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Mr.Childrenのライブにも帯同!「柔道整復師」を取得しコンディショニングトレーナーとなった元競輪選手【しかくとはたらく。】

インタビュー #しかくとはたらく。

Mr.Childrenのライブにも帯同!「柔道整復師」を取得しコンディショニングトレーナーとなった元競輪選手【しかくとはたらく。】
【しかくとはたらく。】
資格を活かして働く人を紹介する企画。資格取得のきっかけから勉強法、現在の仕事内容に至るまで深堀りしていく。業界裏話も盛りだくさん!

スポーツトレーナーとしても活躍でき、接骨院や整骨院の独立開業に欠かせない国家資格といえば「柔道整復師」。

元競輪選手の後藤 圭司さんは、現役選手として活躍中にこの資格を取得し、セカンドキャリアへと繋げていった。

現在では整骨院の経営の他、Mr.ChildrenやSEKAI NO OWARIといった、大物アーティストのライブ帯同も。

これまでの経緯や資格の活かし方などについて、後藤さんに伺った。

お話を伺ったのは……

後藤 圭司さん
1973年生まれ。BMKG株式会社代表取締役。1996年〜2014年まで競輪選手として活躍し、引退前の2014年に新豊洲MIFA Football Parkにて「ボディメンテナンス整骨院」をオープンさせ、経営者としてセカンドキャリアをスタート。整骨院経営の傍ら、アーティストのライブ帯同やプロアスリートのコンディショニング&トレーナー業務に従事。2024年晴海フラッグ内にメンテナンス施設「fimm/eyja (フィムノエイヤ)」をオープン。


怪我と隣り合わせ。厳しい競輪の世界で活躍した選手時代。

――後藤さんは、競輪選手として活躍している最中に「柔道整復師」を取得していますが、資格取得にいたった経緯を教えてください。

プロ競輪選手になるためには、競輪学校への入学試験に合格する必要があるんですが、僕の場合は、17歳で初挑戦し、20歳のときに8回目で受かりました。

競輪は競馬や競艇と同じく公営競技で、国が母体。競輪選手の資格を得るためには、「競輪選手資格検定」という国家試験に合格することが必須です。 

競輪選手時代の後藤さん(写真手前)。

当初は70歳まで現役をやるつもりでいました。20年近く選手を続けましたが、競輪の世界はとても厳しく、レースは常に怪我と隣り合わせ……。

それに加えて、競走得点というものがあるんですが、該当期間に連続で目安点を下回ると資格剥奪。1度資格を失ったら、二度とチャンスを得ることはできない世界なんです。

さらにS級・A級・B級とランク分けもあり、僕はS級とA級を行ったりきたりしてました。

――厳しい世界ですね……。70歳まで選手をするつもりだったとのことですが、競輪選手を辞めるきっかけがあったのでしょうか?

結婚し数年経った、30代中頃からいろいろと考え始めまして。

レース中は、時速60〜65kmもの速さが出るという。写真左が後藤さん。

それまでもレース中の接触で、脳挫傷や肺挫傷など大怪我を経験していますが、怪我により出走回数が減るとランクも落ちる。

リハビリしてまたレースに復帰するけど、モチベーションコントロールが難しく、危険を犯してまで上のランクを目指さなくても……と葛藤がでてきます。

怪我以外にも接触があるとペナルティが加算され、1カ月出場停止になって収入がなくなることも…‥‥。

僕も出場停止になったことが1カ月ありまして、このとき、妻の勧めで、近所の自転車屋さんで働いたんです。当時の平均年収は2,000万円程でしたが、時給950円のアルバイトでした。

――スゴい体験ですね!

社会人経験のない僕を妻は見越してたんでしょうね。

競輪選手ということは伏せていたので、年下の店長に顎で使われるし、店に立っても「いらっしゃいませ」も言えない……。電話の取り方も分からない。

はじめは「やってられねえ……」って思いましたが、天狗の鼻を折っていかないとならないんです。

最初は契約を取れなかったのですが、どうやったら買ってもらえるのか?と、考えるようになって。

結果的には僕の素性がバレてしまい、競輪選手を売りに自転車について営業したら、グループ内でトップの売り上げに(笑)。

1カ月経ち選手復帰してからも、自転車屋での仕事は面白くて1年間続けました

――アルバイト経験が貴重な社会経験になったわけですね。

接客したり、仕入れや掛け率はこれくらいでと、時給950円でいろいろノウハウを学べました。

アスリートって、若くしてプロになっちゃうと社会不適合者……ということになり兼ねない。

歳を重ねてから引退して社会に出されても、法人とは? 株式会社って何? という具合で、お金の使い方も分からなかったりして、大変な思いをすることも。それまでの経験で、プライドは妙に高いですし(笑)。

カラダのメンテナンスのために取得した「柔道整復師」。チャンスは向こうからやってきた。

――この頃からセカンドキャリアのために資格取得をされたのですか?

それもありましたが、最初は自分の身体のためでもありました。

レースで怪我をして入院したり、ケアのために病院や鍼、整体とあらゆるところへ行きましたが、医師や施術者に症状の詳細を伝えられないんです。なので、それを伝えるために勉強しようと。

病院には理学療法士も柔道整復師もいますけど、柔道整復師なら独立開業ができるので、資格取得してみようと思い、現役中に3年間、夜間学校に通いました。

――やはりアスリートにセカンドキャリアはつきものなのですね。

そうして学校に通い3年程経った頃に、キャリアチェンジのきっかけとなる出来事が

知り合いから、フットボールと音楽をテーマにした場(のちの新豊洲「MIFA Football Park(以下MIFA)」)を新設するから、その施設内に、プレイ中の怪我にも対応できるコンディショニングスペースをつくらないかと、話がきました。

そんな流れで、「MIFA」の敷地内に「ボディメンテナンス整骨院」を開業。

――トントン拍子で、ことが進んでいったのですね!

この「MIFA」はミスチルの桜井 和寿さんとラッパーのGAKU-MCさんが中心になってはじめたプロジェクトで、フットサルに集まる方々が錚々たるメンバー(笑)!

音楽関係の方もいればサッカー日本代表のメンバーもいました。

フットサルで負傷したアーティストの対応がきっかけで、ライブ帯同に

――フットサルメンバー繋がりで、ライブ帯同のお仕事が始まったのですか?

そうなんです。「MIFA」でそういった方達が試合していると、なぜかいろいろなことが起こる(笑)。

ゴスペラーズの安岡 優さんは試合開始後すぐに肉離れになってしまったことがあり、僕が対応をしたんです。その直後に全国ツアーがあるから、出張メンテナンスできないか?と、打診いただいたのが始まりでした。

ライブ帯同中は、ボディメンテナンスのみならず、喉のコンディションを整えることも。

そこで出会ったイベント会社の方に紹介されたのがSEKAI NO OWARI。現在は、SEKAI NO OWARIとSKY-HI、ミスチルの桜井 和寿さんのボディトレーナーとしてライブ帯同しています。

――ちなみに整骨院を開業したときはまだ現役選手は続けていたのですよね。

はい、オープン当初は現役でした。

ただ、オープンしたての頃にレースで大きな怪我をしまして、自分が車椅子生活になったら、人のボディメンテナンスもできないなと。

それで、整骨院をオープンした年に選手を引退しました。

――整骨院運営にライブ帯同、現在の仕事内容はどのような感じですか?

整骨院の仕事とライブ帯同のボリュームは半々くらい。

一般の方やスポーツをされる方、プロのアスリートなども施術しますが、アスリートとアーティストでも施術アプローチが違います

例えば、競輪選手へのアプローチでしたら、練習内容を鑑みて施術を考えますし、アーティストの場合は、声が出にくくなったときの対応や食事までを管理させていただくことも。

その人その人の悩みを解決するので、「カラダコンサル」という呼び名がしっくりくるかもしれません。ミスチルの桜井さんからは“声帯師”と命名されましたけどね(笑)。

――今年は2号店をオープンさせていますね。

2024年、東京オリンピックの選手村跡地である晴海フラッグ内にオープンした2号店「fimm/eyja」。

晴海フラッグ内に出店した新店舗「fimm/eyja (フィムノエイヤ))」は運動ベースのコンディショニングルームです。

パーソナルトレーニングやボディメンテナンスを主にしてますが、実はスタッフは全員、現役または元アスリート。

僕自身がアスリートの”潮どき”について苦労したところもあったので、「fimm/eyja」がアスリートのセカンドキャリアのきっかけになったり、新しい働き口になってくれればいいなという思いで作りました。

――アスリートのセカンドキャリアの課題にもアプローチしているのですね。

いろいろな方たちにとって心地いいものを提供することも目標の1つですが、アスリートのセカンドキャリアを形成する目的もあるので、あと何店舗かオープンできたらいいなと考えています。


若い頃から競輪選手として全力疾走してきた後藤さん。

セカンドキャリアについて思案し、行動する中で、ご縁がどんどん巡って活躍の幅が広がる――。自ら動くことでチャンスは自ずとやってくるものなのかもしれない。

資格取得を決めたらなら、迷わず駆け抜けるのみ!

DATA

fimm/eyja
東京都中央区晴海5-5-6 101号 HARUMI FLAG  SUN VILLAGE F棟 1階
https://www.fimm-eyja.com

文=池田 裕美

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