ネットにはない情報がここに。約80万冊の雑誌が眠る「大宅壮一文庫」に潜入!
「あの頃読んでいた懐かしい雑誌をもう一度読みたい」「過去の事件やブーム当時のリアルな空気を知りたい」。
情報のデジタル化が進む現代でも、ネット検索だけでは辿り着けない情報がある。そんな貴重な記録と記憶を保管しているのが、東京・世田谷区にある、日本最大級の雑誌専門図書館「大宅壮一文庫」だ。
昭和の言論界をリードしたジャーナリストであり、評論家でもあった大宅 壮一氏が生涯にわたって収集した膨大な雑誌を基に、1971年に設立。休刊・廃刊となった雑誌から現在刊行中の雑誌まで、所蔵数はなんと1万3,500種類、約80万冊にのぼる。
そのほとんどを実際に手に取って閲覧できることから、マスコミ関係者の間では知らない人はいない“知の駆け込み寺”のような存在。今回は、そんな圧巻の雑誌の宝庫へ潜入した。
きょうも図書館日和です。
全国の足を運びたくなる図書館を巡る企画。第8回は東京都・世田谷区にある「大宅壮一文庫」をピックアップ。
閲覧室に本棚はゼロ!? 80万冊の雑誌が眠る「非公開の書庫」からお取り寄せ
「大宅壮一文庫」は、私たちが普段よく利用する地域の図書館とは少し勝手が異なる。初めて訪れた人は、閲覧室を見渡して驚くかもしれない。
2階にある閲覧室。利用者の年代はさまざま。社会学部の大学生の利用も多いとか。
そう、閲覧室には本棚が一切ないのだ。
ここは、来館者が自分で棚を見て回る「開架式」ではなく、資料がすべて奥の書庫に保管されている「閉架式」の図書館。日本が誇る約80万冊もの膨大かつ貴重な雑誌たちを、最適な環境で守り抜くためのシステムである。
だからこそ、ここでの本探しはまるで“宝探し”のようだ。入館料(500円/大人)を支払い、1階に並ぶ検索用PCへ。
「検索の仕方が分からない」「探している雑誌を特定できない」、など困ったときはスタッフが相談に乗ってくれる。
人名や出来事など、自分の気になるキーワードを入力して目的の雑誌を特定する。カウンターで申し込むと、スタッフが非公開の書庫から該当する資料を大切に運んできてくれるという仕組みだ。
普段はスタッフしか入れない書庫だが、月に1度だけ見学できるチャンスがある。
毎月第2土曜日に開催される『迷宮書庫 探険ツアー(要予約)』では、雑誌図書館の裏側を無料で見て回ることが可能だ。
各週刊誌の創刊号も実際に手に取って見ることだってできる!
書庫はまさに”時代の地層”。明治時代から現在までの雑誌がズラリ
今回は、学びのメディア『日本の資格・検定』のために特別に、普段は立ち入れない書庫の奥へと案内してもらった。
書庫に一歩足を踏み入れると、古い紙の匂いに包まれる。そこには思わず息を飲むほどの光景が待っていた。
大宅 壮一氏の自宅跡に建てられたという建物は、外観こそこぢんまりとしているが、一歩裏側へ入ると別世界だ。
地下の書庫へと続く階段。『non-no』、『女性自身』、『ザテレビジョン』など壁には雑誌史を彩ってきた懐かしい表紙が勢ぞろい。
地下2階から地上2階まで、まるで迷宮のように8つもの書庫が広がっているのだが、どの部屋を見渡しても、天井まで届く本棚に週刊誌や月刊誌がすき間なく詰まっている。過去から現代までの途方もない情報量に圧倒されるばかり。
雑誌はすべて種類別、時系列順に整理されている。
「週刊誌や雑誌は大衆の世相を映す鏡。書籍にはない良さがあります」とは、「大宅壮一文庫」に長年従事するスタッフの言葉。
聞けば、「大宅壮一文庫」設立の裏には「読んですぐゴミ箱に捨てられてしまうような週刊誌や雑誌にこそ、その時代の真の世相が反映されている」という、大宅氏の強い信念があったのだという。
なるほど、実際に雑誌を見せてもらい、ページをめくってみると発見の連続。
40代の実業家だったトランプ氏が将来大統領になると語るページの次には、同時期の芸能人のスキャンダル、そして生活用品の広告……。出来事も価値観も、同じ時代の空気ごとそのまま閉じ込めたような誌面に、つい取材を忘れて読みふけってしまった。
大宅 壮一氏が実際に使っていた本棚。年季の入った木の風合いが味わい深い。
部屋ごとに本棚の種類もさまざまだ。
一番古い本棚は、大宅 壮一氏が雑誌のサイズにぴったり合うよう特注したという木製のもの。
月刊誌もずらり。スタッフはどこに何があるかを把握していて、閲覧請求があるとすぐに取り出すことができるという。
新たに加えた金属製の本棚も含め、どの棚にも、時代を積み重ねてきた雑誌の重みがずっしりと詰まっていた。
独自の索引づくりで、読みたい雑誌に出会える確率を大幅アップ
「大宅壮一文庫」を語る上で、欠かせないのが「Web OYA-bunko(ウェブ・オオヤ・ブンコ)」と呼ばれる独自の雑誌記事索引システムの存在だ。
その凄さは、途方もない手作業に裏打ちされている。
細かな独自の索引項目を作るため、なんとスタッフが主要な雑誌の全ページに目を通しているのだ。記事を読み込み、内容を深く理解したうえで、1つひとつ手作業でデータ化しているというから驚きである。
今はデータ化されているが、かつてはカードに手書きで記事のタイトル、関連内容などを記してまとめていたのだそう!
雑誌名やタイトルだけでなく、記事ごとに「誰が登場し」、「何が書かれているのか」、さらにページ数や記事の種類(グラビア、インタビューなど)、細かなキーワードまで丁寧に整理し尽くされている。
独自の検索システム「Web OYA-bunko」のトップ画面。。項目が細かく分けられているところが特徴的。
だからこそ、検索の精度は圧倒的だ。例えば「大谷翔平」と検索すると、タイトルに名前が入っていなくても、記事本文で取り上げられていれば、しっかりヒットする。
ちなみに、記事件数がもっとも多い人物は「松田聖子」、続いて「小沢一郎」「長嶋茂雄」だという。
一般的な図書館では、「タイトルや著者」から本を探すのが限界だが、「大宅壮一文庫」では、記事の中身までピンポイントで探し当てることができる。
「あの雑誌の、こんな感じの企画だったはず……」といった、ふんわりとした記憶や曖昧なキーワードからでも、見事に目当ての記事を導き出してくれるのだ。
これこそが、欲しい情報にたどり着ける確率が格段に高い理由。この血の通った索引システムがあるからこそ、多くのマスコミ関係者が取材や資料作りのために「大宅壮一文庫」を頼りにしているのだ。
「そんな魅力的な検索システムがあるなら試してみたいけれど、世田谷に行く機会がない……」という人も諦める必要はない。実はこの強力なデータベース「Web OYA-bunko」は、「大矢壮一文庫」まで足を運ばなくても利用できるルートがある。
全国の大学図書館や主要な公立図書館でも導入されていることが多く、館内のPCから無料で検索・閲覧が可能。さらに「大宅壮一文庫」の賛助会員(有料)になれば、自宅のPCから検索し、必要な記事のコピーを郵送で取り寄せることもできるのだ。
大宅 壮一氏の書斎を再現した部屋。今回はこの部屋で取材をさせていただいた。
マスコミ関係者がよく訪れる施設だと思われがちな「大宅壮一文庫」だが、その扉は誰にでも開かれている。
入館料が必要で、本棚が見えない閉架式という点では、少し敷居が高く感じるかもしれない。けれど、特別な調べものがなくても大丈夫。「自分が生まれた年の雑誌」や「昔好きだったアイドルの記事」を検索して読み漁るだけでも、あっという間に時間が溶けてしまうはずだ。
ここで得られる生きた情報と、過去へタイムスリップするようなワクワク感は他では絶対に味わえない。「学ぶこと」や「知ること」に意欲的な『日本の資格・検定』読者なら、自分の関心があるジャンルを深掘りする最高のツールになるだろう。
DATA
大宅壮一文庫
東京都世田谷区八幡山3-10-20
03-3303-2000
開館時間:11:00~18:00
休館日:日曜、祝日
利用料金:一般500円(閲覧は10冊まで)、追加閲覧料10冊につき150円、モノクロコピー1枚100円、カラーコピー1枚160円
https://www.oya-bunko.or.jp/
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