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アロマ=“癒し”だけではない。プロが教える「本当の実力」とは?

インタビュー

アロマ=“癒し”だけではない。プロが教える「本当の実力」とは?

アパレルPRからアロマの世界へ転身し、現在はアロマテラピーライフスタイリストの川野 菜穂さん。キャリアチェンジの背景に迫った前記事では「香り」を仕事にした背景について聞きました。

今回は、そんな彼女が惹かれ続ける“アロマの実力”にフォーカス。私たちが「癒しの香り」と思い込んでいるものの裏側には、脳科学や生理学に裏打ちされた確かなメカニズムがありました。プロが語る、知られざるアロマの世界をご紹介します。

香りの資格ってどんなことを学ぶ?「癒し」の裏にある「科学」と「化学」

――川野さんは、「アロマテラピー検定」や「AEAJ認定アロマブレンドデザイナー」など、多くのアロマ系資格をお持ちですよね。アロマの資格では、具体的にどのようなことを学ぶのですか?

まず基本になるのは、植物からとれる精油の知識です。香りの種類や成分、心身への作用などを学ぶのですが、インストラクターなどの上位資格に進むと解剖学や脳科学まで幅広く学びます。

――脳科学まで! 意外と専門的なんですね。アロマってもっとふんわりした「感覚的なもの」だと思っていました。

例えば、香りは“癒しのアイテム”というイメージがあると思います。では、なぜ「癒し」を感じるのか、心身に影響が出るのかを理解するためには、私たちの身体を知る必要が生じるということです。

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現代人は、スマホやパソコンなど「視覚」優位のなかで生活していますが、実は五感の中で、本能に直結しているのは「嗅覚」だけ。 香りを嗅ぐと、わずか0.2秒で脳の「大脳辺縁系」という、感情や記憶を司る部分に届くことが分かっていて、頭で考えるよりも先に身体が反応するんです。

――考えるより先に、ですか?

そうなんです。例えば私たちは、腐った食べ物の匂いを嗅いだ瞬間、考える間もなく「うっ」っと顔をしかめて、対象物から反射的に離れますよね。あれは「これは危険だ」と頭で判断する前に、本能的に避けようとしている証拠。匂いで生死に関わるかの判断をするのは、生物として備わっている重要な本能なんですよ。

「雑貨」の日本、「医療」のヨーロッパ

――なるほど。匂いは単なる飾りではなく、生存に関わる機能なんですね。

 そうなんです。でも残念ながら、日本ではアロマ関連の商品は「雑貨」として扱われています。効果効能を謳うには法的な制約がありますし、どうしても“リラクゼーションのための雑貨”というイメージが強いですよね。

一方でヨーロッパ諸国、特にフランスやドイツでは、アロマは「医療」の一部として扱われています。医師が精油を処方してくれたり、保険が適用されるケースもあるんです。

──病院でアロマが処方されるんですか?

はい。ヨーロッパでは代替・補完医療として精油を活用することが日常に根付いています。日本でいう漢方薬の立ち位置に近いかもしれませんね。

日本では「アロマは雑貨」という認識がしばらく続いていましたが、最近では大学や研究機関と連携して「浮遊菌を99.9%除去する」といったデータを出すなど、科学的なエビデンスを実証しようという動きが進んでいて、喜ばしいことだなと思っています。

「いい香り」なら何でもいいわけではない? 100%天然にこだわる理由

──香りが人間の脳に働きかけ、体調などにも影響があるということでしたが、そうなると、どのような成分の香りなのかもポイントになりそうですね。

そこはすごく重要です! 私は仕事で使う香料はすべて「100%天然」のものにこだわっています。 世の中には柔軟剤や芳香剤など、t手頃で香りの強い製品がたくさんありますが、それらの多くは石油由来の「合成香料」です。

――やはり天然と合成では、身体への影響が違うのですか?

違いますね。植物性の天然香料は、身体に取り込んだ後、血液に乗って巡り、肝臓を通して最終的には排出されます。 でも、石油由来の合成香料は、分解されにくく身体の中に留まってしまうことがあるといわれています。強い香りを嗅いだ時に頭が痛くなったり、鼻の奥がツンとしたりするのは、身体が処理しきれない「異物」と反応を示しているサインかもしれません。

――なるほど……。「いい香りなら何でもいい」わけではないんですね。

はい。特にディフューザーなどで空間に拡散させる場合は、その空気を肺いっぱいに吸い込むわけですから、身体にとって異物にならない、安心できるものを選んでほしいなと思います。


一方で、パフュームのように残香を楽しみたいときには、合成香料が適した選択です。1日香りをまといたい、しっかりとした香りの存在感を得たいときには合成香料、ほのかな香調を楽しみながら心身をととのえたいときには天然香料と、目的に応じて選択できたらベストですね。


ただ「いい匂い」ではなく、脳や身体にまっすぐ働きかける力を持つアロマの実力の広さには驚くばかり。

最終回となる次回は、このアロマの力をどのように社会や仕事に生かしていけるのか、そして資格取得者が広げられるキャリアの幅について、川野さんに伺います。

お話を伺ったのは……

川野 菜穂さん

エッセンシャルオイルフォーミュレーション、アロマ空間デザイン、メンタルアロマなどのアロマテラピーの学びから、解剖学・化学・心理・環境・カウンセリングやコーチングなどの学びを重ねる。現在はこころと身体に働きかける調香をしながら「かおりのあるくらし」の啓蒙に努める。2009年より活動を開始し、オリジナルプロダクトを展開しながら、嗅覚特性を生かしたプロモーション提案、アロマ空間デザイン、アロマプロダクトの企画開発、パーソナルセッションなどを行う。2020~24年公益社団法人日本アロマ環境協会理事。

この記事の連載
アパレルPRからアロマの道へ。キャリアチェンジの舞台裏
◆アロマは"癒しグッズ"じゃない? プロが教えるアロマの「実力」……今回はコチラ
◆アロマの知識を“使えるスキル”に変える方法

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