営業担当者に会計スキルを。ビジネス会計検定で個の力を高める。【潜入!となりのカンパニー】
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【連載】潜入!となりのカンパニー
社内の教育制度に資格・検定を活用している注目の企業・団体にインタビュー。独自の社内ルールや企業風土を伺います。
大阪商工会議所主催の「ビジネス会計検定試験」は、財務諸表を理解・分析し、ビジネスに活用する力を養う検定です。
この検定を人財(人材)育成に活かしているのが、管工機材および住宅設備機器の販売を行う老舗企業・クリエイト株式会社(以下クリエイト)。
人財を「資本」として捉える同社が、「ビジネス会計検定試験」に着目した理由について、取締役管理本部長の五十嵐さんに詳しく伺いました。
この記事の連載
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お話を伺ったのは……
"人的資本経営"のために、個の力を伸ばす施策を
――クリエイトではどのような事業を展開していますか?
クリエイトは管工機材を中心に、製造、組立・加工、販売、物流、建築に至るまで、一連のサプライチェーンをグループで展開している商社です。
管工機材とは、水廻りや空調機器など、流体が循環する設備機器に取り付けられる機器・機材と、それらをつなぐ配管機材のこと。マンションや戸建住宅をはじめ、あらゆる建物と関わりをもちます。
現在は国内に複数の関連会社を擁し、社会のライフラインを支える材料を提供する従来の分野に加えて、リフォームや環境といった新たな分野でもビジネスを展開中です。
――幅広い商品を取り扱うとなると、膨大な知識が必要になるのではないでしょうか?
20万近いアイテムを取り扱っていますので、商品知識は必須です。ただ、それだけでは十分ではありません。営業担当者は、それぞれが受け持つエリアの現場を見て回り、顧客のニーズを的確に汲み取ることも必要に。
当社は管工機材を扱う大小さまざまな事業規模のお客様へのルートセールスをしていますが、営業の仕事は販売だけではなく、債権管理や財務的なリスク判断も求められます。
スピーディーで最適な判断が求められる現場で、財務の基礎知識があれば、より的確な与信判断が可能です。そこで人的資本経営の一環として、「ビジネス会計検定試験」に目をつけました。
検定導入は15年前。ボトムアップゆえの逆風にもコツコツと
――「ビジネス会計検定試験」を導入する決め手は何だったのでしょうか?
それ以前にも、マネジメント層を中心に与信管理の研修を定期的に開催していましたが、社員一人一人の財務スキルにはかなりバラツキがありました。
年に1回程度の研修では本質的な底上げができない、という中でたどり着いたのが「ビジネス会計検定試験」だったんです。
また、経営姿勢や財務内容から将来性の高いお客様を見極めて積極的な営業を展開したり、会計的な視点からお客様をよく理解し、信頼されるパートナーになることを目指すという狙いもありました。
しかし、何よりも大きなきっかけとなったのは、業務的な狙いとは別に、「これは自己研鑽・自己啓発のツールとして使える!」と実感できたこと。実は導入の検討段階で、私自身も「ビジネス会計検定試験」を受験してみたんです。
――ご自身が受験したことで、検定のメリットをより深く実感した、と。
そうです。「ビジネス会計検定試験」の難易度や扱う範囲が財務・会計の初心者でも取り組みやすく、営業職の知識付けに最適でした。でもそれだけではなく、試験に合格できたときの達成感も味わえ、自己啓発としての可能性を確信しました。
とはいえ、当時の私は中堅社員。ビジネス会計を体系的に学べる良い教材であると訴えましたが、上層部を説得するのに苦労しました(苦笑)。
いざ導入できても、「営業担当者は仕事で鍛えられる経験が何より大切。検定なんかいらない」という厳しい声も……。
それから15年。地道に検定受験の呼びかけを続けたことで、管理部門から始まった受験の輪も徐々に営業部門へと広がり、今では全社的に受験を推奨する環境を整えることができました。
受験する社員・内定者へ手厚いサポート。合格に向けて社内一丸
――現在は全社的に受験を推奨されているとのことですが、主に対象としているのはどのような方でしょうか?
営業部門が中心とはなりますが、全社員が対象者です。最近では、営業・管理問わず事務職の方の受験・合格も増えています。
社内では、業務や立場に関わらず、誰でも希望する研修を受講できる「手上げ式」の学び環境を整えているんです。
そのため、業務内容で直接会計や与信管理に関わることがない社員でもチャレンジ可能。
最近では、システム開発部門の社員が自主的に受験をしたり、検定合格を機に、営業事務職から営業職に転身した社員もいますよ。
また、新卒の内定者も受験の対象。
入社までの過ごし方についてこれまでは、「とにかく学生生活を悔いなく、やり終えてください」とお伝えしてきたのですが、一方で、内定から入社までは半年以上の期間がありますよね。
その間にも学生とのコミュニケーションを図るために、「ビジネス会計検定試験」は最適なツールです。
――受験者に向けてのサポートはされているんですか?
「ビジネス会計検定試験」の推奨を契機に、当社では「自己啓発支援規定」を制定。取得費用を支援しています。
具体的には、受験する社員や内定者に教材費(参考書・過去問集)や受験会場までの交通費、受験費用(合格者のみ)を支給したり、勉強スケジュールの策定や学習方法の相談を受け付けたりしています。
――検定取得に向けて会社が手厚くサポートしてくれるのは魅力的ですね。
「ビジネス会計検定」を受験した社員の声
「クリエイトの内定者研修で初めて『ビジネス会計検定試験』を知りました。
最初は会計知識が全く無い状態でしたが、受験勉強が進むにつれ理解が深まり、入社前に3級に合格することができました。
営業の仕事でも、リスクアセスメントの観点から得意先の財務諸表を確認することがあるので、財務状況を把握できるビジネス会計を学べてよかったと感じています(営業職 B氏)」
「『ビジネス会計検定試験』の受験推奨が始まって間もなく受験しましたが、当時管理職となったばかりであった自分にとって、マネジメントに関する意識を持つ良いきっかけとなったように思います。
営業担当者時代には販売に集中していたため外向きの考えでしかなく、財務諸表に関する知識を持つことによって内を見る意識が芽生え、予算についての根拠などを深く考えるようになりました(管理職 C氏)」
経営層にこそ学びの機会を。学びの姿勢を次世代に伝えるために
――社内では「ビジネス会計検定試験」をどのように活用していますか?
社員の能力向上という面ではもちろん、会社側から受験の呼びかけやサポートを続けること自体が、昨今の人的資本経営やリスキリング、リカレント教育という考え方と相まって、社内の学び意識の醸成につながっているように思います。
加えて、経営層にも積極的に受験を推奨。2024年度より人事評価の項目で管理職の昇格要件として採用しています。財務的な知識を経営判断の材料として役立て、マネジメント意識の確立を図ることが狙いです。
今では経営層の多くが、「ビジネス会計検定試験」に熱心に取り組んでいます。経営層が先頭に立って学ぶ姿勢が、社内の雰囲気や風土に影響を与え、社員一人ひとりのモチベーションも高まっているようです。
創立から100年。学びの姿勢を新たな社内風土に
――今後の展望について教えてください。
当社ではこれまで、必ずしも「学び」が企業文化として根付いていたわけではありませんでした。しかし、今後さらに成長していくためには、社員一人ひとりが自己研鑽する姿勢が重要だと考えています。
「学び」は個人の意欲に委ねられがちですが、検定という明確な目標を設けることで、無理なく学習習慣を身に付けられる。社員には、学びで得る知識を業務に活かすとともに、受験を通じて感じる達成感や喜びを実感してもらいたいと願っています。
当社は今年で創立から108年。次の100年を創造するために、今後も人材育成にいっそう力を入れていくつもりです。
検定という手段を通して、社員一人ひとりの成長を後押ししながら、企業文化の変革を目指すクリエイト。「ビジネス会計検定試験」は、そんな同社の人材育成を支える重要な施策になっていました。
企業情報
文=倉持 佑次