした女性たちの写真が5.6万件(2021年7月5日時点)と多数投稿されており、これまで3K(きつい・汚い・危険)とも言われ、男性の仕事というイメージが強かった建設現場の仕事のイメージが大きく変わろうとしています。
 
「#現場女子」投稿者の一人である前中由希恵さんは、Instagramで5,019人(2021年7月5日時点)のフォロワーを集める「なないろ電気通信株式会社」に所属し、第一種電気工事士として、京都を拠点に電気工事の現場に立っています。
 
今回は、前中さんに資格取得の経緯や、電気工事士として働く中で印象的だったこと、建設現場で女性が働くことへの想いなどを伺いました。

前中由希恵さん
第一種電気工事士として「なないろ電気通信株式会社(@nanairodenkitsushin)」に所属。京都を拠点に電気工事を行う傍ら、国内外のワークツールやウエアブランドでアンバサダーを務める。2019年には京都七条大橋のライトアップイベントの企画・設営を担当。ニュース媒体に多数取り上げられるなど、建設現場で働く女性のアイコンとして活躍。

Instagramを拝見して、とてもオシャレなワークウェアで現場に立っていらっしゃるなと思いました。普段建設現場に立つ際のファッションで心がけていることはありますか?

前中さん:基本的には、見た目の綺麗さ、清潔さを心がけています。現場の職人って、作業上汚れてしまうこともあるんですが、現場外の人からすると少し印象が悪いかもと思っています。なので、作業着は格好よく、イメージを変えたいと思って。今日もポロシャツを着ていたり、最近は襟のあるものをよく選んだりしています。

学生時代はファッション工学を勉強していたので、そのことからもずっとオシャレな作業着を求めています。今は格好いい作業着もいっぱい出ているので、お店を見るのも楽しいし、いいものを見つけたらつい買ってしまいますね。

▲自身がアンバサダーを務めるウエアブランドを着用

そうしてこだわって、インスタグラムに作業着の投稿をさせていただいたことがきっかけで作業着のアンバサダーのお話をいただくご縁につながりました。


もともとはどのようなきっかけで電気工事士になられたのですか?

前中さん:親の知り合いに電気工事士さんがいて、高校を卒業した春休みに、照明器具をバラしたり梱包を開けたりするアルバイトに来ないかと誘われたのがきっかけです。

当時は工業高校に通っていたのですが、学んでいた分野は電気とちょっと違って、ファッション工学についてでした。そのときに染色や色彩の勉強をして、染色検定や色彩検定2級などの資格も取得しました。

その後、電気工事の会社に入社し、1年と経たないうちに第二種電気工事士の資格を取得できました。今思うと、高校生の頃に資格へのチャレンジを続けていたので、資格の攻略方法というか、知識を頭に入れていく方法というのが身に付いていたかなと感じています。

ステップアップを考えて転職を意識した5年目には第一種電気工事士を取得しており、転職した先では資格手当を頂くことができました。今勤めている「なないろ電気通信株式会社」でも、1級施工管理技士ライティングコーディネーターの資格を取得するために講習会やスクールリングに通わせていただきました。資格の取得は知識だけではなく、仕事をする上での自信につながっています。


電気工事士として、現在どのようなお仕事をされているのですか?

前中さん:今担当している物件はテナントの改修工事で、テナント内の配線工事や最終仕上げのコンセント・照明器具の取り付けといった内装電気周りの工事をしています。

他にもマンションやホテルなどの現場を担当していて、特にホテルの方は意匠にこだわった特注照明器具の取り付け工事で、電気工事の中でもどちらかというと金物工事のような、見栄えやディテールにこだわった電気器具の取り付けを任せてもらっています。


電気工事士として働く中で、印象に残っているお仕事をお聞かせください。

前中さん:毎日が印象に残っています!

電気工事士は他の施工・工事業の方との絡みが多く、例えば電気工事、内装工事、電気工事…と工程がサンドイッチになっている場面が多くあります。時には指示が上手く伝わらないこともありますが、日々苦労をしながら現場の他の業種の職人さんたちとやりとりをして、完成図面にある通りに工程を進めていくのがすごく面白いんです。

私は昔からRPGゲームが好きだったのですが、電気工事士の仕事はクエストを1つ1つクリアしていく感覚がとても強いような気がしています。

取り付けた照明にやっと明かりがついて「おー、明るくなったね!」と言われたときは達成感や喜びとともに、1つの現場が終わってしまう寂しさを感じながら、「次の現場はもっとこんなふうにしてみよう」という「攻略法」を考えています。

また、最近は現場を一人で任せてもらえることが多くなったので、自分の予定だけではなく、来てくれる職人さんの予定や持ち場も私が考えて采配することが増え、やりがいを感じています。

16年間電気工事士としてやってきて、もちろんまだまだできないことはありますが、やっぱり根本としては電気工事士の資格を持って現場に立っている以上、現場を完成させて当たり前、きっちり納めて当たり前、という意識でやりつつ、その当たり前のことさえも楽しんでいます。


高校時代の色彩の勉強などが、現在の照明のお仕事に活かされているそうですね。

前中さん:はい。特に色彩の勉強を活かせたと思ったのが、2019年に行った京都の七条大橋のライトアップイベントの設営です。

七条大橋が国の登録有形文化財に指定されたお祝いのライトアップだったので、色の再現性がすごく高いフルカラーのLEDを使わせてもらったのですが、非日常感が体験できるカラフルさを演出してほしいと言われる一方で、「派手なんは嫌やわあ」とか「京都の町は落ち着いた電球色でいいのに」という意見をおっしゃる方もいました。

二極化する意見の中で、京都を意識しながらカラフルな色を選ぶのは難しかったのですが、色彩検定などで鍛えられていた分、色選びや混色の調整で自分の力を発揮できたのではないかと思います。


最終的には「派手なんは嫌やわあ」と言っていた人も「綺麗やったわあ」と言ってくれました。

他にも、ライトアップ3日間の内、カラフルなパターンは1日目限定だったので、2日目、3日目に来た人たちが「今日は色変わらないの?」と言ってくれたりするのがすごく嬉しくて。

普段は私たちの会社の上に電気工事会社さんや建築会社さんがいて、さらにその上に設計者さんや施工主さんがいるので、直接自分が依頼者さんと顔を合わせる機会はなく、遠い存在に感じていました。しかし、ライトアップのときは地域の方と一緒に作り上げたり、見にきてくれた方が綺麗だねって声をかけてくれたりして、電気工事士を続けてきてよかったなあと思えたとても楽しいイベントでした。

2020年はコロナ禍でイベントが中止になってしまいとても残念だったのですが、そのつながりで民官問わず京都の街のライトアップの案件にお声をかけていただいております。

継続して電気工事の仕事を続けることで照明というやりがいを見つけ、それが自分の糧になって仕事を続けるパワーの源になってくれています。

▲ライトアップを手掛けた七条大橋と前中さん


今後の目標は何ですか?

前中さん:今の目標は、現場の女性を支援する団体の立ち上げです。

電気工事士の現場は女性が少ない上に、そもそも全体的に人材不足なので、女性の技能者がもっと増えることでその人材不足を解消するきっかけになるのではないかと考えます。

私は女性の電気工事士として16年間働く中で、要領を掴めば性別関係なく現場で働いていけるということを体感しました。今後、現場の女性同士がつながる場ができればさらに心強いのではないかと思うので、そのきっかけも作りたいと考えています。

また、資格を取ったり、勉強したりすることも私はとても大事だと思っているので、そういった点も広めて、女性の技能者がもっと業界に入りやすい環境を整え、さらには建設現場全体の仕事環境を変えていけるようになることを望んでいます。

例えば、「新しい工事現場に行ったときにトイレや更衣室がなくて困った」みたいな問題はつきものなのですが、これは女性だけでなく男性が働く上でも必要な環境整備だと思うんです。

今まで男性社会でなかなか問題にされにくかった、環境や働き方の整備も、女性が新しく入ることで必然的に「変えなきゃ」という意識が芽生えて、結果として建設現場全体を変えていけるのではないかとも考えています。

積もる想いの中、行動を起こそうとまずは広く知ってもらうきっかけとして、今はクラウドファンディングを利用したPR方法などを検討中です。また、今日着ているポロシャツにもプリントしてあるのですが、WBCS「We will breakthrough the Construction Site.(私たちは建設現場の殻を破りたい)」というキャッチコピーを作ってSNSで発信し、同じ想いの人々とつながっていくとか、そういう活動をしています。


あと、最近は英語を学びたい気持ちがすごく強いですね。今まで日本の現場で働いてきて、女性の職人って少ないなと思っていましたが、海外ツールメーカーの、世界8カ国の女性職人のチームにアジア代表として参加させていただいたことをきっかけに視点が海外に広がって、女性の職人として自分と同じように頑張っている方が世界にはたくさんいるんだと知りました。

それがとても嬉しく、自分の力になったんです。なので、彼女たちがどういうことを考えているのかを知りたいし、コミュニケーションをとっていきたいので、英語を話せるようになるのも今の目標です。


ありがとうございました。最後に電気工事士を目指す女性にメッセージをお願いします。

前中さん:ぜひ電気工事士の世界にチャレンジしてほしいというのが伝えたいことの1つです。飛び込んでみると案外できちゃう(笑)。

現場仕事って危ないイメージがあると思うんですけど、自分の心がけや知識を身に付けることで安全に働くことができます。あとは自分が頑張っていると、その姿勢を見て周りが応援してくれます。職人さんって熱い心を持った方が多いので、絶対サポートしてくれる。

なので、「やりたい」と思ったら本当にチャレンジしてほしい。ぜひぜひこの世界に飛び込んできてほしいです!!

いかがでしたか?
 
今、コロナ禍で女性の雇用状況の変化が深刻になっており、2020年4月1以降の約7ヵ月間、仕事になんらかの影響(解雇・雇止め・自発的離職・休業7日以上・労働時間半減30日以上)があった人は、男性の18.7%に対し女性は26.3%※で、4人に1人を上回っています。
『新型コロナウイルスと雇用・暮らしに関するNHK・JILPT共同調査』
 
また、2020年度の平均の有効求人倍率は、1.10倍と前年度に比べて0.45ポイント減となり、46年ぶりの下落幅となりました。そのような状況であっても、建設業の求人は安定しており、電気工事士を例にとると、2021年3月の電気工事の職業の有効求人倍率は、3.31倍となっています。
一般職業紹介状況(令和3年5月分及び令和2年度分)厚生労働省資料より
 
さらに、建設業界は未だ女性の進出が少なく、担い手確保やダイバーシティ推進の観点などから、国土交通省と建設5団体が、2014年8月に「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を発表するなど、女性にとって就職・転職のチャンスが広がっている分野です。
 
街を作り、そこに暮らす人々に笑顔の灯りをともす「#現場女子」の仕事には大きな可能性が秘められているといえるでしょう。


電気工事士とは

電気設備の工事・取扱の際に必要な国家資格。第一種・第二種に分類され、第二種が扱える範囲は「一般住宅」「小規模な店舗・事業所等」「家庭用太陽発電設備」など600V以下で受電する設備、第一種は第二種の範囲に加え、最大電力500キロワット未満の工場、ビルなど。
電気工事は資格保持者のみが行える「業務独占資格」であるため、資格の取得で電気工事分野の専門家として活躍が可能。求人数が多く、定年もないため、手に職を付けたいという方から人気の資格。

受験者数と合格率

第二種電気工事士

※令和2年度は新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため、上期の筆記試験が中止となりました。

第一種電気工事士

取材協力:
TAC株式会社 池亀 かや子 氏(執筆)

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