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潜水士・飼育技師、Wの資格を保持するイルカトレーナーに密着!【しかくとはたらく。~水族館編~】

インタビュー #しかくとはたらく。

潜水士・飼育技師、Wの資格を保持するイルカトレーナーに密着!【しかくとはたらく。~水族館編~】
【しかくとはたらく。】
資格を活かして働く人を紹介する企画。資格取得のきっかけから勉強法、現在の仕事内容に至るまで深堀りしていく。業界裏話も盛りだくさん!

今回は「潜水士」と「飼育技師」の資格を持ち、「マクセル アクアパーク品川」でイルカトレーナーとして従事する働きビトにインタビュー。

資格を取得するに至った経緯や、現在の仕事に活かされているポイントなどを伺った。

イルカとともに華々しくパフォーマンスを行う、水族館の花形であるショーの裏側も必読!

お話を伺ったのは……

大嶋 剛生さん
1995年生まれ、神奈川県出身。「マクセル アクアパーク品川」のイルカトレーナーとして業務に従事。大学時代は海洋学部で学び、ダイビング部に所属。卒業後に同館を運営する「(株)横浜八景島」に就職し、現在6年目。


イルカの佇まいに感動し現在の道へ!

――「潜水士」と「飼育技師」の資格を取得しようと思ったきっかけは?

高校時代、水泳の選手を目指して、強豪校の水泳部に所属していました。

一緒に練習する仲間の強さを間近で見て、自分はトップ選手になれないかもしれないと感じていた頃、神奈川県の水族館に通い詰めたことがあったんです。

そこで出会ったイルカの泳ぎに鳥肌が立つほど感動しまして! 幾度訪れても、感動は止まりませんでした。

小さい頃から動物が好きだったこともありますが、イルカをはじめ、自分より泳ぎが上手い海の生き物たちと、飼育を通して触れ合えることができたらなと。

それから海洋生物に関わる仕事に就きたいと考えるようになり、海洋学部に進学。就職したい水族館の募集要項に、「『潜水士』の資格を取得していると望ましい」とあったので、大学3年の冬に「潜水士」の資格を取得しました。

――希望の道に向かって着々と進んでこられたんだな、という印象です! 「潜水士」の試験の難易度は?

「潜水士」の資格試験の合格率は80%程度だそうです。

潜水士として水中に潜る際には、15.6kgもある大きな酸素ボンベを背負う。体力を消耗しそう……。「日々の業務が自然と筋トレになっています」と大嶋さん。

大学時代、潜水部に所属していて、器具の扱い方の知識を持ち合わせていたこともあり、一発合格できました。そうでなくても、1カ月ほどしっかり勉強すれば合格を目指せると聞きます。

実技で問われる潜水技術は、部活で身につけました。海洋学部だったため潜水部があったのですが、珍しい部活ですよね。

一般的には、ダイビングスクールなどで練習して試験に望む人が多いようです。

狭き門である水族館への就職やいかに

――水族館への就職は人気があり倍率が高そうですが、いかがでしょうか?

一般的な水族館の求人倍率は50~100倍といわれていて、人気の水族館なら100倍以上に達することもあるそう。

僕は「マクセル アクアパーク品川」が第一希望だったので、望ましい取得資格とされている「潜水士」を事前に取得しておいて本当に良かったと思います。 

――「マクセル アクアパーク品川」でのこれまでのキャリアを教えてください。

入社当初は新人の基本的な業務の1つであるパフォーマンスのMCや餌作りを担当し、それからペンギン、アシカ、オットセイの飼育などを経験。数年間でいろんなチームを回りました。

ーー「飼育技師」はいつ頃、取得されたのですか?

入社後、3年経過した頃。というのも、2年以上の飼育経験がないと「飼育技師」の試験は受けられないんです。

「飼育技師」の試験は、飼育の大事なポイントや、生物が病気になったときの対応などが書かれたテキストの勉強が基本。

働きながら勉強時間を確保するのに苦労しましたが、それまでの仕事の経験が活き、単なる勉強ではなく、実感を伴って学ぶことができたので、吸収しやすかったです。

あとは、同時期に社内でも数人が受験するので、自分だけ不合格になったらっていうプレッシャーも(笑)。

それでも、実務経験のおかげで1カ月の短期集中で一発合格することができました。

晴れてイルカトレーナーに。仕事内容に資格は活きている?

ーーイルカトレーナーは、やはり人気のポジションなのですか?

イルカと息ぴったりの大ジャンプ!

僕の場合は、「飼育技師」の資格を取得した頃、憧れのイルカに関わる仕事に従事したいと考え、イルカトレーナーを希望。運よく入社1年目で配属されました。

食事やコミュニケーションを通して毎日イルカを観察し、最高のパフォーマンスを発揮できるように協力し合っていく。イルカと触れ合いながら、充実した日々を送っています。 

ーー「飼育技師」や「潜水士」の資格が活きているな、と感じることは?

トレーナーとしていちばん大切なのがイルカの観察なのですが、「飼育技師」の資格試験の際に学んだ、動物の行動分析学や、トレーナーが動物を評価するときの原理などがとても役に立っています。

水槽の清掃も飼育スタッフの大事な業務の1つ。掃除をする大嶋さんの周りに、興味津々な様子で集まってくるイルカたちの姿が見られた。

もちろん資格を取得して終わり、というワケではなく、水族館の垣根を超えた講習会などに参加し、知識をアップデートすることも大切ですね。

例えば、緊急浮上しなければならない、水中で酸素吸入が外れてしまうなど、トラブルが多少あったとしても、「潜水士」の勉強で得た知識があるから余裕が持てます。冷静に判断して対処できるのは資格を持っているからこそではないでしょうか。

「飼育技師」の真価が問われる!ショーの裏側とは 

――イルカトレーナーとして従事される中で、一番喜びを感じるのは?

パフォーマンスを通してお客様にイルカたちの魅力を知ってもらえたときです。

「マクセル アクアパーク品川」ではダイナミックでエンタメ要素の強いショーを行っているのですが、その強みはイルカに興味のなかった人がエントリーしやすいこと。

「イルカってこんな動きができるんだ」「あの高さのボールにタッチできるの!?」といった感想をいただきますが、実は、プログラム中のイルカのパフォーマンスは、野生下での行動を取り入れているんです。

イルカの高い身体能力を見て、興味を持ってもらえることがとてもうれしい!

あと、個人的によろこびを感じるのは、新たなパフォーマンスをつくり上げたとき。イルカたちとの信頼関係構築やトレーニング、ときにはトレーナー自身の努力など、日々の積み重ねが形となり、お客様に“新パフォーマンス”としてお届けできたときはうれしいですね。

――毎回パフォーマンスが異なるんですね。そんな中、イルカと気持ちが通じ合ったと思うことはありますか?

いろいろあるのですが、自分を見てくれているとき、でしょうか。もう、目が合うのが分かるんです。

イルカたちの気分が下がっているときは、頭も上がらず目線すら合わないのですが、気持ちが通じ合っていると、指を1本動かしただけでイルカの顔がその方向に流れる。

イルカと意思疎通をするための動き=アテンション。大きな動作が基本だが、心が通じ合っているときは、小さな手の動作でも反応してくれるそう。

トレーナーの指の動きや、足の踏み出し、体重移動など全部に反応してくれるので「今コミュニケーションが取れている、いけるぞ!」って。そんなときにサインを出したら、完璧なパフォーマンスを繰り出してくれたりします。

イルカたちがワクワクしている状態でトレーナーの前にいるかどうかは、イルカの動きで分かる。

人間と同じで、楽しくないと続かず、トレーナーの前にはいてくれません。だからこそ、飼育技師として学んだ「期待の継続」をいかにできるかがポイントに。

パフォーマンスに出て楽しい、トレーナーと噛み合っていて面白い、次はどんなサインがくるかな?と、イルカに期待の感覚を持たせられるようにするのです。

個性豊かなイルカたちとの仕事は、とてもやりがいがあります。

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「潜水士」と「飼育技師」の資格を持ち、イルカトレーナーとして活躍する大嶋さん。

明確な目標に向かって資格試験に備え、夢をかなえてからも努力を続ける姿はとても魅力的だ。

DATA

マクセル アクアパーク品川
東京都港区高輪4-10-30(品川プリンスホテル内)
TEL.03-5421-1111(音声ガイダンス)
https://www.aqua-park.jp

撮影=梁瀬 岳志
文=鈴木 希

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