トヨタ自動車のお客様第一を支える「消費生活アドバイザーの会」を直撃!
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今回は、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)内の消費生活アドバイザー※資格者から成り、消費生活アドバイザー資格の取得支援や、製品・サービスについてお客様目線の提案を行う「トヨタ消費生活アドバイザーの会」にお話を伺いました。
※一般財団法人 日本産業協会主催
消費生活アドバイザーとは
消費生活アドバイザーは、消費者と企業や行政のパイプ役として、消費者からの提案・意見を企業経営・行政の提言に反映することや、消費者からの相談に適切なアドバイスを行う専門家です。特に企業内では消費者のニーズに合わせた商品を開発するために、消費生活アドバイザーの持つ「お客様志向意識」がますます重要性を増していくといえるでしょう。
CBT方式で行われる1次試験と、論文作成・面接で行われる2次試験の両方に合格することで資格を取得することができます。
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「トヨタ消費生活アドバイザーの会」とは
会社の理念である「お客様第一」の意識を社内に浸透させることを目指しており、2021年で設立から30周年を迎えます。消費生活アドバイザー試験の受験支援をはじめ、車両やトヨタグループ関連施設の評価、啓発のための講演会開催などを行っています。
トヨタ自動車で消費生活アドバイザーを導入している背景を教えてください
消費生活アドバイザー導入のきっかけ
伊藤さん:導入のきっかけとなったのは、消費生活アドバイザー資格認定制度が発足した1980年に、当時の通商産業省(現経済産業省)から案内を頂いた部署が社内関係部署へ受験者を募ったことです。
その際、実際に受験した社員から「お客様の目線から見た企業・製品などへの印象や、それに伴う購買行動を学ぶことができ、業務に活かせた」「衣食住や家計経済、地球環境などについての知識も得られ、日常生活でも役立った」と好評だったことに加え、トヨタ自動車の「お客様第一」の理念に沿う資格であることから、1989年より全社に向けて受験者を募集するようになりました。
消費生活アドバイザーは、現在トヨタ自動車で名刺に載せることを認められた数少ない資格のうちの1つで、毎年多くの社員が受験を希望しており、2020年度の試験には93名が挑戦しています。
消費生活アドバイザーの合格者について
吉田さん:もともとはお客様対応を行う部署を中心に受験していましたが、現在では社内の各部署において担当者から幹部クラスまで広く合格者がおり、それぞれが消費生活アドバイザーとして知識を活かしています。
特に近年では、開発・製造・技術系の社員の合格者が増加し、全体の約半数を占めるまでとなりました。開発・製造・技術といったものづくりの工程部門に属する社員は、お客様との接点が少ないことも多く、よりお客様の目線や感性を汲み取りたいとの思いに対し、資格取得によって多くの気付きが得られるという声も聞かれます。
消費生活アドバイザー受験の条件
吉田さん:消費生活アドバイザーの受験は、基本的に部署やポジションにかかわりなく挑戦できますが、合格後に「トヨタ消費生活アドバイザーの会」に所属・活動することなどを受験の条件としています。
「トヨタ消費生活アドバイザーの会」について詳しく教えてください
「トヨタ消費生活アドバイザーの会」とは
吉田さん:消費生活アドバイザーの資格取得者がその知識や感性を活かし、「お客様第一」の理念に貢献することを目的とした会です。会員数は現在267名(2020年11月現在)が在籍しています。
「トヨタ消費生活アドバイザーの会」の歴史
吉田さん: 会は1991年に取得者が60名を超えたことを機に、消費生活アドバイザーのもつ知識・感性を社内の「お客様第一」の浸透に活かすことを目的として発足しました。
それ以後、徐々に会員数を増やしつつ、会の活動を広げたことで「トヨタ消費生活アドバイザーの会」の制度普及や消費生活アドバイザーの活躍などが認められ、2005年には経済産業大臣表彰を戴いております。
また、2009年には、本社・名古屋地区と東京・東富士地区に幹事を立てるなど、会の成長に伴って形を変えつつ活動しています。
▲経済産業大臣表彰(2005年)
「トヨタ消費生活アドバイザーの会」ではどのような活動をしているのでしょうか?
「トヨタ消費生活アドバイザーの会」の主な活動
丸田さん:会では主に
1. 社内への提言活動
2. 消費者問題の啓発
3. 講演会や資格取得支援
の3つの活動をしています。
1. 社内への提言活動
丸田さん:まず、社内への提言活動ではトヨタ自動車から対外的に発信しているモノやサービスについてお客様目線で評価し、より良いクルマづくりやサービスにフィードバックしています。
例えば新車開発の際、試乗をしたり、実際に製品に触れたりして「搭載される新機能をお客様に利用したいと思っていただけるか」「使い勝手は良いか」などを評価し、製品の改善につなげています。
また、既に販売している車種についてもコールセンターに寄せられたお客様の声を製品と照らし合わせて確認する「お客様のお困り事確認会」などの活動を行っています。
その他に、新車のカタログ作成では担当部署と協力しながらお客様にとって分かりやすい表現を心がけたり、「トヨタ博物館」などの関連施設評価においては、動線の安全性や表示方法などについてお客様目線の評価・フィードバックを行ったりといったことにも取り組んでいます。
▲お客様のお困り事確認会の様子
2. 消費者問題の啓発
丸田さん:技能職の新入社員に近年の消費者問題やその対処法を伝える活動を指します。
技能職の新入社員の多くは未成年のうちから社会人としての第一歩を踏み出すことになります。そこで、若い世代が狙われやすい消費者問題やトラブル事例、対応方法を講座形式で紹介しています。
3. 講演会や資格取得支援
丸田さん:会員向けに外部講師や他社の消費生活アドバイザー、普段車いすを使用されているパラアスリートなどを招き、消費生活アドバイザーとしての活動に新たな気付きを得てもらいたいという思いで、講演会の主催も定期的に行っています。
一方、資格取得支援については、合格を目指す社員に対し、例年5月から11月※にかけて講習や模試、論文添削、面接練習などを提供して学びをサポートしています。
※1次試験は例年10月、2次試験は例年11月に実施されている。
会員一人ひとりが「自分のできること」を考え行う
丸田さん:主な活動内容で挙げたような提言活動、啓発活動、講演会の主催や資格取得支援はもちろん、会員それぞれが自分の得意分野を活かし、会員用サイトの作成や勉強会の企画・運営など、自発的に活動する会員も多く、皆で力を合わせながら実施しています。
▲会員用サイトや機関紙で会員間の交流や活動報告の周知を図っている
また、新型コロナウイルスの影響を受けて、弊社もテレワークでの業務体制に移行しましたが、コロナ禍でも社内のチャット上で意見交換や情報共有をするなど、会のつながりを活かすことで会員たちが学ぶ姿勢を絶やすことはなく、ものづくりを通じてどのように社会に貢献していくかを改めて考える良い機会になったとも思っています。
会全体として「世の中、社内、会内、そして自分以外の誰かの役に立ちたい」という思いが強く、積極的に行動を起こす会員が多いことが最大の強みだと考えており、中には、こういった会の活動を見たり、社内の口コミを聞いたりして「自分も参加したい」と受験を希望する社員もおります。
社内での消費生活アドバイザー合格に向けた対策について教えてください
消費生活アドバイザーの難易度
道添さん:消費生活アドバイザー試験の出題範囲は4分野15科目と広く、難易度も高いため、時間をかけてコツコツ勉強する必要があります。中には2~3年かけてじっくり勉強して合格を目指す社員もいます。
合格率は、消費生活アドバイザー試験全体が例年1次試験:45~50%、2次試験:60%前後なのに対し、弊社は1次試験:64%、2次試験:71%(2020年度試験)となっています。
「トヨタ消費生活アドバイザーの会」主催の試験対策や受験者のサポート
道添さん:会としては、毎年5月から11月にかけて資格挑戦希望者向けの受験説明会、1次試験対策講座、1次試験模試、2次試験対策講座、論文の添削や面接の対策、受験者向けのホームページ開設や進捗状況メールの配信などを行っています。
また、試験に不安を感じている受験者の相談にも対応しています。
受験者の気持ちを汲み取り、一人ひとりに寄り添うことは簡単ではありませんが、受験者が少しでも前向きになれたり、合格の報告を聞けたりといったときには心から嬉しく思います。
その他の受験サポート
道添さん:その他にも、会員専用ホームページ内に過去の合格者の声として受験の動機や勉強方法、受験を考えている人へのメッセージなど、モチベーション維持向上につながる情報を掲載したり、関連する図書の貸出しなどの受験者にとって役立つ内容を提供したりしています。
受験した社員からの感想や受験後の変化があれば教えてください
道添さん:消費生活アドバイザーの勉強は新しいスキルを身に付けるためというよりも、お客様の目線を繊細に読み取る感性を磨くためのものだと考えています。
実際に消費生活アドバイザー試験を受験した社員からは「お客様の目線を念頭に置いて業務にあたることができるようになった」といった声をはじめ、「生活に関係するニュースに興味が湧いて自分の見識をより広げたいと思うようになった」「消費者としての側面からも、家事や生活、家計管理、毎日の購買などに活かせる知識が多く、人生が豊かになった」などの声が多く届き、ポジティブな変化が窺えます。
今後の展望を教えてください
「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジと今後の活動
伊藤さん:自動車業界が「100年に一度の大変革」に直面し、トヨタ自動車も「モビリティカンパニー」へのフルモデルチェンジを目指しています。
そのような中、消費生活アドバイザーとして、お客様の目線から「モビリティカンパニー」がどのようにあるべきなのかを考えることは私たちの大切な役割ではないでしょうか。
「モビリティカンパニー」としては、2050年のカーボンニュートラルを目指すという国をあげてのチャレンジや、自動運転化技術、車のサブスクリプションサービスなどを推進していきますが、これらは国やお客様とともに作り上げていくものだと思います。
そのため、「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジに向けては、幅広い視野を持ってお客様一人ひとりに対してこれまで以上の真摯さで向き合いながら、「トヨタ消費生活アドバイザーの会」としても会員同士の意見交換会や専門家による講演などを通して追及していこうと考えています。
会の活動について今後の目標
伊藤さん:「トヨタ消費生活アドバイザーの会」は2021年で設立30周年を迎えます。
私たちはこれまでも、お客様の目線と企業人としての目線のバランスを取ることこそ、より良い製品・サービス作りにつながるという信念のもと、「世の中の役に立ちたい」との意識で会の活動に励んできました。
今後も消費生活アドバイザーの普及はもちろん、「お客様第一」の理念に基づきながら社内での活躍の幅を広げ、永続的に社会に貢献し、お客様を笑顔にできるトヨタ自動車を目指していきたいと考えています。
※取材日:2020年11月26日
社名
トヨタ自動車株式会社
代表者
代表取締役社長 豊田 章男
従業員数
74,132人(2020年3月末現在)
事業概要
自動車の生産・販売
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