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「人間は集中力が続かない生き物」医師が脳のメカニズムを解説【勉強効率アップの秘訣 Vol.1】

勉強効率を上げる方法 #〇〇と勉強のかんけい。

「人間は集中力が続かない生き物」医師が脳のメカニズムを解説【勉強効率アップの秘訣 Vol.1】

「試験日も近づいてきたし、最後の追い込みを!」と、意を決して机に向かったものの、集中力が続かない、勉強に飽きてしまった、という状況に心当たりがある人も多いのではないでしょうか。

もっと効率的に勉強に取り組めたらいいのに……、そんな皆さんの切なる想いを叶えるべく、脳科学のスペシャリストである医師に徹底取材しました。

脳科学の視点から、暗記の最適解や効率良く脳を働かせる方法などを5回に分けてお届け。

第1回は集中力の話。「集中力はなぜ続かないのか」この部分にフィーチャーします!

話を伺ったのはこの方

医師・医学博士 梶本修身さん
大阪市立大学医学部COE生体情報解析学教授、同大学医学研究科疲労医学教室特任教授などを歴任後、東京・新橋に「東京疲労・睡眠クリニック」を開院。脳科学のオーソリティとして、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)をはじめ、数々のテレビ番組や雑誌などメディアからのオファー多数。自らプログラム作成したニンテンドウDS『アタマスキャン』は30万枚を超えるベストセラーとなり“脳年齢ブーム”を起こした。著書に『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)など。

そもそも人間は集中しないほうが良い!?

勉強効率を上げたい、と考える皆さんはそもそも「集中しないと勉強が捗らない」なんて考えに縛られてはいませんか?

梶本医師いわく「そもそも人間は、生理学的にあえて集中しないようにできているんです」とのこと。

しょっぱなから衝撃の事実ですね!


「野生動物の生態を例に挙げてみましょう。

サバンナで獲物を狩ることだけに集中していたら、その他の動物から自分が狙われていることに気付けない。つまり、集中することは、生物にとって命のリスクを伴うのです。人間とて同じこと」(梶本医師。以下同)。

現代社会で生きる人間が集中したところで、サバンナのような命の危険があるとは思えませんが……。

「いえいえ、例えば、車の事故は前を見て運転に集中しているときのほうが起きやすい。

運転中、視覚にだけ集中すると、横からの飛び出しなど今後起こりうるリスクを想定できずに事故が増えるのです。

大切なことは集中するのではなく、注意をうまく配分すること。そうすれば、脳の神経細胞にかかる負担を減らすことができます」。

むしろ、事故を防ぐために集中しなくてはいけないと思っていた人も多いはず。では一体、集中しているときは、どのような状態なのでしょうか……。

「集中すればする程、脳神経細胞は活発になり熱を発します。やがてオーバーヒートし、脳のパフォーマンスを落とす。

このような状態を防ぐために、1点に集中することを避け、情報を俯瞰的に捉えることが大切になります。

要領良く情報処理する工夫が必要なのです」。

例えば、英単語を覚える場合、ひたすら書くことを続けるより、声に出して音で覚えたり、実際に使うシーンをイメージしたり……と、さまざまな方法で取り組んだほうが効率的なのだそう。

脳をオーバーヒートさせないためにも、勉強の工夫は必要というワケですね。

勉強に集中=脳は危機警報を身体中に発令


身体の中で単位体積当たりで最も発熱する器官はどこか分かりますか? それはズバリ、脳なのだそう。

「集中しているときは、自律神経を主として脳を活発に動かしているので、脳温度の上昇が加速します。ゆえに、脳を使う際は常に脳を冷やす必要があるのです」。

脳を冷ます……。では、額に冷感シートなどを貼れば良いのでしょうか?

「残念ながら、そのような方法では熱は逃げません。脳を冷ますのに必要なのは冷たい空気です。

冷たい空気は、鼻から鼻腔を通って吸い込まれますが、その際、鼻腔の上にある自律神経の中枢(視床下部)と熱交換を行い、脳を冷やすことができます」。

よく鼻が詰まるとボーッとすることありますよね。あれも、鼻から冷たい空気を吸えず、脳が熱を持ってしまうから。

「ですので、鼻から冷たい空気が吸えるよう、勉強中は室温を低めに設定することが重要です。

湿度50%程の場合、脳にとって最も快適とされる最適室温は、18~22度程(冬場は18度、夏場は22度)。

私はこの室温が保たれた部屋で仕事をします。この温度は脳の冷却にはベストなのですが、身体には寒すぎるので、ダウンやマフラーを着用することも(笑)」。

頭寒足熱で、部屋は涼しくして脳を冷やし、身体は温かくすることで、勉強&仕事効率を高めていきましょう!

「脳疲労」を放置すると身体を壊す可能性も

「身体が疲れているときは、思うように身体を動かせませんね。それは脳も同じこと。

脳が上手く冷やされず、活発に活動し続けると、『脳疲労』状態になることもあります」。

さらに恐ろしいことに「脳疲労」ーーすなわち、自律神経の機能が低下すると、勉強効率がダウンするだけでなく、精神や身体に影響を及ぼすこともあるのだとか。


「実際、身体中への指令の誤作動による自律神経の乱れが病気の引き金になっている場合も

倦怠感に限らず、頭痛、めまい、鬱症状、下痢や便秘、さらには高血圧や心筋梗塞のリスクも高めます」。

勉強に集中することだけにこだわっていると、精神や身体にまで影響を及ぼすこともあるとは……。「鼻は脳の冷却装置」ということをくれぐれも忘れずに。

“集中”は大人のものではない!

「脳科学的にいうと、“集中”は子どもがすることで大人がすることじゃない」と梶本先生。


「例えば、大好きな『アンパンマン』の動画を食い入るように観ている小さな子どもに、親が声を掛けても全く気付かないことってありますよね。

そのときの脳波を測ったデータがあるのですが、アンパンマンが敵をやっつけるためにアンパンチを繰り出すクライマックスで、fmΘ(エフエムシータ)波という波形が出るんです。

しかしこの波形は、ほとんどの子どもが、小学校高学年位になると出現しにくくなります。

成長していくと、脳がオーバーヒートにより『脳疲労』状態にならないように、注意を分散させ“集中”しないようになっていく、というワケです」。

“集中”できないのは成長の証というワケ。うれしいのか悲しいのか……。

梶本先生には「脳疲労」になってしまった場合の解消法や効率の良い勉強法も聞いていますので、次回以降をお楽しみに!



取材・文=秋葉樹代子


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