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借金300万円からサイドFIRE達成へ。「FP」資格が変えた元広告マンの人生逆転ストーリー【シカクがキッカケ】

インタビュー #シカクがキッカケ

借金300万円からサイドFIRE達成へ。「FP」資格が変えた元広告マンの人生逆転ストーリー【シカクがキッカケ】

【シカクがキッカケ】
資格はただのスキル習得ではなく、“別の地図”を手に入れることかもしれない。資格を取得したことで、それまでとは異なる方向に人生の舵を切った人たちにフォーカスするインタビュー連載。

資格を取得したことで、大きく人生が変わった人にフォーカスする「シカクがキッカケ」。今回は、博報堂からマネーフォワードを経て、現在は個人投資家としてサイドFIRE(※)を達成し、“FP YouTuber”として活躍中の秋山 芳生さんにインタビュー。

リボ払いで300万円の借金を抱えていたところから、どのように配当収入で生活できる資産を築き、サイドFIREを達成したのか? そのきっかけとなった「FP」資格について聞いた。

※サイドFIREとは、資産運用からの不労所得と、副業などの労働収入を組み合わせて生活するライフスタイルのこと。

結婚を機に、初めてお金と向き合った

──秋山さんは現在サイドFIREを達成されていますが、かつては借金があったとか。

そうなんです。今でこそ配当収入と週数回程度の仕事で生活していますが、10数年前、36歳の時点では300万円の借金がありました。

──なぜそんな額の借金ができてしまったんですか?

新卒で、広告代理店の博報堂に就職。洋服や飲み代、漫画……何も気にせずお金を使っていたんです。漫画は3,000冊もっていたし、モンクレールのダウンを当たり前のように買って。音楽が趣味で、シンセサイザーやドラムなどの楽器も持っていました。マンションも買いましたが、「なんとかなるさ」と思いながら、リボ払いの残高だけが雪だるま式に増えていく状態。

今思えば、「贅沢している」という自覚がありませんでした。「みんなも着てるし」「漫画くらい買ってもいいじゃん」って。でも、買っても買っても満たされないからまた次を買う。完全にお金に振り回されていました。

──どうやって借金から抜け出したのでしょうか。

結婚を決意したとき、「これはマズいぞ」とようやく気付きまして‥…。結婚指輪も買えないし、結婚式もできない、プロポーズすらできないなと。

その頃、家計簿アプリ「マネーフォワード」と出会いました。口座とクレジットカードを連携することで家計全体を把握することができ、自分が何にお金を使っているかが初めて分かったんです。

そこで、もっていた物を片っ端から売りました。半年で借金をゼロにして。結婚指輪も無事に買えましたよ(笑)。

この経験で、お金を管理することの大切さを身をもって知りました。借金があるって、すごく嫌なんですよ。何をしても心からは楽しめない。常に不安がまとわりついていました。

マネーフォワードに転職、働きながら「FP」資格を取得

──マネーフォワードに救われて、その後転職されたんですね。

博報堂の後、インターネット広告代理店のアットコスメで事業開発を担当し、上場も経験。そのタイミングでマネーフォワードが家計簿事業の事業責任者を募集していて、「自分を救ってくれた会社で働きたい」と転職を決意したんです。

3年で上場させるまでに成長させることができました。

──「FP」資格を取ろうと思ったきっかけは?

マネーフォワードで開催した、とある人気ファイナンシャルプランナーの方の講演です。とにかく目からウロコの「お金の現実」が分かりました。

一般的には、資産や補償は多ければ多い程いいと思いませんか? でも違うんですよ。

例えば、子どもがふたりいる4人家族で、夫が亡くなった場合、国からの遺族年金はいくら支給されると思いますか?

──1,000万円くらいでしょうか?

それが、実は5,000万円くらい支給されるんです。でも、1,000万円くらいだと思っている方が大半で、必要以上の保険に入っていることが多い。例えば、所得補償のような保険に、毎月2,000円で十分なところ、倍の4,000円払っているケースも。そうなると、年間2万4000円を無駄にしてしまうことになります。

講演中にファイナンシャルプランナーの方から、「あなたたちは国の制度をナメすぎです!」と言われて、「格好イイっ」と感激しました(笑)。自分の借金経験も重なり「知識がないとお金に立ち向かえない」と痛感して、「FP」資格取得を決めました。

──働きながら「FP」資格取得に向けた勉強は大変だったのでは?

全然苦ではありませんでした。税金の仕組みや不動産の知識、保険の選び方……全部自分の人生に直結する内容でしたから。むしろ楽しかったくらい。

仕事をしながら1日2〜3時間、朝晩や土日に勉強しました。参考書とYouTubeを活用し、過去問をひたすら解く独学スタイルで。3級は1カ月程、2級は3カ月程で取得できました。

年間1,000回の相談でみえた「家計が結婚していない」夫婦

──マネーフォワード時代に、家計再生コンサルタントの横山 光昭さんと、お金の相談窓口「mirai talk(ミライトーク)」を立ち上げたのですね。

マネーフォワードで学んだことをファイナンシャルプランナーとして直接個人に届けたいと思い、新宿に対面相談の店舗をオープン。年に1,000回以上のファイナンシャルプランニングの相談を受けました。

──印象的だった相談はありますか?

相談に訪れた不妊治療中のご夫婦15組が、次々と妊娠されたことです。

今は約7割が共働き世帯。家計を別々に管理していて、お互いの収入を知らないこともあります。家計がバラバラで、そこを共有できていないご夫婦が、お互いに家計を可視化してゴールを設定すると、本当のパートナーになれるんです。

家計が結婚する――つまり、“2人のもの”として家計を考えられるようになることで、夫婦仲が良くなり、結果的に子宝にも恵まれたんだと思います。ファイナンシャルプランナーとしての知識は、お金だけでなく人生全体を良くできると実感しました。

「FP」の知識は「人生を豊かにする」ための道具

──その後、葬儀会社「よりそう」で働かれたんですね。

父が医師として終末期医療に携わっていて、妹も臨床心理士をしています。人の心や人生に向き合う家族の姿を見て育ちました。それで、葬儀会社からの転職のお誘いを受けることにしたんです。

葬儀会社では、実際の葬儀に参列して、多くのお亡くなりになった方々をお見送りしてきました。

とある葬儀で、故人様が本当に周りの方々から偲ばれていて。とくに印象的だったのが、「おじいちゃん、いつも『頑張れ』しか言わなくて喧嘩したけど、おじいちゃんのおかげで県大会で優勝しました」という、中学生のお孫さんによるお別れの言葉。参列者は皆号泣で、スタッフの私も泣いてしまって。

温かい別れに包まれた故人様の人生を見て、「俺、このまま死んでいいんだっけ?」と、これまでがむしゃらに働いてきた日々を振り返りつつ、これからの人生を考えるきっかけになりました。

ちょうどその頃、「mirai talk」で家計相談を担当させていただいた不妊治療中の16組目となるご夫婦から「妊娠しました」という報告が届き、ファイナンシャルプランナーとして1つの区切りをつける決心が固まったんです。50歳前に自分の人生そのものを謳歌しようと、2023年にサイドFIREすることに決めました。

──現在はどのような生活を?

マネーフォワード上場時のストックオプションを元手に、ファイナンシャルプランナーの知識を活かして投資をしていたので、現在は配当収入で生活。完全にリタイアしたわけではなく、ライフワークとしてファイナンシャルプランニング相談を週に数回受けています。

──最後に、「FP」資格は秋山さんにとってどんな存在ですか?

人生を変えてくれた資格です。一番大きいのは、お金をコントロールする側になれたこと。死ぬときに莫大な資産を持っていても仕方ない。自分の人生を充実させるためにお金をコントロールすることが大切です。

「FP」の知識は仕事のためだけではありません。まず自分のために学んでみてほしい。人生設計ができるようになることに、大きな価値があります。


秋山さんの人生を変えたのは、お金の知識と実践する勇気だった。現在はYouTubeチャンネル「FPよしおさんちゃんねる」で情報発信もしている。

次回は、秋山さんがこれまでに担当したファイナンシャルプランニング相談から見えてきた、「日本人がお金ともっと仲良くなるべき理由」について深掘りしていく。

お話を伺ったのは……

秋山 芳生さん
立教大学卒。博報堂でキャリアをスタートし、2014年から株式会社マネーフォワードに参画し本部長としてマネーフォワードMEの事業責任者となる。家計再生コンサルタント横山 光昭氏とお金の相談窓口「mirai talk」を立上げ、ファイナンシャルプランナーとして年間1,000回以上の家計相談を受ける。現在は個人投資家としてサイドFIREを達成するとともに、FP YouTubeとして家計改善やライフプランニング、資産形成の情報配信やオンライン面談などマルチに活動している。

この記事の連載
◆「FP」資格が変えた元広告マンの人生逆転ストーリー……今回はコチラ
◆日本人がお金ともっと仲良くなるべき理由

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文=かたおか 由衣 
イラスト=めい

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