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気象予報士試験突破の道のりと、資格を活かす働き方をお天気キャスター千種ゆり子さんにインタビュー!【気になるあの人を深堀り】

インタビュー #気になるあの人を深堀り

気象予報士試験突破の道のりと、資格を活かす働き方をお天気キャスター千種ゆり子さんにインタビュー!【気になるあの人を深堀り】

天気の予測・分析のプロフェッショナル「気象予報士」。多くの人が一度は憧れる職業ですが、気象予報士として従事するには国家資格の取得が不可欠です。

その難易度の高さから挫折してしまう人が多いものの、取得後は生涯活かせる資格で、近年は気象予報以外にも活躍の幅が広がっているのだとか。

今回は合格率5%の狭き門を突破し、キャスターやコメンテーターとして幅広く活躍する千種ゆり子さんに気象予報士試験合格までの道のりや資格取得後の仕事についてインタビューしました。

お話を聞いたのはこの方

第1回【気象予報士試験突破の道のりと、資格を活かす働き方をお天気キャスター千種ゆり子さんにインタビュー!】……今回はこちら
第2回【気象予報士で東大大学院生。千種ゆり子さんのモチベーション維持法からお気に入りの勉強アプリまで】……公開中

千種ゆり子さん
一橋大学法学部を卒業後、一般企業に勤務しながら気象予報士試験に挑戦。2013年に気象予報士資格を取得。その後、NHK青森「あっぷるワイド」、テレビ朝日「スーパーJチャンネル(土曜・日曜)」への出演を経て、TBS「THE TIME,」に出演。2021年10月より東京大学大学院に入学し、地球温暖化とSNS、社会システムについて研究中。
Twitter:@yurikochikusa

気象予報士試験の突破は理系分野の攻略が肝に!

―気象予報士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

気象予報士を目指そうと思った直接的なきっかけは2011年の東日本大震災です。

災害の恐ろしさを改めて体感したことで、「防災の道に進みたい」と考えるようになりました。

地震の予測はまだ難しいですが、水害や台風なら予測が可能で、それによって人の命を守ることができる。その想いから本格的に気象予報士を目指し始めました。

小学校高学年時代の千種さん。エコ活動を行いながら、環境庁長官に温暖化対策を訴える手紙を書いたことも。

もっと遡ると、小学4年生のときの授業で「南太平洋にあるツバルという国が地球温暖化の影響で沈んでしまう」という内容の教材マンガを読み、ショックを受けたんです。

それを機に「こどもエコクラブ」に入って以来ずっと、環境問題への関心を持ち続けてきました。そういった背景も気象予報士を目指す際の後押しになった気がします。

―気象予報士を目指すことを決めてから、どのように勉強をスタートしましたか?

気象予報士を目指すと決めた当時、私は一般企業の会社員だったので仕事をしながら通信教育講座の教材で勉強をしました。

気象予報士の試験に合格するには理系の知識も必要なのですが、私は法学部出身で文系の道を進んできたこともあり、テキスト学習だけではなかなか理系の問題をクリアするのが難しくて……。

それでもできるだけの勉強はして試験に臨んだものの、残念ながら不合格となってしまいました。

―試験への再チャレンジに向けては気持ちの面でも立て直しが必要だと思うのですが……。

正直、このまま通信教育講座だけで勉強していても合格するのは難しいと感じて心機一転、気象会社のウェザーマップが運営する「気象予報士講座クリア」という予備校に通うことにしたんです。

10カ月間のコースで費用は約35万円。週1回の通学で授業は毎回2時間くらいでした。

一般的に気象予報士試験に受かるには1000時間の勉強が必要だと言われているのですが、予備校での授業はトータル100時間ぐらい。

つまり、10分の1は授業で勉強をするけれど、残りの10分の9=900時間は自分自身で勉強しないといけないということです。

びっしり書き込まれたノートは努力の証。試験直前も読み返していたのだとか。

―1000時間も!? ちなみに、その1000時間で勉強しなければならない試験科目はいくつあるのでしょうか?

気象予報士の試験には、学科試験の2科目(「予報業務に関する一般知識」・「予報業務に関する専門知識」)と実技試験の計3科目があります。

学科はマークシート、実技は記述式で実施され、学科の2科目両方に合格しないと実技の採点をしてもらえません。

計3科目と言うと少ないように聞こえますが、水蒸気や大気の仕組み、物理的な計算、気象に関する法律など、出題は多岐にわたります。

中でも理系の知識を要する問題は1科目の「予報業務に関する一般知識」の中に含まれているんです。理系問題が苦手という受験者には、1科目で早々に挫折する人も多いと聞きます。

―千種さんも文系のご出身とのことで、やはり「予報業務に関する一般知識」の部分では苦戦されましたか?

はい。特に熱力学という「THE 理系分野」の勉強がいちばん苦労しました。

でも裏を返せば、理系の問題ってここさえ克服すれば何とかなる、という考え方もできるんです。

文系出身の受験者の方で私と同じような不安を持っている人もいると思うのですが、なんとかここを乗り越えてほしいです。

―苦手分野を乗り越えてこその合格だったんですね! では、会社勤めをしながら、尚且つ幅広い科目を勉強できた秘訣があれば教えてください。

幸い残業はほぼ無い上、定時で終わる仕事だったので、平日は仕事が終わって帰宅してから勉強していました。

17時半に仕事が終わって18時に帰宅。18~19時夕食、19~20時お風呂、20~23時勉強というリズムが定番だったと思います。土日はまちまちですが4~6時間勉強していました。

もともとダラダラするのがあまり好きではないので、食事が終わったらお風呂、お風呂が終わったら勉強、という感じでリズムよくぱっぱっぱと。

予備校がある日はそれ以上勉強せず、生活のリズムを崩さないように無理なく取り組んでいました。

気象予報士試験には暗記が求められることも多く、覚えたい部分は時間を空けて3回以上見直すよう意識していたそう。

―予備校に通うようになり、2度目の試験で合格されたのですか?

はい、そうです。気象予報士の試験は半年に1度あるのですが、予備校に通い出してから数カ月後に受けた学科試験2科目の両方に合格しました。そして、その半年後に実技試験を受けて、そちらも合格しています。

―受験勉強をスタートして2年目で合格というのはかなり早い方ですよね?

そうですね。私の場合、勉強の環境が良かったことも受験がうまくいった理由だと思うんです。

気象予報士試験の合格率は5%ぐらいなのですが、その合格者の約10%が私の通っていた予備校の生徒だったようですし、予備校だけでなく自分に合ったテキストを選べた点も大きかったと思います。

しっかり選んで買ったというわけではなかったのですが、予備校で使う教科書とは別に、技術評論社の『らくらく突破シリーズ 改訂新版 気象予報士かんたん合格テキスト』というテキストを使って勉強していました。

このテキストは必要なことがミニマムにまとっている印象で、使用している単語も分かりやすい。

私が勉強をしていたのは10年前ですが、今でもとても人気のあるテキストのようなのでおススメです!

―試験当日の会場の雰囲気や気になったことなどはありましたか?

試験会場は、とにかくおじさんが多い!(笑)

気象予報士って若い女性のイメージが強い人も多いと思うんですけど、試験会場に行ってみて、意外と年配の方の割合が高いことに驚きました。

「気象予報士試験は難しい」と言われていますが、この試験を受ける人の中には気象予報士を目指しているわけではなく、「勉強が好き」「難しいことに挑戦するのが好き」という人もいるようです。

既に合格しているのに毎年試験を受けている〝資格マニア〟的な方がいるという話も聞いたことがあります。

気象予報士の勉強は確かに独特で大変ですが、計算問題から天気図の読み解き、気象法規など多面的な勉強が求められますし、やっぱり気象ってロマンがあると思うんです。なので、受験を楽しんでいる方の気持ちも分かる気がします!

広がりつつある気象予報士の活躍フィールド

―気象予報士資格を持っていると仕事の幅が広がるなどの利点はありますか?

もちろん、それはあります。いちばん分かりやすいのはニュース番組などでお天気を解説するお仕事でしょうか。

混同されがちですが、〝お天気お姉さん〟と〝気象予報士〟は似て非なるものなんです。

気象予報士の資格を取得して気象庁から予報業務の許可を得れば独自の天気予報を発表することもできます。

ただ、実際に個人で予報業務許可を得るのはハードルが高いので、基本的にはウェザーニュースや日本気象協会といった予報業務許可を得ている会社に入社して気象予報士として勤務する人が多いです。

最近は気候変動の問題が注目されているので、日々の気象予報だけではないニーズもあると思います。

例えば気候変動に伴う企業へのコンサルティングの仕事では「地球温暖化がこのまま進んでいくと、この先、こんな気候になるので企業にはこんなリスクがありますよ」といったお話をするんです。

―なるほど。千種さんも気象予報士の試験に合格されてから資格を活かしたお仕事に転職されたんですか?

はい。2013年に合格したあとにそれまで勤めていた会社を辞めて、NHK青森放送局で2年間にわたってお天気キャスターを務めました。

2016年、青森県弘前公園でのお天気中継の一コマ。

そこで実感したのは地方局の重要性が増しているということ。近年は災害が増えていることもあって、その土地の特性や気象予報や防災情報を届けられる「身近な気象予報」はその土地で生活する人にとって必要不可欠な情報です。

青森は雪深い地域なので、降雪情報を細かく解説したり、雪下ろしの注意喚起に工夫を凝らしたりと全国放送とは全く異なる構成で予報を伝えていました。

本当に必要な情報を、本当に必要な人たちに向けて届けることができるのは大きな強みなので、そういった観点からも地方局での気象予報士の採用や志望が増えていると聞きます。

その後はテレビ朝日『スーパーJチャンネル(土曜・日曜)』や、TBS『THE TIME,』などにも気象予報士として出演させていただき、地方局・全国放送の両方を経験することができました。

このような経験が気象予報士・お天気キャスターとしての自信につながりましたし、自分自身の視野を広げるきっかけにもなったと思います。


いかがでしたか?

テレビやニュースで身近な気象予報士という職業も、勉強目安時間は1000時間以上と資格取得までの道のりは険しいものでした。

その一方、千種さんをはじめとして、理系寄りの資格にもかかわらず文系出身でも資格を取得して活躍している方が多い職業でもあります。

「空を見るのが好き」「防災の面から地域に貢献したい」という方は、ぜひ気象予報士試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


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気象予報士の試験情報はこちらから

取材・文=君塚麗子
衣装提供=Dessin

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