資格試験が中止や延期になってもモチベーションを維持する方法
学習ノウハウ この記事をあとで読む
2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で桜の時期もどこか色あせ、ゴールデンウィークも黄金という雰囲気ではなく、夏らしさを感じる間もないまま過ぎてしまいましたね。
その間、春の情報処理技術者試験や公認会計士、不動産鑑定士の短答式試験など、多くの資格・検定試験が延期、もしくは中止となってしまい、受験予定だった方はモチベーションの維持に苦労されているかと思います。
◆資格・検定試験の中止・延期情報はこちら
【随時更新】新型コロナウイルス感染拡大に伴う資格・検定試験の中止・延期情報まとめ
また、新たに勉強を始めようと考えていた方の中にはタイミングを逃してしまったような感覚になり、チャレンジを延期したという方もいることでしょう。
今回はそんな方々に向けて、この状況下でどのように資格・検定に向き合っていくべきか、そしてどのようにモチベーションを維持すべきかについて、資格の学校TACで講座の企画や広報などの面から長年受講生に寄り添ってきた森孝時氏にアドバイスしてもらいました!
<記事協力>
森 孝時 氏
資格の学校TACで複数の講座の教育企画、広報を担当。その後、出版事業部門であるTAC出版に異動し、資格関連書籍の編集に携わる。現在はTACの企業向け研修事業部門の広報、宣伝、マーケティング業務にあたっている。資格関連業界でのキャリアは25年を超える。
試験が中止・延期となってしまった方へ
受験を予定していたみなさんは試験当日に向けて勉強面ではもちろんのこと、身体的なコンディションを整えるなど、さまざまな準備を続けてきたはずです。その努力の成果を発揮する場が奪われ、やるせない気持ちになっていることでしょう。
実は私(森氏)も、ある検定試験を3月上旬に受験する予定だったのですが、実施が5カ月間後ろ倒しになってしまい、複雑な心境になりました。勉強の成果を見せられなくなってしまったこと、なによりもう少しで勉強生活から抜け出せると思っていたのに、まだ勉強を続けなければならないことが本当に堪えました。また今でも「再度延期になる可能性すらあるかも…」という不安をも感じています。
もちろんその一方で、もう少し勉強する時間がもらえたとも感じたのですが、この複雑な気持ちは同じ状況にある方ならば、誰もが共感してくれることでしょう。
ところで、同じように翌年に延期となった東京五輪ですが、アスリートたちからはさまざまな反応がありました。報じられた中では、卓球男子の張本智和選手が「準備しなければいけない課題がまだまだあると焦っていたので準備の時間ができた」と言っています。
またサッカー女子代表の籾木結花選手は「1年準備できる期間が増えるのはメリットだと思う」と、そして競泳男子自由形の塩浦慎理選手は「準備期間が延びてもっと速くなるチャンスをもらえたってことで!」なんていうコメントを出しています。
五輪にかける彼らの気持ちを汲み取れば、発言の裏側にはきっと大きな苦悩があるとは思いますが、とはいえ前向きなコメントは彼らの強さの秘密の1つなのかもしれません。
そんな彼らの気持ちや強さを踏まえて、私たち受験者はどのように心のコントロールをすれば良いのか、いくつかの選択肢を挙げて考えてみましょう。
試験が中止・延期でもモチベーションを保つには
(1) 改めて延期・中止となった試験にチャレンジする
みなさん長い期間に渡り勉強して万全の準備を整えてきたことでしょうし、決めたことは最後までやり抜くのが一番良いはず。特に勉強量の多い試験や年1回の試験の場合であればなおさらです。
そういったみなさんには前述のアスリートたちのように「神様から準備期間を増やしてもらえた」と考えてもらいたいところです。そして「延長期間を誰よりも有効に使うのだ」と捉えて進めてください。そうでないと、ライバルに逆転のチャンスを与えたことになってしまいますから。
(2) 延期・中止となった試験には合格できていたと考え、次のステップにチャレンジする
延期・中止となった試験について、「これだけ頑張ったのだから合格していたはずだ」と考え、次の資格・検定や上位級にチャレンジするというのも1つの選択肢でしょう。例えば、”日商簿記3級には合格したことにして2級の勉強をスタートさせる”ということです。ただし、そのためには「受験できていたら合格していた」と自分で納得することが大切になります。
そこで市販の予想問題集を買って、セルフ試験をやってみましょう。合格基準をクリアできたなら、自分で自分に(心の中で)合格証書をあげれば良いのです。併せて自分に何かごほうびをあげましょう。ささやかでもごほうびがあれば、ここから先も頑張れるものです。
もし合格基準に届かなかったら、または自信をもって合格したと言えそうになければ、(1)で書いたように改めてチャレンジしましょう。そのときこそ「神様から準備期間を増やしてもらえた」と考えれば、意欲も湧いてくるはずです。
ただし、受験しようとしていた資格や検定、級の合格が次の目標の受験に必須となっているような場合には、この方法は使えませんのでご注意を。
(3) 環境の変化に合わせて別の目標を設定し、チャレンジをスタートさせる
新型コロナウイルスの拡大に伴う緊急事態宣言で外出自粛となり、巣ごもりのような状況になるなど、少し前には考えもしなかったことだと思います。この状況を改めて振り返ったときに、別の知識が必要になったと思うことはありませんか?
例えば、巣ごもりをして”電気料金や水道料金の変化に驚き、マネー管理の大切さを知ったからファイナンシャル・プランナー(FP)にチャレンジしてみる”といったように、もともと予定していた勉強ではなく必要に応じて目標を変える方法もあります。
また、環境が変化して勉強時間が確保しやすくなったということはありませんか?
例えばリモートワークやWeb授業になったことで通勤・通学時間が浮き、1日あたり1時間の勉強時間を増やすことができたのならば、積み上げれば1週間で7時間、1カ月では約30時間にもなります。
◆時間的コストからチャレンジする資格・検定を選ぶ方法はこちらから
そうなると、より難しい資格や検定にチャレンジできる可能性が出てきますね。つまり勉強環境の変化によって目標を変更できる可能性が生まれたということです。新しい目標が自然に浮かび上がってきたのなら、新たなモチベーションも一緒に生まれているはずです。
~ここでひと息~
人の脳は何かごほうびをもらったり、もらう光景を想像したりすると、やる気ホルモンとも言われる神経伝達物質のドーパミンが放出されるようになっています。だからこそ、心の中で合格証書を出してあげたり、神様から時間という大切なものをもらえたと考えたりすることで、ドーパミンを放出させ、自分をやる気に転化させることができるのです。
勉強を始めるタイミングを逃してしまった方へ
日本では新しい物事を始めるタイミングとして一番多いのが、新しい年や新年度となる1月と4月だと言われています。今年はその時期がコロナ禍と重なってしまい、スタートしようと思っていた多くの方の気持ちが削がれてしまったかもしれません。
しかし、だからこそ今が勉強を開始するベストタイミングとも言えます。
その理由の1つは、この環境だからこそ学ぶべきことが生じているからです。先ほど例に挙げたFPもそうですが、仕事や私生活において必要になった知識は多いはず。それらに向けて勉強を始めるならば、今がチャンスだと言えるでしょう。
そしてもう1つの理由は、外出自粛などでこれまでになかった時間が生まれているからです。例えば、毎日の通勤・通学の時間帯や夏休み期間を自宅勉強時間に充てれば、チャレンジできる資格・検定はたくさん存在します。
アフターコロナの世界でより充実した生活を送ることができるよう、ぜひ資格・検定に今度こそチャレンジしてみてください。
また、延期・中止が多かった試験についても、少しずつ実施されるようになるはずです。ソーシャルディスタンスを確保するだけでなく、感染拡大を予防するルールに基づいた試験が実施されるでしょうし、なによりCBT試験※やIBT試験※のような、現状にマッチした方式による試験実施も増えつつあります。中でもCBT試験は一度受験すると、その快適さに驚くはずですよ。
※コンピュータを使った試験方式のこと。詳しくはこちら
今注目の「CBT試験」って?‐コロナショックで変わる資格の取り方
やる気は生ものとはよくいったもので、今この瞬間、少しでもモチベーションが上がってきたならば、今すぐ取り掛かりましょう!
いかがでしたか?
やがて新型コロナウイルスが終息に向かったときに、「あのタイミングで資格・検定にチャレンジする人が増え、多くの人が知識やスキルを手にしたから、日本の経済も社会秩序も回復が早くなったようだ」なんて言われると良いですよね。
新型コロナウイルスに負けず少しでも多くの方が資格・検定への受験へのモチベーションを高め、安心して試験を受けられる日が一日も早く来ることを祈っています。
◇TACの講座はこちらからどうぞ