加トちゃんの病気を早期に察知できたのは「介護資格のおかげ」。加藤綾菜さんが語る学びの極意
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介護の資格は、介護関係の人が取得するものーーそう思っている人は少なくないだろう。しかし、タレントの加藤 綾菜さんは「介護の知識は日常生活のあらゆる場面で役立っています」と語る。
今回は加藤さんの経験をもとに、介護の学びから得られるメリットとその可能性を紐解いていく。
【加藤 綾菜の“私らしい介護”のカタチ。愛する人を支えるための学び】
愛する夫・加藤 茶さんを支えるために数々の介護資格を取得してきたタレントの加藤 綾菜さん。資格取得を通じてどんな学びや発見があったのか。本連載では、加藤さんの実体験から介護と向き合うすべての人に役に立つヒントをお届け。
夫の“自立”が一番の喜び。生活を変えた「ユマニチュード」の考え方
そうですね。資格を通して得た学びは、直接的な介護の場面だけでなく、日々の暮らしのあらゆるところで役立っていると感じています。
特に印象的で、今も日常でよく思い出すのは、フランスで生まれたケアの哲学「ユマニチュード」という考え方です。日本の介護は、どうしても“やってあげること”が美徳とされがちです。しかし、「ユマニチュード」の考え方は“その人が人間らしくいられるように尊重すること”を大切にしています 。
友人に招待されて、加トちゃんと一緒にご飯に行ったときのお写真。おそろいのセーターが素敵(加藤さんよりご提供)。
“やってあげる”ほうが、その時はラクかもしれません。でも、そうすると、本人が自分でできることが少なくなっていき、老化が進んでしまって、数年後には、自分がやりたいと思っていることすらできないかもしれない。だから、本人ができることを私がとらないようにしないと思って。ちゃんと本人に任せて、見守るようになりました。
ただ、今まで私がやっていたことを急に任せてしまうと、相手も戸惑ってしまいます。大事なのは「自分でやりたい」と思えるようにサポートすること。そのために、どうすれば安心して心を開いてもらえるかを考え、コミュニケーションを大切にするーー。これが「ユマニチュード」から学んだ一番の気づきでした。
勉強のおかげで「老い」への不安がなくなった
はい。愛犬のお世話をお願いすることにしたら、モチベーションもわくみたいで。最近では、自分で餌を買いに行くようになったんです。そうしたら、人に見られることに気付いて、服装にも気を遣うようになって。
一時期はあまり見た目を気にしなくなっていましたが、今では10日に1回は美容院に行っていますし、下着なんかも自分でデパートに買いに行くんですよ。
どんどんアクティブになって、私が仕事で留守のときに、私の友人でタレントの鈴木 奈々ちゃんと2人でご飯に行っててビックリ(笑)。加トちゃんが生き生きしている姿を見られるのが、何よりうれしいですね。
そうなんです。私自身、資格を取ったことで、自分の行動も変わって、それが結果的に加トちゃんの生活も変えていった。加トちゃんが倒れたときに不安に感じた「老い」についても、最近は肯定的に受け入れられるようになった気がしています。
というのも、加トちゃんが倒れてから、老いていくことにどこか恐怖を感じていた自分がいて。でも、きちんと勉強して、色々な方々のケースを知ることで、年を重ねていく加トちゃんのすべてを受け入れられている自分に気づきました。
資格勉強で得た知識のおかげで、加トちゃんの病気を事前に察知
それはもう、たくさんあります。最近取った「介護予防運動指導員」の資格の勉強をしていたときのことですが、授業で「心不全」について学んだんです。 そしたら「あれ、これ加トちゃんに当てはまるかも」って。
家に帰って足の状態などをチェックしてみたら、やっぱり前兆が見られて。すぐに病院に行ったら、まさに心不全の一歩手前でした。薬ですぐに良くなったのですが、知らなかったら見過ごしていたかもしれません。
フルーツを食べやすいサイズに切ったり、カロリーメイトを細かく砕いてアイスクリームの上に載せたりするなど、さまざまな工夫を凝らしているという。
もちろんありました。「介護食アドバイザー」の資格も持っているのですが、そこで学んだ知識が本当に役立っています。
例えば、減塩が必要なとき。野菜を細かく切ると味が薄く感じてしまうのですが、大きめにカットすると調味料がつく面積が増えて、味をしっかり感じられるんです。
そういった、ほんの些細な工夫ですが、知識があるだけで食事の満足度がまったく違ってくるなと実感しています。
自分の世界が広がる。街で困っている人に手を差し伸べる勇気
一番は、自分に自信がついたことですね。昔だったら、街で車椅子の人や困っている障害がある方を見かけても、どうしていいかわからなくて、見て見ぬふりをしてしまっていたかもしれません。
でも今は、「何かお手伝いしましょうか?」と率先して声をかけられるようになりました。
そうですね。ボランティアで認知症の方のお宅に伺ったりもするのですが、そういう活動を通じて、自分の世界もすごく広がりました。
病気になって、あまり外に出なくなってしまった友人を、ランチに誘えるようにもなったんです。もしものことがあったときに、どう対応すればいいか分かるから。友人も喜んでくれて、そういったときに「資格を取って良かったな」と改めて感じます。
介護の学びって、誰かのためだけじゃなく、自分の人生を豊かにしてくれるものなんだと思うんです。
介護の知識は、愛する家族の日常を支え、健康を守り、さらには綾菜さん自身の世界を広げるきっかけにもなっていた。
次回は、親やパートナーの変化が気になり始めた読者に向けたアドバイスを伺う。
お話を伺ったのは……

加藤 綾菜さん
1988年広島県生まれ。23歳のとき、当時68歳だったタレントの加藤 茶さんと結婚。夫を支えるために、「ヘルパー2級」(現:「介護職員初任者研修」)や「ヘルパー1級」(現:「介護福祉士実務者研修相当」)、「介護食アドバイザー」、「介護予防運動指導員」など数々の資格を取得。現在は、ボランティアで介護を行うほか、講演や執筆活動などマルチに活躍する。Instagram:@katoayana0412, YouTube:加藤家の日常
【加藤 綾菜の“私らしい介護”のカタチ。愛する人を支えるための学び】
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撮影=河野 優太
文=SUGARBOY