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NHKドラマ『しあわせは食べて寝て待て』で話題の「薬膳」。国際中医薬膳師に聞いた「漢方」との違いとは?

インタビュー #まなびのキッチンから

NHKドラマ『しあわせは食べて寝て待て』で話題の「薬膳」。国際中医薬膳師に聞いた「漢方」との違いとは?

本日第7話が放送される、大人気NHKドラマ『しあわせは食べて寝て待て』。桜井 ユキが演じる麦巻 さとこが「薬膳」に出会い、心身のバランスを取り戻していく様子に気持ちがほっこりと温かくなる。

ドラマ内に出てくる美味しそうな「薬膳」ですが、その言葉を聞いたことはあっても、具体的には良く分からない、なんだか難しそう……と感じている人も多いのでは。実のところ、「薬膳」は私たちの健康を支える、身近で実践的な食の知恵なのだそう。

今回は、「国際中医薬膳師」の資格をもち、子ども向け薬膳サロンの運営やレシピライターとして活躍するさとう あいさんに、薬膳の基本から実践法までを教えていただいた。


お話を伺ったのは……

さとう あい
レシピライターとして活躍する国際中医薬膳師。現在は、「こども薬膳サロン」を主宰し、アレルギーなどの不調に悩む子どもたちとその親に向けて、薬膳の知識を広める活動を行っている。新著に『薬に頼らずのびのび育てる! こども薬膳』(三笠書房)。公式HP:https://motto-cooking.com

中国伝統の医食同源=「薬膳」の世界 

ーーまずは基本中の基本から。そもそも「薬膳」とは?

「薬膳」には明確な定義がありまして、中国の伝統医学である中医学の考え方をもとにして作られた食事のことを指します。

ーーなるほど、中医学がベースになっているんですね。日本人の多くは「薬膳」に対してどんなイメージを持っていると感じますか?

日本では「薬膳」というと、何か特別な珍しい食材を使った特殊な料理というイメージが先行しがち。

確かにそういった面もありますが、実際には身近にある食材で作ることができ、日常的な食事に取り入れられるものなんです。

ーー「薬膳」を知ろうとすると必ず出てくるのが「漢方」ですよね。この2つはどう違うのでしょうか?

「漢方」と「薬膳」は似ているようで少し異なります。中国で誕生したというルーツは同じなのですが、「漢方」は中国から日本に伝わり、日本独自の形で発展していったもの。一方「薬膳」は、中国で中医学として歩んできました。

ーー要するに、同じ起源から分かれた親戚のような関係なんですね。「薬膳」は中国で、「漢方」は日本で独自の発展を遂げたと。中国の一般家庭では「薬膳」をどのように捉えているのでしょうか?

中国では体調に合わせて、身体を温める食材、冷やす食材を取り入れるという「薬膳」の考え方が日常生活に完全に溶け込んでいます。

“食”でセルフメンテナンスする、という意識が高いのです。風邪をひいたときに何を食べるか、頭痛のときはどうするか? といった対処法が、一般常識として広く知られています。

ーー日本との感覚の違いが大きいですね。こうした食文化の違いはどうして生まれたのでしょう?

充実した医療制度に関係しているのではと。例えば、子ども医療費助成制度があることから、子どもの頃から何かあれば病院へ、という考えを持った方が多いと感じています。

ですので、中国をはじめ、欧米など多くの国では、病院に行く前に食事で体調を整えるという考え方が浸透しているのだと思います。

「『薬膳』は沼です(笑)」。奥深い学びが自分の力になる

ーーさとうさんは、食分野の学びを深めてこられたと思いますが、その中でも「薬膳」の特徴とは?

私は「食育インストラクター」の資格も取得していますが、「薬膳」にしかカバーできない領域が明確にあるなと感じています。

前述の通り、「こんな症状にはこの食材が効果アリ!」といった具体的な体調管理のアプローチは「薬膳」ならでは。

ーーそうした「薬膳」の知識は、日々の暮らしにも大いに役立ちそうですね。

我が家では2人の子どもたちにも、自然に「薬膳」の考えが浸透しています。

子どもたちが幼い頃から、体調不良には「薬膳」で対応してきました。「喉が痛いときは“干し柿を食べる”といった具合に。今では、子どもたちから「“干し柿”が食べたい」と言ってきたら、風邪のひき始めかな? と食べものから体調をキャッチアップできるように(笑)。

ーー日常生活に落とし込める「薬膳」の知識は幅が広そう!

「『薬膳』の知識は個別の断片的な情報ではなく、全体が繋がったシステムとして理解する必要がある。それが難しさでもあり、奥深さでもあるんです」と、さとうさん。

まさに沼です、まだまだ底が見えません(笑)!  季節を1つ越すごとに、「薬膳」を生活に落とし込む実践力が身につきます。

ーー「薬膳」について学びたい、資格を取りたいと思ったとき、どんな選択肢があるのでしょうか?

薬膳系の資格に国家資格ではなく、さまざまな団体が独自の認定資格を提供。

私は、中国政府公認機関である世界中医薬学会連合が認定する「国際中医薬膳師」を取得しています。

「国際中医薬膳師」を取得するには、2年ほどの学習期間と、70万円ほどの費用が必要。段階に応じて試験があり、上級へと進んでいく形式で、主催団体が違えど、学ぶ内容はどの資格もほぼ同じです。

身近な食材で始める「薬膳」生活。「あさりの味噌汁」でグッスリ快眠

ーー勉強に励む学びビトへおススメの簡単「薬膳」を教えてください

「薬膳」は、特別な食材を使わずとも作ることができるとお話しましたが、食卓に1度はあがったことがあるであろう「あさりの味噌汁」も立派な「薬膳」。

試験や本番前の緊張が高まるときなどにおススメです。というのも、あさりは不安な気持ちを落ち着け、安眠へ導く効果が期待できます。

このように、食材の特徴を把握し、体調や気分に合わせて普段の食事に取り入れる。この考えこそが「薬膳」なのです。


「体質に合わせた食材をチョイスすることも『薬膳』の活用法」と教えてくれたさとうさん。

次回は、「国際中医薬膳師」取得の具体的な勉強内容について紐解いていく。

撮影・文=倉持 佑次

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