勉強中の「飽きた・眠い」は脳疲労のサイン。睡眠のひと工夫で解消を!【勉強効率アップの秘訣 Vol.2】
勉強効率を上げる方法 #〇〇と勉強のかんけい。 この記事をあとで読む
忙しい毎日の中で、試験勉強の時間をなんとか確保したものの、思うようにはかどらない……。
「そう感じたときは、脳が疲弊してSOSを発している状態」と言うのは『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)などでおなじみの脳科学の権威、梶本医師。
脳疲労の蓄積は、勉強効率を下げるだけでなく、心身に不調をもたらす恐れもあると言います。
資格・検定の取得や目標を叶えるためにも、脳疲労は放置せず、早いうちに解消しておきましょう。
第1回【医師が脳のメカニズムを解説】
第2回【勉強中の「飽きた・眠い」は脳疲労のサイン】……今回はコチラ
第3回【頭をフル回転させる最強の飲み物】
第4回【勉強効率アップのための最強食材!】
第5回【勉強に適した時間帯は朝?夜?】
第6回【脳疲労を加速させる間違ったリフレッシュ法】
話を伺ったのはこの方
医師・医学博士 梶本修身さん
大阪市立大学医学部COE生体情報解析学教授、同大学医学研究科疲労医学教室特任教授などを歴任後、東京・新橋に「東京疲労・睡眠クリニック」を開院。脳科学のオーソリティとして、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)をはじめ、数々のテレビ番組や雑誌などメディアからのオファー多数。自らプログラム作成したニンテンドウDS『アタマスキャン』は30万枚を超えるベストセラーとなり“脳年齢ブーム”を起こした。著書に『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)など。
脳からの3つのSOSを見逃すな!
ダルい、動きたくないなど、身体の疲労は実感しやすいけれど、脳疲労は一体どんな自覚症状があるのでしょうか。
梶本医師いわく、身体疲労よりもむしろ脳疲労のほうが明確に兆候が現れるのだそう。
「脳が疲れ始めたときに現れる、3つの兆候があります。
最初の兆候は『飽きる』。
今していることや考えていることから1回離れたい、興味が他に移るーー。脳は、1カ所の神経細胞の領域だけを酷使することを避け、違う脳の領域を使うよう試みます。
これが『飽きる』という現象なのです。
ここで無理をして同じ作業を続け、脳を酷使しすると第2段階の『眠くなる』ゾーンに入ります。つまり、疲れた脳が自ら“強制終了”して休もうとしているのです。
その強制終了を遮って勉強を続け、脳を働かせても『パフォーマンスが落ちる』のは当然。
思ったように進まない、頑張っていてもミスばかりするし眠くなる……。これはあなたの行動への脳からの抵抗なのです」(梶本医師。以下同)。
第3段階の「パフォーマンスが落ちる」の症状が出るということは、脳はキャパオーバー状態。
つまり脳疲労としてはかなり重度となり、この段階では、自律神経が誤作動し、体調に問題が生じることもあるのだそうです。(←詳しくは、第1回の記事へ)
第1段階の「飽きた」を勉強効率ダウンのサインと考え、いったん勉強から離れる。そうやって効率よく勉強を進めていくのが賢い大人の勉強法といえそうです。
脳疲労のサインが出たらどうすべき?
勉強を頑張りたい気持ちとは裏腹に、先述した脳疲労の兆候が現れてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。
「“脳を休ませる”というのは、脳を極力使わない状態にすることです。
勉強や仕事をストップするだけでなく、耳や目からの情報をシャットダウンする。つまり睡眠を取れば良いのです」。
なるほど。眠るだけ、という簡単な方法で安心しましたが、眠っている間も脳は働いている、という話も耳にします……。
「例えば、起きている間に得た情報は、レム睡眠中に脳内で整理されるため、睡眠中も自律神経を含む脳自体が完全に休めていないのは確かです。
ですが、自律神経を酷使する必要のない快適な環境でかつ、新しい情報が入ってこなければ、脳はゆっくりと処理することができるため、オーバーワークもヒートアップも起きません。
脳の温度が上がらなければ、『脳の温度を下げて脳を守れ!』という指令を、脳の一部である視床下部で出さなくて済みます(←詳しくは、第1回の記事へ)。
つまり、新しい情報が入りにくい睡眠中は、脳の活動は生命を維持する最低限のレベルで良いので、脳疲労は回復し、溜め込むこともなくなるのです」。
とにかく、極力、脳を使わせないようにすれば良いので、脳疲労のサインが出たら、勉強をまずは中断。できる限り静かで暗いところで、しばらくの間、目をつむるだけでも、効果はあるのでぜひ実践してみましょう。
光をシャットアウトするアイマスクと、音をシャットアウトする耳栓を用意しておくと良いかもしれませんね。
良質な睡眠の敵は「暑さ」と「光」
脳を休ませ、疲労をため込ませないよう、日々の良質な睡眠も必要不可欠なようです。
「ただ眠るだけではダメ。時間より質が重要となります。少ない睡眠時間しか確保できないのであれば、なおさらですね。
良質の睡眠を続けていけば、脳疲労を起こしにくい状態に保てるでしょう」。
第1回でお伝えしたように、脳疲労は脳の温度が高くなってしまうことが原因。
「寝ている場所の温度が高すぎると、それに伴い体温も脳の温度も高くなってしまいます。
ですので、寝室を24~26度位の適温に設定する、これはとても重要です。
また、閉じた瞼を通して脳が光を感じると、身体を活動させようとするホルモンが分泌してしまうので、寝室は“真っ暗”が鉄則」。
脳をしっかり休ませるためには、質の良い睡眠がとれる環境づくりは大切なのですね。季節を問わず適温をキープし、電気はすべて消す。できることから取り入れてみましょう。
もうひとつの敵「いびき」対策は専門家に任せるのが◎
梶本医師いわく、良質な睡眠を妨げるもうひとつの敵は、いびきだと言います。
睡眠中にいびきをかく人は、睡眠中の鼻腔や喉の状態によって、空気を吸う量が減っていることが多いそうです。
「いびき中の脳は、酸欠にならないよう自律神経に働きかけ、なんとか呼吸させようとします。
このときの自律神経は、激しい運動をしているのと同じ状態。これでは、寝ている間に脳疲労が回復しないどころか、蓄積してしまいます」。
いびきが脳疲労回復において負のスパイラルを巻き起こしてしまうことは間違いなさそうですね。いびき解消法を聞いてみましょう。
「いびきをかく人は、横向きの体勢だと呼吸がしやすくなります。
大阪市立大学医学研究科疲労医学教室の研究では、仰向き寝を横向き寝に変えることで、8割以上の人においていびきが半減することが分かりました。
軽度のいびきであれば、横向きになったときに首から肩までの高さで頭を支えられる枕や、横向きの体勢で寝やすくなる抱き枕のようなものを使うと、いびきが半減し、“質のよい睡眠”に変わるはずです」。
横向き寝はすぐに取り入れられそうですが、それでも改善しない場合は……。
「いびき外来や専門クリニックに相談するのがおススメです。
健康保険適用(3割負担なら3000円程度)で、睡眠時無呼吸といびきの検査を受けることができ、個々のライフスタイルに合った解決策を提案してもらえます」。
たかがいびき、と侮らずに専門家のアドバイスをもらうのが賢明のようです。
脳がオーバーヒートしないよう、質の良い睡眠を取り入れて、脳疲労の回復に努めたいものですね。
次回は、脳科学の観点から、勉強効率を上げる最強食材をお伝えします!
第1回【医師が脳のメカニズムを解説】
第2回【勉強中の「飽きた・眠い」は脳疲労のサイン】……今回はコチラ
第3回【頭をフル回転させる最強の飲み物】
第4回【勉強効率アップのための最強食材!】
第5回【勉強に適した時間帯は朝?夜?】
第6回【脳疲労を加速させる間違ったリフレッシュ法】
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取材・文=秋葉樹代子