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「リスキリングは単なる“学び直し”ではない!」専門家が徹底解説

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「リスキリングは単なる“学び直し”ではない!」専門家が徹底解説

昨年のユーキャン流行語大賞にもノミネートされた「リスキリング」。耳にする機会は増えたけれど、その正しい意味を把握している方は少ないのではないでしょうか。

「『リスキリング』を“学び直し”と捉えている方がとても多いのですが、これは間違いです」、こう話すのは、12年も前から「リスキリング」に取り組み、現在、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事を務める後藤宗明さん。

そこで、海外の「リスキリング」事情にも詳しい後藤さんに、「リスキリング」の“基本のキ”を教えてもらいました。

賢いリスキリング術を専門家が伝授。資格取得は昇格や転職に役立つ!(後編)

お話を伺ったのは・・・

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事・後藤宗明さん
大学卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)入行。渡米後、グローバル研修領域で起業。帰国後、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人を設立。米フィンテックの日本法人代表、通信ベンチャー経営を経て、アクセンチュアにて人事領域のDXと採用戦略を担当。その後、AIスタートアップのABEJAにて米国拠点設立、事業開発、AI研修の企画運営を担当。10年かけて自らを「リスキリング」した経験を基に、2021年、リスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。著書に『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』。

日本は「リスキリング」後進国!?

ーー昨年5月に岸田首相は政策として「リスキリング」に取り組むことを明言しましたが、「リカレント=学び直し」と混同している方も多いそうですね。

「リスキリング」は、単に“学び直す”ことを意味するのではありません。最大の目的は「新しいポジションの職に就く」ことにあるのです。

なぜその必要があるのか? それは、現在人間が行っている仕事がAIに代替えされていく可能性があるからです。

ーーなるほど。ということは、「リスキリング」でスキルアップすべきは、デジタル分野なのですね。

その通りです。アメリカでは2016年から「リスキリング」政策が本格化。

“デジタルトランスフォーメーション(DX)=デジタル革命”に高度なスキルで対応できる人材を育成すべく、職業能力の再開発・再教育、いわゆる「リスキリング」に力を入れる企業が増えていきました。

ーーアメリカが早くから「リスキリング」に力を入れた理由はあるのでしょうか?

デジタル分野における技術的失業で被害を受ける方の多くは、低スキル&低所得層。

アメリカは分母が大きいので、総人口に対し、その層が占める割合も大きいのです。故に、「リスキリング」が発達した、と言えるかもしれません。

それに対して、日本は歴史を紐解いても、低スキル&低所得層に対する支援が非常に薄い、という印象があります。

「リスキリング」の提唱がアメリカに7年ほど遅れてしまっている日本は、残念ながら「リスキリング」後進国と言わざるを得ません。

「リスキリング」が成功する鍵は企業側にアリ!

ーー働き盛りのビジネスパーソンは忙しく、なかなか「リスキリング」の時間が取れなさそうですが・・・・。

そこが間違い! 「リスキリング」の実施責任は企業や行政にあるのです。

睡眠時間やプライベート時間を削り、自己犠牲の上に成り立つ「リスキリング」ではなく、就業時間内に行うべき「業務」と捉える必要があります。

ーー“スキマ時間で自学”はリスキリングではないのですね。

アメリカの企業は膨大な費用をかけ、社員に「リスキリング」の機会を与えています。

機会があるにも関わらずスキルアップの努力をしない、もしくはスキルレベルが上がらない従業員は、一時解雇の対象になり兼ねないのです。

一方、日本は真逆。ずっと同じスキルでも解雇されにくい。デジタル環境に適応してスキルを身に付けていく、という部分が重要視されないままなのです。


欧米と日本との「転職」意識の違い

ーー日本の場合、今の仕事に不満があったり、他に挑戦したいことがある場合には、まず転職を考えることが多いという現状が。「リスキリング」先進国のアメリカと意識の違いがあるのでしょうか?

特にアメリカでは空前のデジタル人材不足を背景に、社内での配置転換を試みるというのが最近の傾向。

これは「リスキリング」があってこそ成り立つ考えなんです。

社員を「リスキリング」し、人材が不足しているデジタル関連の部署に異動させることは、企業にとって効率的な施策。

社員にとっても、慣れた環境でスキルアップし、必要とされる部署で働けるとなれば、昇給も見込めるかもしれませんし、Win-Winの関係が成り立ちます。

ーー「リスキリング」の主導権を握っているのが企業側であることは分かりましたが、所属する企業が「リスキリング」に積極的でない場合、打つ手はないのでしょうか・・・。

そんな場合はまず、「リスキリング」制度を設けるよう人事部などに提案するのもひとつです。

大企業にお勤めでしたら、部署を横断し、有志を募って声を上げてみましょう。

中小企業などの場合は、費用や労働力という観点から「リスキリング」を行うことがそもそも難しいことも。そういった場合は、自治体に制度を作るよう働きかけて欲しいです。

複数社が募れば、自治体も動かざるを得ません。それでもダメなら私に相談ください。


欧米のように、個人が働きかけずとも企業のマスト業務として「リスキリング」が行われるようになる時代が来ることを祈るばかり。

最後に後藤さんは、「『リスキリング』は、社内でのスキルアップを叶えるだけでなく、転職や副業の際の強い味方にもなります」と話してくれました。

次回は、自分に合った「リスキリング」分野の見つけ方など、“転職・副業”にも役立つ具体的な「リスキリング」術をお届けします!


文=日本の資格・検定編集部

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