「座学だけでは受からなかったかも」。山中綾華の社労士試験攻略法
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かつて人気音楽バンドで活躍し、現在はドラマーと「社会保険労務士(以下、「社労士」)」の二刀流を掲げて活動中の山中 綾華さんは、社労士の試験に合格する前から社労士事務所で働きだしたそう。「実務の中で学んだことが、社労士試験にも活きた」と語る山中さんに、座学だけでは気付かなかった視点について、聞きました。
この記事の連載
◆元ミセス・山中 綾華が「社労士」になったワケ
◆勉強で心が折れたときの回復法
◆「単語がなかなか覚えられない」の解決法
◆「社労士」合格前から事務所で働きだしたワケ・・・今回はコチラ
◆「社労士」山中 綾華が描く「これから」
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1度目の不合格を振り返り感じた「実務の必要性」
――現在、「社労士」登録に向けて実務を積んでいらっしゃると思いますが、試験合格後から今の事務所に入所されたのですか?
実は試験に合格する前から、今の事務所で働いているんです。
1回目の試験の後に「なぜ自分は試験に落ちたのか」と振り返ったとき、試験勉強って「これは○、これは×」といった答えの暗記に偏ってしまっていたなと。でも、試験合格後に実際に仕事をするときは、答えの暗記では通用しないはず。だから「なぜこの手続きが必要なのか」「どういう流れでこうなるのか」といった背景を理解することの方が大切だと思ったんです。
それで、「実務を通して、そういった"なぜ"をきちんと学んでいきたい」と、働きながら勉強をすることにしました。
――まだ試験に受かっていなくても、働けるんですね!
「社労士」でないとできない業務もありますが、その他の仕事もたくさんありますからね。私の場合は、ネットで検索して見つけました。できれば女性が代表を務めている社労士事務所で働きたいと思っていたら、家の近くに理想的な事務所があって。
社労士業界は、まだまだ女性の割合が少ない。だからこそ、現役で活躍されている女性の社労士の方から直接学べる環境が、一番いいと思っていたので、見つけたときは「ここだ!」って思って、迷いはなかったですね。
給与計算から始まった実務経験
──実際に働いてみて、いかがでしたか?
デスクワーク自体が初めてなこともありましたし、仕事に慣れるまでは戸惑うことも多かったです。当たり前の話ですが、複数の業務を同時に進めなければいけないですし、勉強で覚えたことも、理解が実務と結びつくまで時間がかかったりして。
勉強との両立なので、大変ではあったのですが、実務の中で学んだことをテキストで再復習できる感覚になり、とても良かったと思っています。
──具体的にはどのような業務を任されていたのですか?
まずは「社労士」でなくてもできる、給与計算から任せていただきました。給与計算の仕事に携わったら、社会保険との繋がりがすごく理解できたんです。
例えば、給与額が変わると社会保険の等級も変えなければいけないというルールについては、テキストで読んだときには「よく分からないから、覚えるしかない」と思っていたのですが、実際に給与計算をやる中で「なるほど、こういうことか」と理解が深まり、納得できました。
──実務経験とセットでやることで、深い理解に繋がると、暗記すべきポイントも頭に入りやすそうですね。
本当にそうだと思います。たとえば扶養の出入りが所得税に関わることなど、テキストで読んでいたときには正直よくわからなかった知識も、実務に直面すると「ああ、こういうことか」と理解できるようになりました。
また、申請業務のサポートも大きな学びになりました。提出された書類同士を突き合わせて記載内容を確認する作業も任せてもらったのですが、そこで書類に記載しなければならない項目の1つ1つの理由が分かり、腹落ちしたんです。そうした経験を通じて、知識が単なる暗記ではなく“現場で使えるもの”に変わっていく実感がありました。
実務で気づいた社労士の本当の役割
──2回目の試験では合格できたということですが、1回目との違いはどこにあったと思いますか?
やはり実務を経験していたことが大きかったと思います。1回目は暗記中心で試験に臨んでしまいましたが、2回目は実務で「なぜこうなるのか」を理解していたので、問題の意図も掴みやすくなっていました。2回目の社労士試験に合格できたのは、働きながら勉強できたからかもしれません。
ただ、実務を経験できた一番の収穫は、結局のところ「法律を使って人を助ける仕事」なんだということが理解できた点だったかなと思います。社労士の仕事は法律がベースになっているので、法律に反することは「ダメです」と言い切るのも、ある意味では正しい対応です。でも、それでは結局は伝わらないというか。相手の事情を汲み取りながら、噛み砕いて伝える力や、”相手の立場に立って考える力”があってこそ、社労士として会社に伴走できるのだろうなと実感しています。
クライアントの社長や労務担当者、さらにそこで働く人たちの仕事を助け、より良い労働環境を整えるために、いかに現実と折り合いをつけるかを提案できることが大事だなと思いました。
──「相手の立場に立って考える力」というのは、具体的にはどのようなことでしょうか?
例えば、業務の中で関わっている会社から事例の相談を受けることがあるのですが、まずは「なぜそうしたいのか」「どういう背景があるのか」を聞くようにしています。
その上で、「このケースですと、こういうリスクがあるかもしれないので、おススメはできません。代わりに、こういう方法もありますよ」といったように、相手の事情を理解した上で、現実的な解決策を一緒に考えるようにして。単に「(法律的に)NGですね」と突き返すのではなく、相手の状況や気持ちを汲み取って、現実に折り合いをつけていくことが求められていると思うんです。
──そのような細やかなコミュニケーションが取れる社労士の先生だと、安心して相談できますね。人の相談に乗ることは、もともと得意だったのですか?
そんなことはなくて、最初は自分のことで精一杯でした。人見知りということもあって、コミュニケーションについて悩んだことも。相手の反応が薄いと不安になってしまうし、「理由を説明したほうが良いかな? それとも、あんまり無駄なこと言わないほうが良いかな?」などと、伝え方をいつも気にしてしまっていた時期もありました。
でも、社労士の仕事に慣れてきて、少しずつ変わって来ていると思います。どんな仕事も同じだと思いますが、社労士の仕事って、自分ひとりでは完結しない。やっぱり相手のことを理解することがすごく大事なんですよね。
──ちなみに、音楽活動は今も続けていらっしゃるんですよね?
はい。事務所の先生がとても理解してくださっていて、音楽の仕事があるときは「休んで大丈夫だよ」と柔軟に対応してくださるのでありがたいです。両方続けられているのは、本当に恵まれた環境だと思います。
「座学だけでは受からなかったかも」。実務を通じて、テキストの知識を“仕事でも使える深い理解”まで落とし込んだ山中さん。勉強と実務を重ねながら見つけた答えは、知識を超えて“人と向き合う力”へと繋がっていました。次回は、現在の社労士としての活動や今後の展望についてお聞きします!
お話を伺ったのは……
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撮影=宇高 尚弘
文=堀池 沙知子