気象予報士で東大大学院生。千種ゆり子さんのモチベーション維持法からお気に入りの勉強アプリまで【気になるあの人を深堀り】
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小学生のときの授業をきっかけに環境問題に関心を持ち続けてきたという千種ゆり子さん。2011年の東日本大震災をきっかけに防災の道に進むことを決意し、「気象予報士」試験に挑戦。
1、2度目の試験では不合格になるも3度目で見事合格し、その後気象キャスターとしてのキャリアを重ねてきました。2021年には東京大学大学院に進学。地球温暖化とSNS、社会システムとの関係についての研究を行なっています。
ちなみに、「気象予報士」の資格を取得するために勉強を始めたのは大学卒業後、一般企業に就職した3年目のこと。さらに東京大学大学院への進学を決めたのも気象予報士として活躍している真っ只中……。
そんな千種さんの学習法や時間の使い方、モチベーションの保ち方などについてお話を伺いました。
お話を聞いたのはこの方
第1回【気象予報士試験突破の道のりと、資格を活かす働き方をお天気キャスター千種ゆり子さんにインタビュー!】……公開中
第2回【気象予報士で東大大学院生。千種ゆり子さんのモチベーション維持法からお気に入りの勉強アプリまで】……今回はコチラ
千種ゆり子さん
一橋大学法学部を卒業後、一般企業に勤務しながら気象予報士試験に挑戦。2013年に気象予報士資格を取得。その後、NHK青森「あっぷるワイド」、テレビ朝日「スーパーJチャンネル(土曜・日曜)」への出演を経て、TBS「THE TIME,」に出演。2021年10月より東京大学大学院に入学し、地球温暖化とSNS、社会システムとの関係について研究中。
Twitter:@yurikochikusa
「知りたい」「学びたい」という気持ちを大切に
「東大大学院へ進学するきっかけは気象予報士として仕事をしている中で『もっと深く地球温暖化など環境に関することを学びたい』という気持ちが強くなったことです。
家で夫にそんな話をしていたら、会話の中で大学院という言葉が出てきて。気象予報士の先輩にも大学院で学ばれていた方がいたこともあり、私のなかでも身近な選択肢になっていきました。
受験を決めてからは、主にTOEFLのスコアを上げるために英語の勉強をしたり、あとは論文の計画書のようなものを書いたり。いわゆる受験勉強という感じではなく、どちらかと言うと大学院でどんなことをしたいかを明確に示す作業でした」(千種さん。以下同)。
大学受験の際、一度は東大を目指すも叶わず、「もう一度東大に挑戦したいという気持ちもあった」と話す千種さん。
東大大学院に入った現在は、気候変動に関するオンライン上のコミュニケーションを研究しているのだそうです。
環境問題の原点ともいえる地球温暖化については世界中で活発な議論がされていますが、それがオンライン上の〝炎上〟に発展することも多く、議論すること自体の難しさも感じているのだとか。
「地球温暖化とひとことで言っても様々な考え方があります。
私の研究は、主張や意見が交わされている気候変動に関してオンライン上のコミュニケーションを分析し、見える化するというものです。
例えば、COPという温暖化政策に関する会議が毎年行われているのですが、twitterでCOPについて呟いていた人の投稿をピックアップし、プログラミングを使って分析します。
そうすると、どんな人がどんな傾向のツイートをしているのか、どんなことで議論になっているのか、といったことを見える化できるんです。
まだまだ研究途中ではありますが、これを続けていくことで温暖化がどのように認識されているのかを客観的に掴み、伝え方や発信方法の提案につながれば社会貢献の一端になるのかなと思っています」。
今欲しいのは英語力。自分に必要なスキルを見直して勉強方法に落とし込む
現在は修士2年で「来年春の卒業を目指している」という千種さんですが、実は現在も英語の勉強にかなりの時間を割いていると言います。留学経験などがない千種さんは、言わば独自学習によって英語力を養っているのだそう。
「大学院を修了するためには研究をして論文を書くというのが重要な要素。論文を書くためには論文をたくさん読むことが必須で、その論文はだいたい英語で書かれているんです。なので、読解力をアップさせるための勉強に力を入れています。
それに加えて、オンラインでの英会話レッスンも始めました。最近はAIを使用した技術で自動翻訳や自動ライティングが簡単にできるようになっていますよね。
そんなこともあり、これからはリスニングとスピーキングがますます重要になってくるのではないかと感じています」。
自分に必要なスキルを冷静に判断して、それに合った学びを取り入れているのも千種さんの大きな強み。
「英語を学べそうなアプリをいろいろ試しているのですが、最近は『SayHi』という翻訳アプリがお気に入りでよく使っています。
アプリを起動して、音声入力するとすぐに翻訳されて返ってくる。LINEでトークしているような感覚で、簡単に操作できるのもポイントです。
もちろん、シンプルな翻訳機能としても便利なのですが、私独自のお気に入りの使い方があります。
それは、英語で書かれた本を読んでいる際、このアプリに向かって声に出して読むというもの。そうすると、日本語の翻訳が即座に画面に表れて、普通に読んでいるよりもさらに理解が深まるし、発音の練習にもなるんです」。
学びの時間と質を両立。そのために大切なのは、日常にある小さな“切り替え”。
千種さんが大学院に通うようになったのはコロナ禍に入ってから。在宅で仕事や学習を行う人が増えたなか、千種さんはあえて家から出て作業していて、現在もそのスタイルは続いているそう。
「私の場合、適度に人の目がある方が頑張れるような気がして、なるべく大学の図書館に通っています。毎日の決まったスケジュールというのは無いのですが、傾向としては、8~9時には大学に着くことが多いです。
図書館が開くのが9時なので、それに合わせて大学に行って勉強や作業を開始。12時にランチ休憩を取って、さらに17~18時まで図書館に籠る。
その後、大学の食堂で食事を摂って、さらに20~21時ぐらいまで続けることも。
こういったスケジュールで過ごしているとかなり長時間で勉強や作業をすることになるので、集中力を切らさないためにも“切り替えの時間”を大事にしています。
とはいえ、特別なことをするのではありません。大学で作業する日は食事の時間を、家で作業する日は洗濯物を干す時間や、ちょっとした買い物の時間を意識的にリフレッシュタイムとして捉え、気分を切り替えるんです。
そうすることで、その後の勉強や作業のモチベーションを保つことができます。
ちょっと体を動かしたいなあ、と思うときはリングフィットで軽い運動をすることもあります」。
「自分にできることは何か」その問いがモチベーションの源に
東大大学院で学ぶ傍ら、プライベートでは2020年に結婚。2022年には26歳の時に難治性の不妊症である早発閉経と診断されたことを公表し、これがYahoo!ニュースに掲載され、1000件以上のコメントが寄せられるなど大きな話題となりました。
そして、このことがきっかけとなり、千種さんは自身の身体に目を向けることの大切さを伝える活動にも力を入れているのだそう。
「私が届けた情報で誰かがポジティブになれるきっかけを作れたらいいなという思いから、私自身が原案・プロデューサーを務める映画の製作を始動しました。
2024年春の完成を目指しているのですが、今はこの件もあって、頭の中がトゥーマッチ気味でもあるんです。
でも、そういった状況も楽しめているので、学びたいことややってみたいことをうまく切り替えながら進んで行くのが性に合っているのだと思います」
いかがでしたか?
仕事に家事にプライベートに……と忙しい人にとって、「学び」はどうしても後回しになりがちなもの。
しかし、千種さんのように自分の目指すこと、自分のやりたいことを実現するというビジョンのもと、情熱を持って学びに取り組むことが、大きなモチベーションに繋がるのかもしれません。その際には、ぜひ気持ちの“切り替え”も大切に。
取材・文=君塚麗子
衣装提供=Dessin