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クラゲ飼育担当の学芸員に密着。水族館のバックヤードをのぞき見!【しかくとはたらく。】

インタビュー #しかくとはたらく。

クラゲ飼育担当の学芸員に密着。水族館のバックヤードをのぞき見!【しかくとはたらく。】
【しかくとはたらく。】
資格を活かして働く人を紹介する企画。資格取得のきっかけから勉強法、現在の仕事内容に至るまで深堀りしていく。業界裏話も盛りだくさん!

学芸員というと、美術館や博物館などで資料の収集や展示をする人、そんなイメージを抱く人も多いだろう。

今回取材したのは、「学芸員」の資格を持ち、「マクセル アクアパーク品川」でクラゲの飼育を担当する働きビト。

学芸員としての幅広い知識を用いて業務に従事する姿は必見! 「学芸員」の資格がどのように現在の仕事に活かされているのか、資格を取得するに至った経緯なども伺った。

お話を伺ったのは……

靏田 岳登さん
2000年生まれ、愛知県出身。「マクセル アクアパーク品川」のスタッフとしてクラゲの飼育や展示内容の選択などの業務に従事。大学時代は生命工学部で学び、在学中に学芸員資格を取得。卒業後に「マクセル アクアパーク品川」に就職し、現在3年目。


水族館にて学芸員としての知識を活かす日々

――現在の仕事内容は?

クラゲの飼育を担当しています。もともと学芸員として入社し、3年目となる今年4月にクラゲゾーンに配属されました。

クラゲの育成に適した水槽がずらりと並ぶ。

クラゲはプランクトンの一種で、実はあまり泳ぐ力がない生きものなんです。

水流にのって移動するのですが、クラゲの身体はとても繊細。水槽の壁にクラゲがぶつからないよう水流を循環させる装置がついた特殊な水槽が必要で、バックヤードにたくさん設置されています。

ミズクラゲの給餌の様子。オレンジ色の微生物を与え、クラゲがオレンジに染まるのを確認し、量が適切だったかどうか確認する。成長して大きくなった個体は、人々の目に触れる展示水槽へ移されていく。1/2画像⇒午前、午後と容器を分けて、餌の管理を行う。2/2画像

この水槽の水交換や給餌などを通して、日々、クラゲたちの健康状態や成長具合をチェックするのです。

――学芸員であり、飼育スタッフでもあるということですね。現在の仕事に「学芸員」の資格が活かされていると感じるのはどんなときでしょうか?

そもそも学芸員は、資料の収集や保管、展示および調査研究など専門的事項を司り、博物館などで働く専門的職員のこと。

“資料を管理し、その資料の発信をすること”が学芸員の仕事だと私は考えているのですが、水族館でいうと、“資料=生きもの”になります。

つまり、生きものの飼育は、学芸員としてとても大切な業務。知識を活かしながら、生態の調査や研究をする場でもあるんです。

――クラゲの飼育の他にもお仕事があるそうですが、どんな内容ですか?

クラゲゾーンの水槽メンテナンスや解説の作成、季節演出を行う展示エリアの生きものの選定、バックヤードツアーの案内なども行っています。

「マクセル アクアパーク品川」にはデジタルアートと生きものが融合する展示空間があるのですが、1年に5回程、季節に合わせた企画があり、そのテーマに沿ってどの生きものを展示したらいいかチームで協議。

たとえば”夏の花火”がテーマの際は、イメージに合うカラフルな魚を提案したり、清涼感を覚えてもらえるように青い魚を展示したり。

膨大な種類の魚からセレクトするにあたって、学芸員としての知識が活きているなと感じますね。

また、お客さまが自由に触れ、読むことのできる解説の作成も業務の一環。

正しい資料をもとに、いかに分かりやすくお客さまへ伝えられるかを考えて作っています。

――正しく・幅広く・深い知識が必要不可欠なのですね。もうひとつの業務である、バックヤードツアー案内ではどんなことを心掛けていますか?

巨大な展示水槽を上から見られるのはバックヤードツアーならでは!

小学生以上の学校団体向けにご案内をすることが多いのですが、同じ事柄でも相手に合わせて説明を変え、しっかり伝わるように工夫して話すようにしています。

魚の群れが移動する様子も水槽の上から見ると大迫力だ。

一例ですが、「濾過器(ろかき)」について小学校低学年向けに説明するなら、「魚もみんなと同じで排泄をするよ! そうするとお水をきれいにする必要があるよね。それがこの機械です」と話す。

小学校4年生頃に浄水場について学ぶはずなので、高学年には「浄水場の勉強をしたと思いますが、同じような仕組みです」など。

専門学生には「濾過器を2台設置し、洗浄は2週間に1回程度です」と簡潔に伝えます。

バックヤードツアーで実際に見ることができる、サメの冷凍標本。標本の管理も行っているそう。1/2画像⇒魚たちの給食室ともいえる部屋。コチラでそれぞれの魚に合った餌をつくっている。2/2画像

このように試行錯誤するのは、教育普及が学芸員としての使命だと思っているから。

普段は見られない水族館の裏側を知ることで、少しでも生きものに興味を持ってもらえたらありがたいです。

学芸員として働く夢をかなえるための道のりとは?

――そもそも学芸員になりたいと思ったきっかけは?

キャリア教育というのでしょうか、中学生の頃に将来どんな仕事に就くかを考える授業があったんです。そこで、さまざまな職業を調べていたところ、「学芸員」という資格を知りました。

博物館には美術館や科学館など幅広い分野がありますが、もともと動物が好きだった私は、動物園や水族館など生物系の博物館の学芸員になりたいと思ったんです。

夢がかなった今、担当しているクラゲゾーン。

――どのようにして資格を取得したのですか?

国家資格である「学芸員」に臨むには、大学で文部科学省令の定める科目の単位の修得が必要と分かり、条件に合う生命工学部海洋生物科学科へと進学しました。

私も在学中に取得しましたが、同じ学部に通う学生の約2割が「学芸員」の資格を取っていましたよ。

――資格取得は大学在学時だったのですね。大学で単位を取得する以外にも、学芸員になれる方法はあるのでしょうか?

文部科学省が行う「学芸員資格認定」に合格する必要があるそうです。筆記試験である「試験認定」と、すでに経験のある方は「審査認定」の2つの方法があるのが一般的。

「試験認定」の場合は合格後1年間、学芸員補の職を経験してから資格を得られます。一方「審査認定」では、博物館に関する学識と業績について書類審査が行われ、通れば晴れて学芸員に。

――学芸員としての就職は難関と聞きますが、実際は?

狭き門といわれているのは確かです。学芸員として働いている人は、同級生では数人程しかいません。希望の職場に入れたことはとてもうれしかったです!

これからも学芸員として、水族館の生きものたちを観察し、大切に飼育していけたらと思います。


「学芸員」の資格を活かし、水族館職員として活躍する靍田さん。

将来を見据えて資格を取得し、念願の職場で働き始めてからも学ぶことを欠かさず、職務に従事する姿がなんとも素敵だ。

次回は、「獣医師」の資格を取得し、「マクセル アクアパーク品川」で働く人にインタビュー!

DATA

マクセル アクアパーク品川
東京都港区高輪4-10-30(品川プリンスホテル内)
03-5421-1111(音声ガイダンス)
https://www.aqua-park.jp

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撮影=梁瀬 岳志
文=鈴木 希

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