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その歴史は約100年。赤レンガの建物を改装した「北区立中央図書館」で心落ち着く読書時間を

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その歴史は約100年。赤レンガの建物を改装した「北区立中央図書館」で心落ち着く読書時間を

きょうも図書館日和です。
全国の足を運びたくなる図書館を巡る企画。第3回は東京都・北区にある北区立中央図書館をピックアップ。

京浜東北線や地下鉄南北線が乗り入れる王子駅から閑静な住宅街を進んでいくと現れる「北区立中央図書館」。

北区立中央公園の一角に位置し、都内とは思えないほど自然豊かでのどかな空気が漂う。

約100年前の赤レンガの建物を改装しており、歴史の趣を感じながら過ごせるコチラ。その魅力をご紹介。

歴史に思いを馳せる、ノスタルジックな空間でのんびり

まず目を引くのは雰囲気たっぷりの赤レンガ造りの建物。

1919年に建設された建物を移管し、歴史を感じさせる面影はそのままに2008年に図書館として生まれ変わったそう。

中に入ってみると、赤レンガとガラスを取り入れた近代建築が一体化していることに驚く人も多いはず。

館内は1階が総合フロア、2階がこども図書館、3階がボランティアの事務局がある協働フロアという3層構造に。

目的によって利用者が自然とフロアで分かれるため、それぞれ気兼ねなく過ごせる。

1階フロアは、扉や窓から差し込む柔らかな自然光が心地いい。

窓に向かって座る閲覧席や書架の間のソファ席、パソコン利用コーナーにグループ研究室まで、さまざまなタイプの席を完備。

カフェのような雰囲気のフリースペース。画像1/3枚⇒緑豊かな中庭も一息つくのに最適。画像2/3枚⇒取材時にはトカゲも中庭でひと休みしていた。画像3/3枚


読書や調べものに疲れたら、広々としたフリースペースで休憩を。

自動販売機が備わるコチラでは、お弁当を食べたりドリンクを飲んだり、思い思いに過ごすことができる。

このほか、中庭やテラスなどでもひと休みが可能だ。

一般書架のスペースにその土台が展示されている「ラチス柱」は、日本初の官営製鉄所として明治に創業した八幡製鉄所で作られたのだとか。展示ではそれを示す刻印も見られる。画像1/2枚⇒天井には鉄骨トラスがそのまま残されており、ここがレンガ倉庫の中だと改めて認識させられる。画像2/2枚


外観だけではなく館内の至る所に歴史の面影が感じられるのも「北区立中央図書館」の特長。

レンガの刻印にはいくつかの種類が。館内の案内も参考に探してみたい。画像1/3枚⇒館内で発見した桜マークは、はっきりと刻印が見て取れた。画像2/3枚⇒外壁部分には「チ四」の刻印が。この「チ」は足立区江北および北区堀船にあった「千葉煉瓦製造所」を指す。画像3/3枚


赤レンガ部分の天井や柱には、当時の技術がそのまま残されているほか、壁のレンガに目を凝らせば、製造所が分かるように押された刻印も発見できる。

蔵書数は約43万冊。種類豊富な本が揃い、予約した書籍を即日受け取れることも

北区では地区図書館の本を共通の蔵書として扱っているため、常に各図書館を本が循環し、種類豊富にラインナップできるのだとか。


14館1分室ある北区立図書館の中でもメイン施設である中央館は、約43万冊を蔵書している。

北区の図書費予算は23区内で5本の指に入るほどで(1人あたり/令和5年度東京都公立図書館調査より)、北区立中央図書館だけでも一年間で約9万6000冊もの本が新書へと入れ替わっていくそう。

さらに、利用者が予約した本をほかの図書館へ送ったり、送られてきた本を仕分けたりする作業を1日2回実施。そのため、朝イチに予約すると早ければ夕方に受け取れる場合も。

ユニバーサルデザインや小・中学校との繋がりも。図書館が地域に開けた憩いの場に

一般書架は車椅子に座っていても手が届く高さに設定されている。書架間の通路の幅は車椅子と歩行者が無理なくすれ違うことができる1.3m。

「北区中央図書館」の特長をさらに挙げるならば、地域に開けた”場”であること。図書館が誰にとっても身近な存在であるよう、充実した設備ときめ細やかなサービスを展開している。

まず、”誰にもやさしい施設づくり”をコンセプトに掲げ、館内はバリアフリー設計だ。

エントランス付近の明るい窓辺には、本を拡大して読めるルーペや拡大読書器が備わる。拡大読書器は、ルーペを本に当てることで、画面に大きく文字を表示させることができる。本の読み上げソフト等を使用する場合にはサポート室を借りられる。


目の不自由な人向けには、拡大読書器が備わる席をはじめ、対面音訳室やサポート室といった個室も完備。必要なときにボランティアスタッフのサポートを受けられる。

2階のこども図書館は広々とした造り。赤ちゃん連れにも優しい休憩スペースも。


そのほか、小さな子どもを持つ保護者が図書館を利用するときのために、1時間無料の保育サービスが定期的に開催されるなど、親子連れでも気負うことなく訪れることができる。

また、積極的に地域の小・中学校と関わる活動をしていることも、図書館を身近にする要素の1つ。

図書館オリジナルの本『北区の歴史 はじめの一歩』を制作しており、毎年、区内の小学校3年生全員に無料配布を行っているのだとか。

さらに、小・中学校向けの貸出セットを用意していたり、教師から申し込みがあれば要望に応じて本を集めたりと、地域との繋がりを大切にしていることが伺えた。

渋沢栄一氏やドナルド・キーン氏など著名人ゆかりのコーナーは必見

新紙幣の1万円札に描かれている渋沢栄一氏。晩年は飛鳥山に邸を構えたそうで、北区はゆかりの地でもある。

1階奥に位置する「北区の部屋」には渋沢栄一氏に関する本も並んでおり、旧渋沢邸跡地に建つ「渋沢史料館」を見てから直通バスで「北区立中央図書館」にアクセスすることも可能。”渋沢翁”巡りをして1日楽しむのもおススメだ。

また、北区の名誉区民で北区アンバサダーの日本文学研究者ドナルド・キーン氏から寄贈された書籍や絵画を多数展示している点にも注目を。

「ドナルド・キーンコレクションコーナー」には、キーン氏の書き込みのある貴重な図書も。直筆のメモ書きに感動!

「ドナルド・キーンコレクションコーナー」では、寄贈された本をその場で読むことができる。

トートバッグの「黄犬」イラストは、キーン氏が幼い頃に飼っていた「ビンゴ」がモデル。美術家の上原木呂氏のデザイン。しっかりとした作りながら450円で購入可能。読書家のあの人への、ちょっとしたプレゼントにもぴったり。


コーナー隣のカウンターでは、キーン氏の愛犬が描かれたファイル(150円)や家紋をモチーフにしたトートバッグ(350円)など、オリジナルグッズの販売も。その場で購入できるのでお土産にぜひ。


ユニバーサルデザインで造られ、誰もが利用しやすい「北区立中央図書館」。

異国情緒あふれる赤レンガ倉庫を改装した心地いい空間だけでなく、さまざまな来館者をやさしく受け入れ、地域との繋がりも大切にする取り組みがとても素敵だ。

「北区立中央図書館」に訪れて、ぜひその魅力を体感してみては?

DATA
北区立中央図書館
東京都北区十条台1-2-5
開館時間:月~土9:00~20:00、日・休日9:00~17:00
休館日:第1・3・5月曜日(祝休日の場合は翌平日)
https://www.library.city.kita.tokyo.jp/viewer/info.html?id=1

取材・文=鈴木希

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