「結果が出せない状況にも折れない」Bリーグ・元澤誠選手の5年先の未来を信じ抜くマインドセット
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思うように結果が出ず、焦りばかりが募る。資格試験の勉強やスキルアップの過程で、誰もが一度は「このまま続けて意味があるのか」と足が止まりそうになる瞬間があるはずだ。
そんな停滞期こそ、長期的視野を持ちつつ揺れ動く心を客観視するメンタルマネジメントが必要になる。
B1リーグの強豪・シーホース三河に所属する元澤 誠選手。華やかな舞台の裏側で、なかなか出場機会を得られない苦境に立たされながらも、彼は「いまのこの状況が、5年先を見れば一番の正解かもしれない」と語る。
トップアスリートの思考プロセスから、逆境を成長の種に変え、学びの歩みを止めないためのヒントを探る。
【トップアスリートに学ぶ「強さ」の理由|プロバスケ選手編】
制限時間の中で最適解を導く「判断力」。技術が無意識に出るまで反復する「継続力」。そして、プレッシャーの中で結果を出す「実践力」。プロバスケ選手が日々磨いているこれらのスキルは、資格取得やスキルアップを目指す“まなびビト”も共通して獲得したい重要な要素だ。トップアスリートのアプローチからその極意を学ぶ。
出場わずか4試合。それでも、「5年先を見れば正解かもしれない」
子どもの頃からの「プロバスケットボール選手」という夢を叶え、B1の舞台に立った元澤 誠選手。前編で紹介した、目的のために必要な手段を効率良く行う独自の思考法を活かし、B3から練習生を経て、B1の強豪・シーホース三河への加入を果たした。
しかし、B1の壁は高く、加入後の2年間はほとんど出場時間を得られないもどかしい状況が続いている。
練習生から昇格した2024-25シーズンは、レギュラーシーズン全60試合のうち、出場できたのは18試合にとどまり、しかもその大半は、勝敗がほぼ決した後の「ガベージタイム」だった。
「このオフシーズンは身体づくりなどを含めてしっかりと準備をしてきたので、昨シーズン以上の手応えを感じながら開幕を迎えました」(元澤選手、以下同)。
しかし、悔しさを糧に飛躍を誓った今シーズンも、ベンチ外の悔しさを味わうなど、試練は続いている。それでも、「準備してきたことが結果に結びつかないもどかしさはありますが、成長しているのは僕だけじゃない」と元澤選手は前を向く。
「短期的に見たら、試合に出たいという気持ちはもちろんあります。ただ、試合に出られない悔しさは、いましか味わえない感情。この状況を楽しみながら、気持ちを切らさずにやり続けることが、いまの自分のテーマです。
続けていれば、いずれ結果はついてくると信じていますし、5年先とか、もっと先を見れば、いまのこの状況は正解かもしれないと考えています」。
日々の学びや仕事の過程でも、目先の成果に一喜一憂し、上手くいかない時間が続けば足が止まりそうになるもの。そういうときこそ、元澤選手のように時間軸を意識的に「先」へとずらしてみる。いまの苦しみを「未来の自分に必要なプロセス」と定義し直すことで、視界が開けるはずだ。
「量より質」のその前に。B1で痛感した圧倒的な練習量の差
今でこそ苦境をポジティブに捉える元澤選手だが、最初からこのような視野を持っていたわけではない。
B3立川時代、試合に出られない時期は「すごくネガティブになっていた」と振り返る。
ベンチに下げられるたびに「なんで僕を外すんだ」と不平不満をもち、自分に足りないものから目を背けてしまっていたという。
「不満が外に向いてしまうのは、自分に自信がなかったからだと思うんですよね。そして、自信をもつためには、自分にベクトルを向けて練習するしかないんだと悟りました」。
そのマインドへと変わるきっかけになったのは、B1のトップ選手の練習量を目の当たりにした経験だったという。
「よく『量より質』といいますよね。でも、大前提として、量をやらなければ、質には繋がりません。
自分ではこれまでも100%の力で練習してきたつもりでしたが、B3立川での僕の練習量は、シーホース三河の選手の50%にも満たなかったんです。トップレベルの選手はこんなにも練習するのかと、B1に来て最初に衝撃を受けたのを覚えています。1年間かけて、ようやくその量が当たり前の基準に変わりました」。
泥臭く、圧倒的な努力をすること。それこそが、揺るぎのない自信を構築するための唯一の正攻法なのだと元澤選手は痛感した。
感情を客観視するために、導いてくれる存在を持つ
自らを支えるのは、日々の地道な積み重ねだ。頭ではそう理解していても、心が弱っているときに前向きに行動し続けるのは決して簡単なことではない。そこで、彼が取り入れたのが、メンタルトレーニングだ。
自らの心と向き合う中で、元澤選手は脳科学者の中野 信子氏の著書『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』を読み、自分に起こっている出来事をどう解釈し、どう行動するかで、運の良さに差が出てくるという考えに感銘を受けた。
「成功するためには、技術も大事ですけど、最終的にはメンタル」。この学びに触れ、自身の心の動きとも冷静に向き合うようになったという。
「もともと僕はめちゃくちゃ落ち込みやすいんですけど、まずは『いま自分は落ち込んでいる』としっかり把握する。その上で理由をひも解き、『次は同じことを繰り返さないようにしよう』と自分自身で理解できていればOK、と考えるようになりました」。
ただ、自分1人で悶々と考えているばかりでは、より深く落ち込んでしまう危険性もある。そこで元澤選手は、今シーズンから個人的にメンタルコーチをつけ、月に一度のセッションを行っている。
「コーチに自分の現在の状況を話すことで、感情を客観視し、考えを整理できています。結果として、『自分にはまだ足りない部分がある』『もっとやれることがある』と気付くことができ、次のステップへ進むための準備にフォーカスできるようになりました」。
「悩んで、考え続けた人」が最終的には強い
専門家によるメンタルトレーニングは月に一度だが、身近にいる「背中で語る先輩たち」の存在にも支えられていると語る。
例えば、38歳の石井 講祐選手は一般企業を経てプロへ。日本代表の須田 侑太郎選手も、かつてはベンチ外のインアクティブ選手から這い上がった経験をもつ。
「須田さんも大学時代は試合に出られない時期があって、僕とも重なる部分がある。すごく悔しい思いをしてきたからこそ、強いメンタリティーを持って、常に第一線でプレーし続けられていられると思うんです。何気ない会話でも、彼の言葉には説得力があります。
1〜2年目でいきなり活躍できる人はほんの一握り。でも、石井さん、須田さんを見ていると、悩んで、いろいろ考えて続けてきた人のほうが最終的には強いんじゃないかと思えるようになりました」。
同年代だけではなく、自分のなりたい未来を実現している人から学ぶ。視線を先へと転ずることで、目の前の出来事をポジティブに受け取れるようになる。元澤選手は、長期的な視野に立って、焦らずに、いまできることに力を注ぎ続けている。
「表面的に楽しいことだけが、すべてじゃない。苦しいことも多いけど、それも楽しい。これは、僕だけが味わえる特権だと思っています」。
結果が出ない時期をどう過ごすかーーそれが、未来の自分を決定づける。
資格取得やキャリアアップ、あるいは受験など、目標に向けた長い道のりにおいても、停滞期や挫折は訪れる。しかし、その「上手くいかない時期」をどう解釈し、どう行動するかで、その後の運は変わってくるのかもしれない。
元澤選手が体得した「悔しささえも楽しむ」というマインドは、努力を続けるすべての人の背中を押してくれる。
お話を伺ったのは……
【トップアスリートに学ぶ「強さ」の理由|プロバスケ選手編】
◆シェーファー アヴィ 幸樹 選手に学ぶ、夢を叶える思考術
◆シーホース三河・久保田選手の本番に強くなるメンタル術
◆元澤 誠選手の「好きなことを続ける」ための思考術
◆シェーファー選手に学ぶ、迷いを断ち切るためのデータ戦略
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◆Bリーグ・元澤誠選手の5年先の未来を信じ抜くマインドセット・・・今回はコチラ
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撮影=宇高 尚弘
文=山田 智子










