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今ライフセーバー不足が深刻!? 資格取得の方法や仕事、実際の現場についてインタビュー

インタビュー

今ライフセーバー不足が深刻!? 資格取得の方法や仕事、実際の現場についてインタビュー

海の安全を守る仕事として知られるライフセーバー。夏になると海水浴場などで見かけますよね。

しかし、「どうすればライフセーバーになれるのか?」「経験が浅くても大丈夫?」など、その実態について知られていないことも多いと思います。

今回は、日本ライフセービング協会でスポーツ推進部長を務める上野 凌さんにライフセーバーにまつわるアレコレを教えてもらいました。

お話を伺ったのはこの方

上野 凌さん●1995年生まれ、神奈川県出身。日本ライフセービング協会スポーツ本部副本部長。7歳からライフセービングの活動をスタート。慶應義塾大学入学後は競技活動にも専念し、国内外で数々の好成績を収める。2016年と2022年に日本代表として世界大会に出場。現在は、大手総合コンサルティングファームで会社員として働きながら、ライフセービングを続けている。

ライフセーバーの目的は、事故を未然に防ぐこと

――まずはライフセーバーの仕事内容を教えてください。

ライフセーバーと聞くと人命救助をイメージする方が多いかもしれませんが、僕らのいちばんのミッションは、水辺の事故を未然に防ぐこと。

そのために、監視タワーに座って海のコンディションを観察したり、浜辺をパトロールしながら、どんな危険性があるかを予測して、お客さんに声掛けをしています。

――主にどんな声掛けをするのでしょうか?

例えば、日差しが強い日は「熱中症になる可能性があるのでしっかり水を飲んでくださいね」とか、お酒を持ってきている方には「飲みすぎないように注意してくださいね」といったことをお伝えしています。

海には溺れる以外の危険性もたくさんあるんです。そのリスクを減らすことで、みんなが笑顔で帰れるような環境作りを目指しているので、できるだけすべてのお客さんに声をかけるようにしています。

――万が一、救助が必要になった場合はどう対応していますか?

救助の他にも、迷子対応や海の清掃活動など、ライフセーバーの活動範囲は多岐にわたるのだそう。

救助とひとことで言ってもいろんな段階があるのですが、例えば、意識はあるけれども自力で戻れない人には、一緒に泳いで浜辺へ引っ張ってあげます。

溺れている人には救命機材を巻いてあげたり、沈んでしまっている場合はボートに乗せて岸へ引っ張るといったことも行っています。

ライフセーバーになるために必要なのはスキルと体力


――ライフセーバーはいろいろな業務を行うんですね。では1日のスケジュールを教えてください。


サマーシーズンのスケジュールは大体こんな感じです。

5:30   トレーニング
7:00   メンバーで朝礼後、パトロールの準備
8:00   警備開始
17:00 警備終了
18:00 終礼後、ミーティングなど

――こんなに早い時間からトレーニングを⁉

はい。朝のトレーニングでは主に2つのことを行っていて、ひとつが体力面を鍛えるトレーニングです。有事の際は1秒でも早く救助をして、岸へ戻って来られるかが重要なので、実際にボートなどの救命機材を使って、漕いだり走ったりするトレーニングを行います。

もうひとつが、スキル面を磨くこと。シミュレーションといって、水難事故が発生してから浜辺へ引き上げて心肺蘇生をするまでの一連の流れを訓練します。引き上げた後も、救助者をいかに安定させ、素早く救急隊に引き継げるかを意識しています。

――体力面でのタフさが求められる気がします。そもそもの運動能力が高くないとライフセーバーにはなれないのでしょうか?

もちろん必要最低限の体力は必要なのでトレーニングは欠かせませんが、必ずしも全員に高い運動能力が求められるというわけではありません。ライフセービングには後天的に身につけられるスキルがたくさんあります。

例えば、心肺蘇生の技術や、周りを見て声を出す、救急隊が来た場合の動線を確保するなど……。集団で同時に救助を行うので、それぞれが自分の役割を果たすことが大事なのです。

――なるほど。チームプレーの一面もあるんですね。ちなみに、ライフセーバーになるにはどんな資格が必要ですか?

まずは「BLS(ベーシックライフサポート)」と「ウォーターセーフティ」の試験をパスすることが前提条件となります。

前者は心肺蘇生の資格で、後者は水辺で自分の身を守れることを証明する資格です。いずれも講座を受けた後に筆記試験と実技試験に臨みます。

この2つの資格を取得して初めて応募できるのが、「ベーシック・サーフライフセーバー」という資格です。

――「ベーシック・サーフライフセーバー」とはどういう資格なのでしょう?

講習会は、各都道府県で行われている。募集要項は日本ライフセービング協会のホームページをチェックしてみよう。

これは、ライフセーバーとして正式に浜辺に立つことができる資格です。

資格取得のために、4日間の講習会でみっちり座学を勉強し、最後に学科試験と実技のテストを受けてもらいます。

――やはり難しいのでしょうか……?

講習会で教わったことをきちんと実践できれば、落ちることはないでしょう。協会としても落とすことを目的としているのではなく、最低限の救助ができる知識と技術を身につけてもらいたいので。

ただ、受講するために「50mを40秒以内で泳ぐ」「20m以上を潜行で泳ぐ」などの条件があるので、泳ぎが苦手な人は練習をしておく必要があるかもしれません。

男女比は7:3。10代〜60代まで年齢層はさまざま


――そもそも、どんな人が試験を受けているのでしょう?


男女比は7:3で、10代から60代まで幅広い世代の方が活躍していますが、いちばん多いのは、大学生です。

最初から水泳をやっていた人は少なくて、トライアスロンや、サッカー、野球などのスポーツを経験していて、「自分が培ってきた能力を誰かのために使いたい」といった想いで試験を受ける方が多い印象です。消防隊や海上保安官を目指すために受ける人もいます。

その他だと、子どもがジュニアのライフセービングをやっていてその影響でお父さんもライフセービングを始めたという例もあります。

――男性が圧倒的に多いイメージだったので、意外でした。ちなみに、海がない地域でライフセーバーになりたいと思ったらどういう道がありますか?

ライフセーバーには、海で活動するための「サーフライフセーバー」資格だけでなく、プールでの安全を守る「プールライフガード」と呼ばれる資格があります。

海に比べると大きな事故が起こるリスクが少ないので、プールではライフセーバーの資格がなくても監視員になれてしまうのが現状です。ただ最近は、ライフセーバーを導入しているプールも増えているので、そこで活動するのもひとつの手です。

海のない長野県に住んでいる僕の知り合いは、毎年夏になったら下田(静岡県)の海でパトロールをしています。ですので、ご自身のライフスタイルに合わせた働き方もできると思います。

コロナ禍の影響でライフセーバーは不足している


――上野さんがライフセービングをしていて感じている変化や近年の傾向などはありますか?


ライフセーバー不足は大きな課題だと思っています。

――やはりコロナ禍の影響でしょうか?

そうですね。コロナ禍で「BLS」や「ベーシック・サーフライフセーバー」などの講習会を実施できなかったことは理由のひとつに挙げられます。

それに加えて、各大学のライフセービングクラブで思うように新入生の勧誘ができなかったのも原因のようです。実はライフセーバーは大学生が主力なので、学生生活が制限された影響が浜辺にも表れているように感じます。

コロナ禍前から、そもそも日本にある1200ほどの海水浴場のうち、200ぐらいしか認定のライフセーバーを置けていないのが現状で、これからもライフセーバーの育成は不可欠です。

――ライフセーバーの活躍の場はたくさんありそうですね。最後に、これからライフセーバーの資格を取りたい人に向けてアドバイスをお願いします。

ライフセーバーは、海が好きだったり、誰かのために何か活動したいという想いがある人に、ぴったりの仕事。そして、この資格があれば、自分だけでなく大切な人を守るときにも活かすことができます。

ライフセービングを通して、一緒に海の楽しさを伝えていきましょう!


いかがでしたか。

浜辺でライフセービングの第一線に立ちながら、ライフセーバーという活動を広めたいと活動する上野さん。その背景には「たくさんの人に海で過ごす時間を心から楽しんでほしい」という強い思いがありました。

全国にはまだまだライフセーバーが不足している海水浴場があるのも事実。少しでも興味のある方はぜひお近くの講習に参加してみてはいかがでしょうか。

ライフセーバーの資格情報はこちら


SUGARBOY=文

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