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学び続ける俳優 、工藤阿須加の「知りたい」を原動力にする生き方

インタビュー #気になるあの人を深堀り

学び続ける俳優 、工藤阿須加の「知りたい」を原動力にする生き方

高校時代にプロテニス選手の夢を断念した経験をもつ俳優の工藤 阿須加さん。挫折を乗り越えた経験により、「まずやってみる」「学び続ける」姿勢の重要さをかみしめるようになったのだそう。

2021年からは本格的に農業にも取り組み、俳優業との“二刀流”に挑戦しています。どんなことも「知りたい」から始まるという、その学びのスタイルについてお話を伺いました。

「やりたいと思う気持ちを大切に」。調べて、試して、学ぶ

ーー工藤さんは、俳優業の傍ら、農業にも取り組んでいらっしゃいますよね。キッカケはなんだったのですか?

高校3年生のときに、リンゴ農家の木村秋則さんが書かれた『奇跡のリンゴ』を読んで感動したんです。それで「自分でもやってみたい」と思ったのがキッカケ。そこから、農業に興味が湧いて……。この夏もトウモロコシやピーマン、ナスなど収穫できました。

2021年からは山梨県北杜市で本格的に農業に取り組み、年間15種類ほどの野菜を栽培しているという工藤さん。

ーー興味があるものが出てきたら、まずは何からするのですか?

僕は「知りたい」と思ったら、すぐに調べますね。スマホで検索したり、本を読んだり。今はすぐに情報が手に入る時代なので、ありがたいですよね。調べるだけでも、新しい発見があって楽しい。

でも調べて終わりじゃなくて、現場に行ってみたり、実際に体験したりするのも大事にしています。本やネットだけでは分からないことに気づけますし、やってみて「面白い」と思うこともあれば、「ちょっと違うな」と思うこともある。受け身で待つよりも、自分から動くことで学びが深まると思っています。

とにかく「やってみたい」と思ったら、動く。それで失敗したり、うまくフィットしなくても、経験値が増えるってことですから、ポジティブだと思っています。逆に、やりたいと思ったことを、何もせずに終わらせるのは避けたいですね。

継続に必要なのは「助けを求める」こと

ーー「やってみた」結果、途中で大変だと感じることはないんですか?

もちろん大変だと思うことはありますよ(笑)。でも、そこで「もう無理だ」とやめてしまうと、せっかく始めた意味がなくなる気がして。

だから僕は、人に「助けてください」と言えるようにしています。自分1人でやろうとすると、いろいろと無理がでて、継続できなくなってしまう。そうなる前に、人に頼ることが重要だと思っているんです。そうやって少しずつでも続けていくと、気づけば成長していたりして。

――今、興味があること、挑戦したいことはありますか?

特定の分野があるわけではないのですが、“職人”と呼ばれるような、専門的に技を磨き、1つのことを極めた方の生き方に強く惹かれます。何年もかけて培ってきた知識や技術が身体に染み込んでいるところに、プロとしての凄みを感じずにいられません。

そんな方にいろいろな話を聞きたいですし、自分自身も「技を磨き続ける姿勢」というものを実践していきたいです。

ーーそういう「技を磨く姿勢」は、俳優の仕事にも通じますか?

そうですね。俳優も日々の積み重ねが大事だと思います。たとえばセリフ覚えも、僕は声に出して読むのが一番僕には合っています。自分の耳で聞くと記憶に残りやすいんです。何度も繰り返すことで自然と体に入ってくる感覚があります。

自分に合ったやり方を見つけるのも大事だと思います。人によってやり方は違うと思うんですけど、試してみて合うかどうかを知ること自体が学びなのかもしれませんよね。

ーーまさに「やってみないとわからない」という、工藤さんの学び方そのものですね。

そうですね。結局どんなことも、捉え方次第で無駄にならないと思うんです。中学時代の塾の先生から「知識と経験は裏切らない」と言われたことを、最近になって思い出します。当時は「ふーん」と聞いていたけれど、とても響く言葉だなと思い返しています。


「知識も経験も、自分の血肉になる」。そう信じる工藤さんの学びの姿勢は、俳優業を超えて人生そのものに広がっているようだ。その飽くなき好奇心が、これからの表現をどう豊かにしていくのか。まずは映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』で、その真摯な演技に触れてほしい。

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』

2025年10月31日(金)より全国ロードショー

出演:
吉永小百合、佐藤浩市、天海祐希、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき

監督:阪本 順治
脚本:坂口 理子 音楽:安川 午朗
原案:田部井 淳子「人生、山あり“時々”谷あり」(潮出版社)
配給:キノフィルムズ

© 2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会

お話を伺ったのは……

工藤 阿須加さん

埼玉県出身。2012年のドラマ『理想の息子』で俳優デビュー。主な出演作に、映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017)、『総理の夫』(2021)、ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019)、Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』(2023)映画『ゴールデンカムイ』(2024)、などがある。21年から本格的に農業に取り組み始め、現在は俳優業との“二刀流”に挑んでいる。

撮影=小松 顕一郎
文=斎藤 香

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