緊急企画!DX推進やテレワーク増加を受けて急浮上 おススメスキルは「知的財産」
インタビュー #PROMOTION この記事をあとで読む
2020年、新型コロナウイルスの感染が突如として広がり、世界中の人がこれまでの生活に大きな変化を迫られました。日本国内でも、政府からは「新しい生活様式(ニューノーマル)」への移行が提言され、3密や他者との物理的接触を減らすことが求められています。
そのような中、ニューノーマル時代への追い風となっているのが、DX分野と働き方改革の急速な発展です。
日本は諸外国と比べて、DX分野や働き方改革の遅れが指摘されていたものの、多くの企業・団体が長期的な観点から業務のデジタル化やAI導入に踏み切ったほか、事業構造自体にITの知見を取り込み、これまでのビジネスモデルを刷新した事例も目立ちます。
また、働き方の面でも、緊急事態宣言下に多くの方がテレワークを経験し、オフィスや現場以外での就業に目を向け始めるきっかけとなったのではないでしょうか。
そういった社会の変化に伴い、注目を集めるスキルの1つが知的財産の知識です。
今回は緊急企画として、実際に知的財産業務に従事する方や、知的財産の知識を業務に活かしている方のインタビューを交えて、知的財産の注目度がUPした背景に迫ります。
⇒知的財産はビジネスの要!知的財産管理技能検定の特集記事はこちらからどうぞ。
DXの推進に知的財産リテラシーは必須!
DXが進む近年、AIやIoTなどデータを利活用したデジタル技術、またプログラムの開発が進み、知的財産管理の重要性が急激に増しています。
中でもディープラーニングやデータサイエンスの分野では、客層データや購買データ、行動パターンデータなどパーソナルデータの獲得が必須となり、場合によってはこのようなデータが知的財産として扱われるほか、獲得データを活用した技術も知的財産として保護の対象となることがほとんどです。
こういったDX時代の知的財産をどのように管理・活用するのかは各企業の経営課題であり、これからのビジネスシーンにおいて知的財産に関する基本的なリテラシーはもちろん、知的財産を戦略的に活用するための知識が求められると予想されています。
知的財産業務はテレワークと好相性!
新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークを導入した企業が多くあった一方、テレワーク導入直後は「本当にこの方法で業務がまわるのか」といった懸念の声も聞かれました。
ところが、そのような中でも企業の知的財産部門や特許事務所など、知的財産関連の業務に従事する方を取材してみると、その大多数がテレワークを活用して業務を進め、「頻繁に会社に集まらなくても滞りなく知的財産業務を遂行できている」、「特許などの出願書類の作成は自宅でも問題なく可能」などの声が挙がっています。
「テレワークで自分の時間をより活用したい」「オフィスよりも自宅など落ち着いた場所で仕事をしたい」という方の就職・転職先候補として、知的財産業務はおススメの選択肢といえるでしょう。
知的財産業務に従事する人にインタビュー
知的財産業務はテレワーク向き コミュニケーション強化で業務の円滑化も
旭化成株式会社 研究・開発本部 知的財産部
知的財産部は、旭化成グループ全体の知的財産活動の推進、知的財産権の権利化、活用を行っており、特に最近ではグローバル知財活動の推進、DXによる事業高度化への知財による貢献、DX発明の発掘、IPランドスケープ※活動に積極的に取り組んでいる。
※知的財産を重視した経営戦略のこと。近年、欧米企業などで急速に浸透しはじめた知財分析の手法。
インタビューにご協力いただいた方
旭化成株式会社 研究・開発本部 理事知的財産部長 中村 栄 様
旭化成株式会社 研究・開発本部
知的財産部 企画管理グループ長 寺田 博憲 様
――新型コロナウイルスの影響を受け、テレワークの導入に至った経緯について教えてください。
既に知的財産部では、2019年4月より月4日を上限にテレワークを導入していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年2月から、会社としてテレワーク導入部署の拡大や毎月のテレワーク上限日数の撤廃、3月からはフレックス勤務制度をコアタイム無しに変更するなどの動きがありました。
さらに知的財産部がある旭化成日比谷地区については、3月下旬から原則100%テレワークとしており、政府の緊急事態宣言解除や社会的情勢を踏まえつつ、2020年10月現在も出社率50%を上限としています。
――テレワークを導入してから、どのような変化がありましたか。
ハード面では当初、VPN※(Virtual Private Network)接続での通信速度遅延など、業務遂行上の問題がありましたが、7月までには解決されました。
また、運用面でもWEB会議と対面での会議の併用、打ち合わせ頻度の増加など、それぞれチーム単位で工夫することによって、現状、業務の遂行は問題なく行われています。
――2020年10月現在、どのような体制で業務を遂行されていますか。
現在でも知的財産部としては業務ミッションの遂行を前提にテレワークを推奨しており、出社率は25%前後です。
また、現状の会社全体のルールとして、就業場所は自宅、単赴者の家族居住地、介護対象者の家、実家に限定されていますが、PC画面や資料を第三者に見られない、会議の内容を聞かれないなどのセキュリティ対策を取った上で、今後リモートオフィスを就業場所に追加する検討を行っているところです。
――知的財産業務がテレワークに向いていると特に感じた事項について教えてください。
権利化業務における明細書作成(申請要素の技術的な面をまとめた文書)や資料の精読、また先行技術調査などの業務は、自宅などの環境でより集中することができ、テレワークに向いていると思います。
――最後にこれからのニューノーマル時代、知的財産に関わる人材に求められるものは何だと思いますか。
知的財産部員として従来から必要な、知的財産関連法の知識・対応力、技術理解力、論理性、文章作成力といった能力に加え、短期的にはWEBを利用した業務調整力、テレワークでも主体的に業務を回せる積極性が求められるのではないでしょうか。
さらに将来的にはAIなどの進化に伴い、より付加価値の高い業務が求められるので、知的財産に携わる人材としてより高い提案力、技術の先読み力が必要になってくると思います。
取材日:2020年10月26日
テレワーク導入で開発者とのブレストもフレキシブルに 知的財産業務の質も向上
日本電気株式会社(NEC) 知的財産本部
知的財産本部では、知的財産をNECグループの事業競争力や事業安定性、さらにお客さまとの共創に寄与する重要な経営資源と位置づけ、特許権やノウハウはもとより、グローバルブランドを支える意匠権や商標権の強化と保護を推進している。
2020年3月時点で国内外合わせて約47,000件(うち、国内約21,000件)の特許を保有。
インタビューにご協力いただいた方
日本電気株式会社(NEC)本部長代理兼開発推進部長 井本 史生 様
――新型コロナウイルスの影響を受け、テレワークの導入に至った経緯について教えてください。
まず背景として、NECでは2020年に予定されていた東京五輪の混雑緩和に向け、2017年から働き方改革を推進し、ハード、ソフト、制度の各面でテレワーク導入に向けた整備が進んでいました。
2020年3月から原則テレワークでの業務体制に移行しましたが、コロナ禍以前のテレワークは断続的なものであり、一斉テレワークが長期間継続するのは今回が初めての経験です。
社内会議全般や社外との打ち合わせの多くをWEB上で開催したり、チャットツールを活用して情報に触れやすい環境を作ったりといった対応で、知的財産本部における職場への出勤率は2020年10月現在も10%以下となっています。
――知的財産業務がテレワークに向いていると特に感じた事項について教えてください。
知的財産業務の中で、調査や明細書作成は個人作業の割合が高く、テレワークに向いている業務であると以前から感じていました。
また、特許に結びつくようなアイデアを作り出すために発明者とブレストを行う際など、テレワークでは難しいのではないかと思っていましたが、運用を始めてみると担当者の事前準備や各種ツールの活用によって問題なく実施できており、杞憂であったと感じています。
その他にも、これまでは発明者のいる事業場まで出向いていたため、移動時間などが必要でしたが、テレワークにより時間と場所の制約から解放されたことで、時間がフレキシブルに使えるようになり、結果として業務の質の向上にもつながっています。
――新型コロナウイルスの今後の状況がまだ読めない現状ではありますが、これからどのような方針で業務を遂行されますか。
少なくとも年度末までは原則テレワークの方針を継続する予定です。
NECでは全社として、チームの成果を最大化するために事業やメンバーの状況に合わせた働き方を採用しています。
知的財産業務がリモートワークに向いている点も踏まえ、その後もコロナ禍以前の体制に戻るとは考えておらず、新しい働き方の定着が進むのではないかと考えています。
――最後にこれからのニューノーマル時代、知的財産に関わる人材に求められるものは何だと思いますか。
知的財産業務に限定されないと思いますが、時間管理や積極的な情報収集、自発的な学びなどセルフマネジメント力はこれまで以上に重要な要素であると考えています。
また、コミュニケーションについても新しい働き方に対応していく必要があり、雰囲気や阿吽の呼吸的な非言語コミュニケーションが難しいWEB会議におけるファシリテーション力※などを磨いていく必要性を感じています。
※会議などの場で発言や参加を促したり、話の流れを整理したりと相互のコミュニケーションをサポートすることで、組織や参加者の活性化を促進する力。
取材日:2020年10月28日