Vol.34 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 2019.10.21

インタビュー
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★この企画では、読者のみなさんに代わって日本の資格・検定編集部が資格・検定試験の運営団体にインタビューを行い、その魅力をお伝えしていきます!
Vol.34では、「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験」を運営している独立行政法人情報処理推進機構(IPA)を取材しました。
「DX」という言葉を知っていますか?

DXとは、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」という考え方です。
※「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略で、英語圏では“Trans”がXと略されることによります。
これは「人の手で生産品質を管理していたが、機械やシステムを導入した」といった単なる業務のIT化ではなく、「生産品質を機械やシステムで管理することで、小売店の在庫情報を確認しながら発送管理もできるようにした」というような業務のIT化に付加価値をもたらすビジネス変革・企業組織内の仕組み・体制の再構築を指します。
そして現在、多くの企業がこのDXによって業績の向上や職場環境の改善を図ろうという動きを強めており、社会に出て働く全ての人にとってITリテラシーの底上げは急務となっています。
そこでカギとなるのが「情報処理技術者試験」と「情報処理安全確保支援士試験」です。
中でも情報処理技術者試験の1つである「ITパスポート試験(iパス)」は、アベノミクスの成長戦略において「新たなITパスポート試験の受験者数を2023年度までに50万人とする」と2019年6月に閣議決定されています。
また、企業導入事例としても株式会社ニトリホールディングスで5年後の2024年を目標に、社員約5,000名全員がITパスポートを取得し、ITを利用・活用する環境を目指すとされるなど、今大注目のIT系試験です。
現在、テクノロジーの変化を把握し、競争時代を勝ち抜く組織づくりのためには、ITリテラシー人材とIT人材が不足しています。そこで、ITパスポート(iパス)を組織全体のITリテラシーの底上げのために取り入れました。全社員がITの基礎を理解することで、ユーザーの立場からエンジニアとコミュニケーションができる人材に成長できると考えています。またiパスには、ビジネス全般の基礎が凝縮されており、業務を効率的・効果的に推進するための知識が学べます。

そのため弊社では、5年後を目標に、社員約5,000人全員がiパスに合格できるよう取り組んでいます。ITに触れてこなかった社員でも、iパスをきっかけにITに興味を持ち、上位の試験にチャレンジするなどして、IT系の部署で活躍できる人材へと育ってほしいです。

「iパス」企業インタビュー 株式会社ニトリホールディングス より(抜粋・一部変更)
一方、同じく情報処理技術者試験のうちの1つ「基本情報技術者試験」は、「日本の資格・検定」内でお馴染みの「就職に役立つ資格・検定ランキング」や「日本の資格・検定AWARDS」で上位に入っている常連試験となっています。
そこで今回は、ITパスポート試験や基本情報技術者試験を含む情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の特徴や自分の職位・スキルに合った試験の選び方、活用シーンなどを独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)に伺いました。

Q1 「情報処理技術者試験」と「情報処理安全確保支援士試験」について教えてください。

ITパスポート試験をはじめとする情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験は、これからITに触れようとする方のリテラシー向上や、エンジニアなどITに従事する方のスキル証明に有効な国家試験です。12種類の情報処理技術者試験と情報処理安全確保支援士試験の計13種類の試験で構成され、さまざまなレベルや業務領域に対応しています。
※12種類の情報処理技術者試験と情報処理安全確保支援士試験について詳細はこちら
とりわけ情報処理技術者試験の歴史は長く、時代に合わせて姿かたちを変えながら、2019年で創設から50周年となります。
そのような中で2017年、サイバー攻撃の増加・高度化や社会的なIT依存度の高まりを受けて急速に増大する脅威への対策を担う情報セキュリティの専門家を育成、確保するために、情報処理技術者試験から独立する形でスタートしたのが情報処理安全確保支援士試験なのです。
※情報処理安全確保支援士試験合格後に申請をすることで、国家資格「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」を取得できます。
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▲ITの出来事とIPAの試験の歴史
(クリックで拡大表示)
これらの試験の延べ応募者数は2,002万人と規模も大きく認知度も高いため、就職活動や転職活動の際に知識やスキルを証明するのに最適です。
また、全ての試験はベンダーニュートラルに出題されるため、学習した内容はどのような環境でも実際の業務に生かすことができます。もし今後新しい技術や手法が現れても、試験で得た知識を基にすれば理解も早く、対応もしやすいのではないでしょうか。
※特定の企業が販売するソフトウェアやシステムに依存しないこと

Q2 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の計13試験のうち、どれを受験したらよいですか?

13の試験は、「対象者」、「出題レベル」、「業務領域」の3つの視点から区切られています。この3つのポイントから自分の立場に合わせた試験を選びましょう。
※12種類の「情報処理技術者試験」と「情報処理安全確保支援士試験」について詳細はこちら
対象者
情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験は、IT企業以外の営業職や事務職、管理職といった「ITを利用・活用する方向け」の分野と、IT系のエンジニア、プログラマや営業職などの「ITに従事する方向け」の分野に分けられます。
試験体系図_編集可能な元ファイル72
▲対象者・出題レベル別 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 体系図
例えば、就活生にメジャーなITパスポート試験は、ITを利用・活用する方向けのベーシックな知識を幅広く学ぶことができる試験です。
同様に初学者向けといわれる基本情報技術者試験ですが、こちらはITに従事する方に最適な試験となっています。午前の試験ではITパスポート試験のように幅広い分野から満遍なく出題され、午後の試験ではプログラミングやアルゴリズム、セキュリティなどITエンジニアとして習得すべき分野の問題が出題されます。
出題レベル
ITを利用・活用する方向けの試験であるITパスポート試験と情報セキュリティマネジメント試験では、レベル1~2のベーシックな知識が問われます。
※レベルの定義は次のとおり
レベル1:職業人に共通に求められる基礎知識
レベル2:基本的知識・技能
レベル3:応用的知識・技能
レベル4:高度な知識・技能
また、ITに従事する方向けの試験は、基本(レベル2相当)・応用(レベル3相当)・高度(レベル4相当)の3段階にレベル付けがされており、情報処理安全確保支援士試験は、情報処理技術者試験12種類のうち「ITに従事する方向け・高度試験」と同等のレベル(レベル4相当)です。
業務領域
ITを利用・活用する方向けの試験は、幅広い知識が問われるITパスポート試験と、情報セキュリティの知識に特化した情報セキュリティマネジメント試験に分けられます。ただ、どちらも業務や活用の領域にかかわらず、全ての方に身に付けてもらいたい知識です。
一方で、情報処理安全確保支援士試験や高度試験は、情報システムの企画や要件定義、設計、運用・保守など、IT業務のさまざまな活動領域ごとに分かれています。
例えば、ITを活用した事業革新、業務改革やシステムの企画を立案する「ITストラテジスト試験」や、要件定義、システム方式設計を行う「システムアーキテクト試験」、システム開発プロジェクトを指揮、管理する「プロジェクトマネージャ試験」では、経験を積んだマネジメント層の受験が目立つなど、13の試験を自分のレベルや目指すキャリアに合わせて複数受験する方も多くいるようです。
経験を積みながら、さらに難易度の高い試験にチャレンジしたり、新しい分野を開拓したりと、長期的な学習の布石としても有効でしょう。
※12種類の「情報処理技術者試験」と「情報処理安全確保支援士試験」について詳細はこちら
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▲合格者平均年齢・ステップアップ例(平成30・31年度の統計による)

Q3 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験はビジネスシーンでどのように活用できますか?

情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験は、その高い認知度から企業での昇進・昇格や就職活動・転職活動など、ビジネスのさまざまな局面において自己アピールや意思表示に活用できます。シチュエーションごとの例をいくつか挙げるので参考にしてください。
就職活動・インターン
「ITパスポートを持っています」
19歳男性/文系大学生
文系・理系に関わらず、ITパスポートを持っていれば就職活動やインターンの際に「この学生はITリテラシーが高く、即戦力になるかもしれない」という印象を与えられるでしょう。

どのような経緯で受験に至ったのか、どのような努力をしたのか、またどのポイントを重点的に学んだのかを添えて伝えれば、ご自身の人柄もアピールできます。
就職活動
「基本情報技術者試験に合格しました」
21歳女性/IT企業志望 理系大学生
プログラマやエンジニアを目指すならば基本情報技術者試験の合格で基礎知識をアピールしましょう。幅広い内容を網羅しているので、IT業界への第一歩としてだけでなく、今後のキャリアの指針としても活用できます。

就業後は応用情報技術者試験の受験も視野に入れて学習を続ければ、知識やスキルの向上も望めます。
案件獲得「データベーススペシャリスト試験とネットワークスペシャリスト試験に合格しました」
32歳男性/フリーランスエンジニア
データベーススペシャリスト試験とネットワークスペシャリスト試験はそれぞれ別の専門分野について問われる試験ですが、エンジニアとして従事する方の多くが複数の分野を横断して業務を行っているのではないでしょうか。

そのような場合も自分の専門分野を曖昧にせずに「試験合格」という形で示せば、顧客・依頼者からの信頼や新規案件を獲得することにも繋がります。
キャリアアップ「以前にプロジェクトマネージャ試験を受けて合格したので、ITストラテジスト試験に挑戦する予定です」
36歳女性/社内システムエンジニア
これからチャレンジしたい分野の試験を受験すれば、人事部や転職希望先へのアピールとして活用することも可能です。特に高度試験や情報処理安全確保支援士試験の合格は、昇進への判断材料やキャリアパスの意思表示としても示すことができます。
これらのような自己アピールへの活用に加えて、試験合格者に対して資格手当や合格一時金が支給される企業も多く、取得して損はないと言えるでしょう。

Q4 今後のIT動向と情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験との関わりについて教えてください。

ITの技術は驚異的なペースで進化を続けています。そして、情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験はこれまでも・これからも時代のニーズに沿ってタイムリーな出題を心掛けています。
近年、特に重視しているのは、情報セキュリティとAI(人工知能)・ビッグデータ・IoTなど第4次産業革命とも呼ばれる新しい技術です。
まず、情報セキュリティについては、これまでにも度々出題内容の見直しを行っていますが、Q1にあるように情報処理安全確保支援士試験も、多発する情報漏えいなど情報セキュリティ問題への対策として新設されました。
サイバー攻撃がますます高度化、複雑化し、不正アクセスや人的ミスによる個人情報の流出も頻度を増している中、これらに適切に対応するためには、情報セキュリティに関する高度な知識と技能を持ち、かつ最新技術への造詣をも兼ね備えた情報セキュリティ専門の人材を育成することが不可欠です。
情報セキュリティ人材を増やしていくためにも、運営団体として情報処理安全確保支援士試験や情報処理技術者試験の1つである情報セキュリティマネジメント試験に力を入れていかなければならないと考えています。
次に、第4次産業革命に関してですが、IoT、ビッグデータ、AI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの技術革新が社会環境や日常生活に大きな変化をもたらしています。
※機械学習・AIなどの認知技術を活用した主に事務業務の効率化・自動化の取組み
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このような背景を踏まえて、基本情報技術者試験は2020年春期試験から
(1)プログラミング言語COBOLについての出題を廃止し、AIにおける機械学習やディープラーニングなどで多く採用されるプログラミング言語Pythonについての出題を追加
(2)プログラミング能力重視の配点
と出題内容の一部変更を行いました。第4次産業革命の関連技術については、全試験区分で積極的に出題していきます。

Q5 運営団体として試験に込めた思いを教えてください。

実務に役立つ試験として、毎回、試験問題に強いこだわりを持って作成しています。

試験問題の作成には、企業などの実際の現場で活躍するITエンジニアやセキュリティエンジニア、教育機関に所属する専門家など約450名が携わっていますが、昼間はそれぞれの本業で時間が割けないため、本業終了後の夜に集まって委員会を行っています。

「いまビジネスの現場で起こっている問題は何か」、「その問題をITでどう解決すべきか」、「それにはどんな技術が必要か」、「その前提としてどんな知識を備えておくべきか」など、深夜まで議論を積み重ねた結果が試験問題となり、各試験の問題冊子に詰まっているのです。

現在、ビジネスや日常生活の隅々までITが浸透しているのと同時に、環境に左右されない教育システムの拡充や地方都市の過疎化、高齢化など、多くの社会問題への取り組みやサービスがITやAIを駆使して開始されつつあります。これにより、ITの知識はますます今を生きる全ての人に欠かせないものとなっていくでしょう。

そのような中で、作問委員と私たちが精魂込めて作り上げた情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験が、それぞれ受験者の方とITとの関わり方に応じて、知識や技能の向上のお役に立てればとても嬉しいことです。ITに従事する方にとっては情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験でさらなるスキルアップを叶えて、活躍の場を広げてほしいです。 

いかがでしたか。

2018年9月に経済産業省から発表されたDXレポート※によると、数十年前に構築されたシステムが年月を経て複雑化し、改変が行われることなく企業内で使い続けられることで2025年以降には年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると報告されています。
これは「2025年の崖」と呼ばれ、国内IT業における技術・人材・経済を巡る「最悪のシナリオ」です。
この問題の要因として、新しいシステムや技術の導入が滞っていることはもちろん、「企業の上層部がIT知識を持たないことで企業内のシステム刷新が進まない」、「IT化の導入が遅れている企業で若い世代が辞めていく」など企業内のIT知識不足やIT人材不足が挙げられます。
解決に向けてビジネスパーソンの一人一人が、年齢や職位に関わらずIT知識を身に付け、新しいシステムや技術に対応する準備を整えていくことが求められます。その切り札が情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験なのかもしれません。
◆試験全体サイト: https://www.jitec.ipa.go.jp/
◆iパス専用サイト: https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/
◆情報セキュリティマネジメント試験(SG)専用サイト: https://www.jitec.ipa.go.jp/sg/

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