愛する夫・加藤茶の食道破裂時も「介護資格」があったから乗り越えられた
インタビュー #気になるあの人を深堀り この記事をあとで読む

【加藤 綾菜の“私らしい介護”のカタチ。愛する人を支えるための学び】
愛する夫・加藤 茶さんを支えるために数々の介護資格を取得してきたタレントの加藤 綾菜さん。資格取得を通じてどんな学びや発見があったのか。本連載では、加藤さんの実体験から介護と向き合うすべての人に役に立つヒントをお届け。
結婚当時、加藤 茶さん68歳、加藤 綾菜さん23歳。45歳という年の差で結婚したとはいえ、当初は「介護なんて他人事だと思っていた」と、綾菜さんは語る。だが、ある日パーキンソン症候群と診断された夫・加藤 茶さんを前に「付き添うだけ」しかできない自分に限界を感じたのだそう。
資格取得という一歩が、2人の未来をどう変えていったのか、その原点に迫る。
お話を伺ったのは……

加藤 綾菜さん
1988年広島県生まれ。23歳のとき、当時68歳だったタレントの加藤 茶さんと結婚。夫を支えるために、「ヘルパー2級」(現:「介護職員初任者研修」)や「ヘルパー1級」(現:「介護福祉士実務者研修相当」)、「介護食アドバイザー」、「介護予防運動指導員」など数々の資格を取得。現在は、ボランティアで介護を行うほか、講演や執筆活動などマルチに活躍する。Instagram:@katoayana0412, YouTube:加藤家の日常
突然訪れた“その日”を乗り越えて
そうなんです。私が23歳で結婚したとき、加トちゃんは68歳でしたけど、みじんも年齢を感じさせないほどでした。ほとんど家にいないくらい舞台に立っていましたし、本当にパワフルで、エネルギーに満ち溢れていて。
だから、結婚当時に周りの人から介護について話をされても、「加トちゃんに限ってそれはない」って本気で思っていたんです。何の根拠もないんですけれど、介護なんてまるで他人事のように感じてしまっていました。
そうなんです。加トちゃんが70歳のとき、薬の影響でパーキンソン症候群を発症してしまって。しかも、仕事のロケ先でのことでした。
帰宅したときにはすでに40度近い高熱があり、病院に連れて行ったところ、即入院に。お医者さんからは「復帰は難しいでしょう」と告げられ、仕事はすべてキャンセルせざるを得ませんでした。
入院後はますます身体が弱っていき、体重も20キロ近く減って38キロほどに。手の震えでお箸も持てなくなり、症状はどんどん進行していきました。足腰も弱り、一時期は食事を飲み込むことさえ難しいほどに悪化してしまったのです。もう口からご飯も食べられず、点滴や流動食だけの状態になってしまって。
そこで初めて「介護」という現実に直面しました。でも、私には何の知識もなかった。日に日に弱っていく加トちゃんを前に、ただただ無力でした。
とにかく、今の私にできることをしようと。加トちゃんは本が好きなので、毎日病室で小説や新聞を読み聞かせたり、ドリフ(ザ・ドリフターズ)のDVDを流して聞かせてあげたりしました。
そうするうちに、少しずつ喋るようになって、本人から「リハビリを頑張りたい」という言葉が出てきたんです。
そこからの生命力は本当にすごくて、1年でパーキンソン症候群を克服したんですよ。
「なんでもやってあげる」は愛じゃない。資格取得で知った本当の支え方
復活してくれたのはうれしかったのですが、この経験はすごく私にとって転機になりました。あんなに元気だった人が、ある日突然動けなくなるのだから、これから先、私に専門知識がなかったらダメだ、と痛感したんです。
それで、まず「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」の資格を取りに、学校に通い始めました。
衝撃的でした。それまでの私は、加トちゃんのために身の回りのことを全部やってあげることが、愛情表現だと思っていたんです。 ご飯の支度はもちろん、靴下まで履かせてあげていました。
でも、学校の先生に「なんでもやってあげるのは本人のためにならない。本当に愛しているなら、本人が自分で動くようにしてあげないとダメだよ」って言われて。
そうなんです。加トちゃんのためを思うなら、私が変わらないといけないんだ、と。そこから、すべてをやってあげるのをやめて、加トちゃんにできることはお任せして、動いてもらうようにしました。
散歩も身体に良いとわかったので、加トちゃんが可愛がっている愛犬を使って「ワンちゃんがパパと散歩に行きたいって言ってるよ」って行ったりして、誘い出したり。そうやって、少しずつ本人が動くきっかけを作るようにしていきました。
知識があったから救えた命。資格で学んだ冷静な判断力
その後すぐに、資格を取って良かったと感じる出来事があったんです。ある日、異変を感じて起きたら、隣で寝ていた加トちゃんが大量に吐血していて……。 食道破裂でした。
血の量も多かったですし、匂いもすごくて、「もうだめかも……」とパニックになりかけました。でも、資格を取っていたおかげで、どこか冷静に対処しなければと自制している自分がいたんです。
ええ。救急車を呼んで、電話口で「口の中の体液を出してください」とか「脈はありますか」とか言われるんですけど、知識があったから正しく対応できました。
もしあのとき、介護のことを学んでいなかったら、もっとおろおろして処置もできず、助からなかったかもしれません。
資格は夫を守るためだけでなく、パニックになりそうな自分自身を支えてくれる「お守り」なんだと、心から感じた出来事でした。
愛する人を守りたい一心で始めた学びの道。それは、加藤さん自身にとっても、困難な状況に立ち向かうための大きな支えとなっていった。
次回は、資格取得がもたらした日常生活での具体的なメリットについて、さらに詳しく伺っていく。
【加藤 綾菜の“私らしい介護”のカタチ。愛する人を支えるための学び】
◆介護資格のリアルと効果的な勉強法
◆加トちゃんを守るため。介護資格が救った命・・・今回はコチラ
◆介護資格は暮らしの知恵袋!実感したメリットとは・・・coming soon
連載記事一覧へ>>
「音読って意味あるの?」小学生の疑問に対する小島よしおの答えは
◆合格や立身出世を願うなら、大阪天満宮の登龍門をくぐるべし
◆趣味・教養系の資格「難易度×仕事で使える度」MAP
◆1日中楽しめる「那須塩原市図書館 みるる」へ。
◆元Mrs. GREEN APPLE・山中綾華が語る「ライフワークとライスワーク」
撮影=河野 優太
文=SUGARBOY