司法書士とは?受験資格はある?おススメのダブルライセンスも
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一般的に、超難関といわれている国家資格の士業。受験勉強にも数年を要し、合格率も数パーセント。そもそも受験資格をクリアするにも高い壁が・・・なんて諦めている方も中にはいらっしゃるかもしれません。
そんなみなさん、「司法書士」を見逃していませんか?「司法書士」は、司法試験に続く難関資格であるといわれているのですが、なんと受験資格は特に制限なし、つまり、誰でも受験可能で合格して登録すれば司法書士になることができるのです。
当然ではありますが、「受験資格なし」=「学歴が必要ない」ということ。実際に、机に向かうのも久しぶりな50代の主婦や元フリーターの合格者もいます。堅実な努力を積み重ねることができる人なら誰でも「司法書士」になるチャンスがあるのです!まさに人生が劇的に生まれ変わる、大逆転の可能性が詰まった士業でしょう。
さらに、「司法書士」の資格において特徴的なのが、合格後、短期間で独立開業ができるという点です。これは、司法書士試験で問われる知識が司法書士の実務内容になっているためであり、一般的に長期間の研修が必要なく、人生設計が立てやすい士業の一つなのです。
実際に30〜40代以上で働きながら勉強して合格する方が多く、セカンドキャリアを築くために取得を目指している方が多いようです。
そんな大きな夢が詰まった「司法書士」ですが、現実には年々受験者数が減少しています。他方で、超高齢社会を迎えた日本は、高齢者の個人資産が世界NO.1と言われており、「終活」にスポットライトが当たる今日、成年後見業務や財産管理業務も行う「司法書士」にとっては、ビジネスチャンスが広がっている状況といっても過言ではありません。
「司法書士」の魅力や活躍するための秘訣・今後の活路についてよりたくさんの方に知ってもらうべく、LEC専任講師であり、海野司法書士事務所で司法書士として活躍する海野禎子先生に詳しくお話を伺いました!
講師プロフィール
司法書士の仕事内容とは?
「身近な法律家」と例えられることが多い司法書士。その主な業務は不動産登記や商業登記といった「登記」業務であり、司法書士の業務の8割を占めるといわれています。
また、簡易裁判所の訴訟代理(訴訟額140万円以下)を行う裁判業務※、認知症の方などの財産管理等を行う成年後見業務といったものも挙げられます。他にも財産管理、遺言・相続業務、企業法務、供託所に金銭を預ける等の手続きを行う供託業務、海外企業の日本進出に対して法的手続を行ったり、在日外国人の不動産取得の手続き等を行う渉外業務といった仕事があります。
※簡易訴訟代理業務を行うには、特別な研修に参加し、法務大臣の認定を受ける必要があります。
同じ法律家というと弁護士を思い浮かべる人も多いかと思いますが、弁護士は法律業務のすべてを扱うことができる一方で、司法書士は法律で定められ限定された範囲のみ(簡易裁判所<訴訟額140万円以下>の訴訟代理を行う裁判業務)を扱うことができます。登記や少額の裁判、財産管理といった業務内容からも見て取れるように、トラブルや大きな争いが起こる前にサポートを行う「予防法務」が司法書士の業務の大きな特徴と言えるでしょう。
具体的には、友人間の金銭トラブル、敷金返還など比較的生活に身近な問題の解決に携わったり、相続時の土地や建物の登記、都市部では会社などの商業登記などが挙げられます。
このように司法書士は、高齢化が急速に進む近年、成年後見業務や不動産登記業務を中心に需要があり、将来性が注目されているのです。
司法書士に求められるスキルやワークスタイルは都市部と地方で大きく変わる
都市部と地方では、司法書士として必要な業務スキルや収入が異なると言われています。
まず、都市部については、会社を設立したときや取締役が交代したとき、本店を移転したときなど会社に関する重要な情報の発生や変更があったときに行う商業登記や、不動産登記の業務が司法書士の主な収入源となることが多く、この分野のスペシャリストが求められる傾向にあります。
ただし、都市部ではある程度司法書士の勢力図が出来上がっていることから、新規の独立開業は相当の営業努力を要するため、最初は実務を覚えるためにも司法書士事務所に勤務する方が多いようです。
一方で、地方で重宝されるのが農地問題から離婚・親権問題、相続、成年後見業務まで、オールラウンダーの司法書士です。
一見、地方は人口も少なく事案もあまり多くないと思われがちですが、地方のほうが司法書士事務所の競争も少ないことから、都市部よりも実収入が多いことがあります。
加えて、日本に50ある司法書士会では、開業する新人の面倒をみる文化が根付いています。また、司法過疎地で開業する場合、日本司法書士会連合会(http://www.shiho-shoshi.or.jp/)がサポートするという取り組みもあります。
学歴は関係ない!司法書士成功の秘訣は「人柄」と「人生の経験値」
ここまで、司法書士の業務内容や働き方についてご説明してきましたが、司法書士として成功するための最大の武器は「人間的な魅力、人柄」と「豊富な人生経験」であるとも言われます。
司法書士の業務のほとんどは「対ヒト」問題を扱います。成年後見や財産管理業務では介護や相続・遺言書、親族間の人間関係などナイーブな家族の問題に向き合わなければいけません。そのような場面でモノを言うのが、自身が歩み積み上げてきた人生経験なのです。
依頼者から他人に話しにくい繊細な家庭問題や財産管理をまかせてもらうには、安心感、誠実・きめ細やかな対応といった人柄が必要となるのです。また、介護や相続の問題は40・50代から抱え始めることが多く、社会人、人生経験が豊富な司法書士のほうが依頼者からの信頼を得やすい傾向にあります。
実際、若くして資格を取得し独立開業した方よりも、企業や自営業など社会人経験や主婦・子育て・介護など様々な人生経験を積み40・50代からスタートした方のほうが成功することも多いようです。
また、司法書士試験は受験資格がなく学歴は必要ないことから、山あり谷ありの人生経験を活かして司法書士として成功を収めている中卒の方や元フリーターの方もいます。
当たり前ですが、「営業力」や「業務に精通すること」は、事案獲得のための必須スキルのひとつだということを肝に命じる必要があります。司法書士の資格を取得すれば一生安泰というわけではなく、司法書士になってからも日々勉強・営業が必要です。
そして、安定して仕事を得るためには、会社勤め時代の知人から、地区のボランティア、商工会、介護施設、ママ友まで、人脈に常にアンテナを張ってニーズを察知して、くみ取らなければいけないでしょう。
人手不足の今がチャンス!超高齢社会でニーズ拡大の「成年後見制度」「遺産承継業務」 で躍進
さて、需要豊富で、全国各地で開業可能という恵まれた環境が整っている司法書士ですが、少子化による受験者数減少という大きな問題に直面しています。司法書士の令和3年度の志願者数は約15,000人で、合格者数は613人でした。
現在、司法書士事務所は、貴重な司法書士の合格者約600名程度の確保に躍起となるぐらい、慢性的な人手不足が続いています。
そもそも、少子化で人口も減っているため司法書士が増える必要はないのでは、と考える方もいるかと思いますが、少子化だけでなく超高齢社会である日本では、「成年後見制度」や「遺産承継業務」といった財産管理業務に大きな注目が集まっているのです。ここ数年司法書士界では、みなさんもメディア等でご存知の過払い金バブルが起こっていましたが、つぎは財産管理の時代が到来すると言われています。
今まで何度か出てきた「成年後見」という制度は、認知症や知的障害、精神障害などの理由で、不動産や預貯金などの財産管理などを行うことが難しい方や、自分に不利益な契約であっても正しく判断できずに契約を結んでしまう方など、判断能力の不十分な方を保護し支援するというものです。超高齢社会の現在、成年後見関連事件の申立件数は増加し続けており※、成年後見業務でのさらなる司法書士の活躍が求められています。
※裁判所資料によると、2016年の司法書士の成年後見人等専任数は、2009年に比べて約2.6倍であった。
「遺産承継業務」については、聞きなれない方も多いかと思います。「遺産承継業務」では、相続人から依頼を受けた被相続人の遺産の相続に関わる手続き全般をお手伝いします。
具体的には、相続人確定のための調査、不動産登記手続き、商業登記手続き、預貯金・株式・有価証券の名義人変更・解約、自動車の名義人変更など遺産相続に関わるすべての手続きを請け負います。場合によっては遺産をすべて現金化して、現金の形で相続できるような手続きも行います。
田舎の両親の遺産の整理を行うことが、移動距離や時間といった物理的な障壁などで難しい状況にある都市部に住む相続人の方々からのニーズが高く、今後もこの業務の需要が拡大していくことは間違いないでしょう。
司法書士会員数1,000名を超える一般社団法人日本財産管理協会(http://www.nichizaikyo.jp/)では、司法書士が財産管理業務に必要な知識や技能、さらには職業倫理を身につけるために必要な研修を実施しており、遺産承継や財産管理に関する情報を提供したり、お手伝いをする司法書士を紹介しています。
超高齢社会に最も必要とされる士業の一つと言えるのではないでしょうか。
百人百様、データ化できない人間模様と向き合うのが司法書士の仕事
特集記事第1弾でも紹介されていたように、司法書士もAI(人工知能)の脅威について全く無視するということはできないでしょう。
不動産登記や商業登記の手続きについてはオンライン申請が始まるなどシステム化が既に始まっており、将来AIがさらに発達することでその他のマニュアル化しやすい手続き業務は代替されることは予想できます。
しかしながら、司法書士の仕事は「ヒト」と向き合うことを避けることはできません。遺産分割・相続といった事案には、1件1件それぞれの背景に物語があります。成年後見業務についても、依頼人の人生や家族関係の背景は一つとして同じものはありません。商業登記においてもM&Aといった事案では「ヒト」の介入が不可欠です。
司法書士が扱う事案において、百人百様の依頼者のバックグランドをデータ化したところで、全く新しいケースを正しく分析することはできないでしょう。その点、司法書士へのAIの脅威については深刻に考える必要はないかと思います。
とはいえ、一人の司法書士として他のライバルと差別化でき、依頼人に付加価値を提供できるようなスキルが、「豊富な人生経験」「人柄」に加わることで司法書士としての盤石な基盤を築くことができるでしょう。
司法書士の場合、弁護士や税理士・行政書士といった他士業との連携を重視しており、もちろんダブルライセンスも強みにはなりますが、必ずしも他資格が必須というわけではありません。
ただし、他資格で習得しなければならない知識については、司法書士の業務を行う上でも非常に有益で、依頼者からの相談についてより的確なアドバイスを行うことができるのでスキルアップのために、他資格の学習・取得に挑戦してみるとよいでしょう。
司法書士×〇〇の組み合わせ例
司法書士 × 宅地建物取引士
市民に最も身近な法律の専門家に!
【難易度:易、競争力:○】
最高峰の法律資格のひとつとして位置づけられる司法書士ですが、宅建士の知識は実務・試験双方で役立ちます。不動産登記業務は、正確な登記申請をするために、登記発生の原因である不動産取引に精通していることが要求されます。
そのため、不動産取引について学ぶ宅建の知識は司法書士業務を行う上で必要不可欠なものであり、ダブルライセンスで活躍する上で、非常に役立ちます。
司法書士 × 土地家屋調査士
『権利に関する登記』から『表示に関する登記』までワンストップサービス!
【難易度:難、競争力:◎】
登記業務全般において、司法書士は『権利に関する登記』を主な業務としています。一方、土地家屋調査士は『表示に関する登記』を業務範囲としています。
つまり、ダブルライセンスによって、不動産登記に関するワンストップサービス提供が可能となり、より広範な業務を行うことが可能となります。親が司法書士、子が土地家屋調査士、と親子で共同の事務所を掲げるケースも少なくありません。
司法書士 × 行政書士
ゼネラリストとスペシャリストの強力コンビネーション!
【難易度:中、競争力:○】
司法書士試験口述模擬試験受験者の約半数が、行政書士などの有資格者といわれており、それほど親和性の高い資格であるということができます。行政書士の対応業務範囲の「幅広さ」に、司法書士の登記にまつわる強力な「専門性」を組み合わせることで、顧客の獲得機会と、獲得した顧客に対する継続的なサービス展開が実現可能となります。
※個人差があります。
司法書士の基本的情報
司法書士試験の概要
〇受験資格
年齢、性別、学歴等に関係なく誰でも受験できる
〇試験日程
<出願期間>
例年5月上旬から中旬
<試験日>
筆記試験:例年7月第1または第2日曜日
口述試験:例年10月
合格発表:例年11月上旬
〇試験科目
<筆記試験>
午前の部
試験時間: 9:30〜11:30
試験形式: 択一式(マークシート)
試験科目: 憲法/民法/商法/刑法 合計35問(105点満点)
午後の部
試験時間: 13:00〜16:00
試験形式: 択一式(マークシート)/記述式
試験科目: 不動産登記法/商業登記法/民事訴訟法・民事執行法・民事保全法/供託法/司法書士法 合計35問(105点満点)
記述式
不動産登記法書式
商業登記法書式
各1問(70点満点) ※記述式問題とは、登記申請書の記載事項や判断理由等を問う問題です。
<口述試験>
試験形式: 口述式
試験科目: 不動産登記法/商業登記法/司法書士法(司法書士業務を行うに必要な一般知識)
〇試験会場
法務局または地方法務局ごとにそれぞれの局が指定した場所
〇2021年(令和3年度)司法書士試験結果
出願者数 14,988名
受験者数 11,925名
最終合格者数 613名
合格率 5.14%
合格者平均年齢 41.79歳
最低年齢 21歳 4名
最高年齢 77歳 1名
〇受験回数
合格者のアンケート結果によると、合格までの受験回数が2〜3回の方が多いことが分かります。受験回数が3回以内で合格をされている方が全体の約4割近くを占めています。これは、出題の約8割を占める択一式の知識問題が多いため、勉強の方法さえ間違わなければ短期合格が可能であることを表しています。
〇出身学部
他学部でもハンデなし!多彩な出身学部
合格者の60%以上の方が法学部以外の学部出身者です。これは、勉強を始めるまで法律に縁のない方でも十分合格することができる可能性が有るということを表しています。司法書士試験で出題される試験科目は、たとえ法学部出身であってもそれまでに触れたことのないような手続法が多く含まれます。
したがって、法学部出身者、法学部以外出身者共にスタートラインはほぼ同じです。司法書士試験の受験資格には、学歴・性別・年齢等の制限が一切ありませんので、幅広い学歴の方が受験することができ、かつ、合格を勝ち取ることが可能です。
※「LEC口述模擬試験アンケート」より
詳細はLEC東京リーガルマインドホームページをご覧下さい。
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