「世界遺産検定」1級の詩歩さんに聞く、死ぬまでに行きたい“開運”世界遺産3選
2006年にスタートして以来、累計受検者数が40万人を超える「世界遺産検定」。
その1級を取得し、自身も数多くの世界遺産を旅しながら絶景プロデューサーとしてツアー企画などを行う詩歩さんに今回教えてもらったのが、「死ぬまでに行きたい“開運”世界遺産」だ。
“開運”とは神秘的な意味だけではなく、「心身をリフレッシュして次なるステップへ進むパワーをもらう」こと。すぐに訪れるのは難しくても、美しい情景や奥深い歴史に思いを馳せるだけで心のリフレッシュになるはず。
学びビトの皆さんも、詩歩さんのエピソードから、目標達成へ向かうためのパワーを受け取ってもらえれば幸いである。
お話を伺ったのは……

絶景プロデューサー
詩歩さん
静岡県出身。「世界遺産検定」1級保持者。著書『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』シリーズが累計63万部を突破し、アジア等でも出版され大ヒット。SNSの総フォロワー数は100万人を超え、世界の絶景ブームを牽引する存在。現在は数多くの世界遺産を自ら旅しながら、独自の審美眼を活かしたツアー企画や地域振興、自治体の観光プロモーションなど、国内外で幅広く活躍している。Instagram:shiho_zekkei YouTube:詩歩の絶景vlog
開運世界遺産1
国宝の本殿を擁する「下鴨神社」
まず詩歩さんが紹介してくれたのは、京都市左京区に鎮座する「下鴨神社」。正式名称を「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」という。
1994年にユネスコの世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産として登録された、京都最古級の歴史を誇る神社だ。
その悠久の歴史を象徴しているのが、境内に広がる「糺の森(ただすのもり)」。古代からの生態系を色濃く残す約12万㎡もの広大な原生林で、日常の喧騒を忘れさせる静寂と瑞々しい生命力に満ちている。
樹齢200年以上の木々が約600本も存在する「糺の森」。
京都で暮らした経験もある詩歩さんは、この古都を象徴する世界遺産がもつ独自の開運効果を語ってくれた。
「京都に住んでいた頃、いろいろな神社仏閣や歴史ある場所を巡ったのですが、そのなかでも『ここは他とは何かが違う!』と感じたのが、『下鴨神社』でした。
街の中にあるのに、一歩境内に足を踏み入れるとガラッと空気が変わるんです。森に囲まれていて、歩いているだけで本当に全身がすーっと洗い流されて、綺麗に清められていくような感覚に。
自転車で行ける距離に住んでいたので、ちょっと疲れたとき、気分を変えたいときには、よくふらっと通っていました。それくらい、日常の中で心身を最高にリフレッシュさせてくれる、私にとっての大切なパワースポットです」(詩歩さん。以下同)。
訪れる者の心身を清め、新たな活力を与えてくれる「下鴨神社」。東西の本殿には賀茂建角身命と玉依媛命が祀られ、厄除けや縁結び、子宝、安産など、人々の暮らしを守る神社として信仰を集めてきた。
そうした厳かな歴史や格式の高さをもちながらも、訪れる人を飽きさせない楽しさがあるのも「下鴨神社」の魅力だと詩歩さんはいう。
「季節ごとに本当に素敵なお祭りや行事がたくさんあるので、いつ行っても新しい感動があって場所として純粋にすごく面白いんです。
例えば、夏のみたらし祭のときは、靴を脱いで冷たい池の中に実際に足を浸しながらロウソクを持って進むんですけど、神秘的な空気にすっぽりと包まれたかのような不思議な感覚に。
正式には、足つけ神事と呼ばれるみたらし祭り。平安時代の貴族が季節の変わり目に罪けがれを祓っていた風習が起源。ちなみに、おなじみの和菓子、みたらし団子は、この御手洗池(みたらしのいけ)に湧き出す水泡をかたどったものが発祥とされている。
毎年、夏の土用の丑の日の前後に行われる特別なイベントなんですが、五感を通じて邪気が払われるのを実感できるんです。
秋には満月を見ながら雅楽を聴くイベントもあったりと、日本の原点に触れられるような気がして、とても心が落ち着きます」。
こうして心身を清め、フラットな状態にリセットしたあとにぜひ立ち寄りたいのが、さらなる自分磨きのパワーをくれる場所だ。
下鴨神社の境内の一角には「河合神社(かわいじんじゃ)」が佇んでいる。女性の守護神である玉依姫命(たまよりひめのみこと)を祀り、古くから「日本第一美麗神」、つまり見た目も心も美しくなれる神社として有名。
「すごくユニークな鏡絵馬という手鏡の形をした絵馬があって、あらかじめ描かれている顔の輪郭に、自分が普段使っているコスメや色鉛筆を使ってメイクを施すんです。
自分の内面や外見の美しさを願いながら、お化粧をして奉納するなんて、ちょっとワクワクしますよね。
下鴨神社は、勉強や仕事で一歩前に進みたいとき、自分磨きのパワーをもらいたいときなどにぜひ訪れてみてほしいスポットです」。
開運世界遺産2
大轟音とともに地球の脈動を感じる「ビクトリアフォールズ」
心身を静かにととのえる京都から一転、続いて詩歩さんが紹介してくれたのは、地球のダイナミックなエネルギーを全身で浴びるような世界遺産、「ビクトリアフォールズ」だ。
最大幅約1.7km、最大落差約108mという規格外のスケールを誇り、巨大なザンベジ川の濁流が大地の裂け目へと一気に流れ落ちる様子は圧巻。
ジンバブエとザンビアの国境にまたがるこの滝(現地名:モシ・オ・トゥニャ)」は、1989年に世界自然遺産に登録されている世界三大瀑布の1つ。
現地語で「雷鳴轟く水煙」を意味する名の通り、激しい水飛沫は数百m上空まで舞い上がり、天気によっては数十km離れた場所からでも巨大な雲のように目撃できるという。
世界三大瀑布すべてを訪れた経験がある詩歩さんは、この滝が持つエネルギーをこう語る。
「イグアス、ナイアガラ、そしてこの『ビクトリアフォールズ』と世界三大瀑布を見てきた中でも、個人的には『ビクトリアフォールズ』が圧倒的だと思っています! とにかく『地球が裂けている』という表現がぴったりで、大地にできたものすごい巨大な溝に向かって、規格外の量の水がドババババって落ちていくんです。
見た瞬間、ありきたりな表現かもしれないですけど『人間ってなんてちっぽけなんだろう……』って、心の底から圧倒されました」。
そして詩歩さんは、世界遺産検定の勉強をしてから行くとさらに面白い発見があると話してくれた。
「実はこの滝は、水の激しい勢いで岩肌がどんどん削られていって、数万年から数十万年という長い歴史の中で、滝の位置自体が少しずつ上流へと移動し続けているんです。
今見ている滝の姿は、地球の果てしない活動が生み出した、まさに『今この瞬間だけの景色』なんだと知ったとき、景色への解像度がぐっと上がって、鳥肌が立つほど感動しました」。
そんな圧倒的なスケール感に加えて、詩歩さんをさらに魅了させたのが、アフリカの大自然を至近距離で体感できる極限のアクティビティだ。
「ビクトリアフォールズには、信じられないくらい激しいアクティビティ(デビルズ・プール)があるんです。落差100mの崖の本当にギリギリの場所に、天然の岩でできたプールがあって、そこに水着で入ることができるんですよ。もちろん命綱なんてありません(笑)。
現地の屈強なお兄さんに足を掴んでもらいながら、崖の下を覗き込むんですけど、水着が脱げそうになるくらいの激流と大轟音で、もう開運というレベルを通り越して、人生の価値観がガラッと入れ替わるような強烈な衝撃を受けました」。
話を聞いて想像するだけで思わず身震いしてしまいそうなエピソードだが、これほどの究極体験を求めるとなれば、やはり気になるのは行くまでの道のりだろう。しかし、旅のハードルが高そうに思えるアフリカだが、「ビクトリアフォールズ」はアクセスや宿泊環境も比較的良いという。
「アフリカというと行くまでが大変そうに感じますが、日本からはアディスアベバなどを経由してビクトリアフォールズ空港まで行くことができます。空港から滝までもタクシーで30分程なので、実は想像するよりアクセスしやすいんです。
最短だと、実質6泊8日くらいのコンパクトな日程でも十分に行けちゃいます。日帰りで隣国のボツワナにあるチョベ国立公園のサファリに行けるツアーなどもあるので、1回の旅行で『ビクトリアフォールズ』があるジンバブエとザンビア、そしてボツワナの3カ国を満喫できるのも最高です。
滝の周辺は観光地としても整備されているので、いわゆるラグジュアリーホテルから、時期にもよりますが1泊1〜2万円程度のリーズナブルで綺麗なホテルまで揃っていて、すごく旅がしやすい。
私にとっては、自分を打ち破る圧倒的な活力を得られた、忘れられない思い出ができました。気になる方は、行ってみてください!」
※デビルズ・プールは水位などの条件を満たした期間のみ、登録ガイド同行で体験可能。現地の最新情報や安全性を十分に確認し、参加する場合はご自身の判断でお楽しみください。
開運世界遺産3
海面の先に浮かぶ、祈りの聖地「モン・サン・ミシェル」
ラストを飾るのは、フランス西海岸のサン・マロ湾に浮かび、1979年に世界文化遺産に登録された「モン・サン・ミシェル」だ。
伝承によれば、西暦708年、司教オベールが大天使ミカエルから「この岩山に聖堂を建てよ」とお告げを受けたことが修道院の始まりとされる。干満の差が激しい湾内に佇むこの修道院は、海に浮かぶ幻想的な城郭のよう。かつては満潮時に完全に孤立する自然の要塞でもあった。
「世界で最も美しい」とも称されるこの聖地。過去にコチラを訪れている詩歩さんは、「世界遺産検定の勉強をする前と後とでは、この場所への印象がまったく変わった」と振り返る。
「実は私、初めて行ったときはただ『潮の満ち引きで鏡張りになる美しい景色を写真に撮りたい!』という目的だけで訪れたんです。そのときは正直、歴史や背景を全然知らないまま歩いていました。
でもその後、『世界遺産検定』の勉強をして、『そもそもなんであんな不便な海の中にポツンと修道院が建てられたんだろう?』という歴史を深く掘り下げたとき、『もっと早く知っておけばよかった!』と衝撃を受けたんです。
昔の人にとって、信仰のための祈りの場所というのは、人里離れた厳しくて険しい場所であるほど尊い存在で、だからこそ、あの海に囲まれた孤島が神聖な場所として長い歴史を紡いできたんですよね。
その歴史を知った今、当時の写真を見返したり記憶を辿ったりすると、ただ綺麗だなと思うだけでなく、当時の人たちの信仰心の深さや、極限の環境で祈りの対象であり続けたパワーが、建物の石の1個1個からダイレクトに伝わってくるような気がしました。次に訪れるときは、また全く違う深い感動に包まれるはずです」。
モン・サン・ミシェルは、中世には要塞としての役割も担い、フランス革命後に修道院が廃止されると、1863年まで監獄として使われた歴史を持つ。時代の荒波に揉まれながら、中世の建築様式が複雑に重なり合うような現在の建築群が築かれていったのだ。
そうした激動の歴史は、建造物だけでなく、私たちが何気なく口にする食にも色濃く残っているという。
「『モン・サン・ミシェル』に訪れる観光客のほとんどが味わう名物の大きなオムレツは、昔の巡礼者たちが命がけで荒波を越え、疲れ果てた状態でようやく辿り着いたとき、彼らを迎え入れる島の人たちの『栄養をつけてほしい』という思いやりから生まれた料理だという説もあるんです。
そんな歴史のバックストーリーを知ってから食べるオムレツは、ただ美味しいだけでなく、当時の人たちの温かい心まで伝わってくるように感じられて、胸がジーンと熱くなりますよね。
かつての巡礼者たちが困難な道のりの末にこの美しい景色にたどり着いたように、『モン・サン・ミシェル』は壁を乗り越えた先にある希望の象徴のような場所。だからこそ、新しい何かを懸命に頑張りたい人や、叶えたい大きな目標に向かって一歩を踏み出したいという皆さんに、ぜひ訪れてパワーをもらってほしい開運スポットですね」。
今回詩歩さんが紹介してくれた3つのスポットは、どれも圧倒的なスケールや深淵な歴史が持つエネルギーに満ちた場所だった。
ただ綺麗という枠を超え、降り立つ人の常識や固定観念も心地良く揺さぶる世界遺産。そんな心震える“開運”の地を訪れて、次なる目標への挑戦、そしてその先にある人生の新しい扉をひらくパワーを、全身で受け取ってみてはいかがだろうか。
NPO法人世界遺産アカデミーが主催する、人類共通の財産である世界遺産を通して国際的な教養を身に付けるための検定。難易度は4級、3級、2級、1級、そして最高峰のマイスターの5段階に分かれる。
受検者は「旅行や世界遺産が好き」という学生から社会人まで幅広く、累計受検者数は2025年時点40万人を突破。体系的に学ぶことで地理や歴史の知識、国際情勢への解像度も高めることができる。
大学入試での優遇措置をはじめ、旅行・観光業界への就職活動のアピールに活かせるほか、ビジネスシーンでの会話のきっかけや、プライベートの旅を何倍も深く楽しむための大人の教養としても人気を集めている。
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文=吉川 雄介













