働きながらスクールに通い、資格取得! 歴15年の男性ネイリストのキャリアストーリー【しかくとはたらく。】
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【しかくとはたらく。】
資格を活かして働く人を紹介する企画。資格取得のきっかけから勉強法、現在の仕事内容に至るまで深堀りしていく。業界裏話も盛りだくさん!
女性から人気が高い職業「ネイリスト」。
今回取材したのは、そんなネイリスト業界で15年活躍する男性ネイリスト、西橋さん。現在は、東京・表参道にある人気ネイルサロンにてディレクターを任されている。なぜその道を選んだのか、資格取得までの道のり、仕事の醍醐味などについて、話を聞いた。
この記事の連載
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お話を伺ったのは……
アナウンサーの夢が叶わず、一般企業に就職。働きながら「ネイルスクール」に
子どもの頃、よく姉にマニキュアを塗らされていて(笑)。学生時代は、友人にも塗ってあげたり、ネイルチップを作っていたんです。きれいなもの、細かい作業、そしてみんなが喜んでくれることが好きだったんだと思います。でもその当時は将来この仕事に就きたいとは思っていなくて、ただただ自己流で楽しんでいました。
その後、大学に進学して就活したんですが、本当はアナウンサーになりたかったんです。でも、まったく上手くいかずに全部落ちてしまって。アナウンサーは全滅だったので、急いで他の企業も受けました。唯一テレビ局以外で受けたのがドラッグストアでした。無事に内定を頂けて、就職したわけですけれども、正直、特に積極的に選んだわけではなく……(苦笑)。
就職したドラッグストアでは、美容や雑貨など自分の担当コーナーを持つことになりました。せっかくなら自分の興味のあるところをやりたいと思って、「美容を担当したいです」と上司に掛け合ったところ、当時は男性=雑貨、女性=美容という役割分担が一般的で、「男性は雑貨を担当してよ」と希望が通らなくて。
美容担当になれば、マニュキュアの見本なども作れるんです。
西橋さんが勤務する「MARIE NAILS」のネイル見本
でも、やっぱり自分の中で「好きなことをしたい」という思いが強かったのか、入社して半年後に、「ネイルスクールに通おう!」と突然思い立ちまして。
そのときもまだ明確に将来この仕事に就きたいとは思っていなくて、仕事でビューティーを担当できないなら、プライベートでやっちゃおう! くらいのノリでした。こうして振り返ると、あのときに決断していなかったら、今の自分はいないと思うと不思議ですよね。
働きながらの資格取得。仕事とスクールの両立術
平日は仕事、休日はスクールに充てていたので、休みがなかったのは、意外と疲れましたね。でも、僕が通っていたスクールは個人個人でカリキュラムを進められるタイプだったので、自分のタイミングで受講できたのが本当によかったです。もし、学校のようにクラス式で時間割りが決まっているタイプだったら、仕事との両立は難しかったかもしれません。
僕の場合は、スクールに行ける日に集中して勉強する感じでした。長いときには朝から夕方まで8時間くらいスクールにいましたね。仕事のある平日は、スクールには行けないので、帰宅後に「30分だけはやろう」と決めて、家でひたすら自主練習。とにかく手で覚えるように、毎日何かしらネイルに関することに取り組むようにしていました。
スクールに通い始めて半年で、「ネイリスト技能検定」2級を取得しました。そのタイミングで地元のネイルサロンから声を掛けられて、思い切って会社を辞めることに。
ネイルサロンで働きながら1級を目指して、スクールにも通い続けました。当時は今よりも試験の回数が少なかったこともあって、結果的に、最初にスクールに入ってから1級取得までトータルで2年かかりましたね。
地元とはまったく違う東京でのサロンワーク。とにかく技術を磨く日々
地元の広島では男性ネイリストは本当に珍しくて、接客に入ると驚かれることもありましたね。でも皆さん好意的で、「男性ならではの感性でお任せしたい」「男性のネイリストさんに一度やってもらいたかった」などと言ってくださって。
うれしい反面、まだ1、2年目だったのでプレッシャーも感じていました。自分の技術はまだまだだと思っていたし、「期待に応えられるかな」と不安で。もっと技術を磨きたいと思って、「ネイリスト技能検定」1級を取得した25歳のときに上京を決めました。
西橋さんの勤める「MARIE NAILS」は表参道の閑静な住宅街の中にある。
地元とは全然違って、男性だからといって珍しがられることも、ちやほやされることもありませんでした(笑)。
地元のサロンはオープニングスタッフだったので、先輩がいなかったんです。だから注意してくれる人もいなくて、かなりのんびりしていました。でも、それでは技術が向上しないと思って東京に出てきたので、厳しい指導は逆にありがたかったです。
技術面はもちろん、接客面でも「お客さまのリクエストの聞き方はこっちのほうが良い」とか「席への案内の導線を考えて」など、細かく指導してもらって。地元では教えてもらえなかったことばかりで、「これが望んでいた環境だ!」と思いながら必死に吸収していました。
お客さまとの絶妙な距離感を大切に。13年の経験が培ったコミュニケーション術
最初の頃は、お客さまと何を話していいか分からなくて、緊張して黙り込んでしまうことがありました。でも今は話しすぎず、黙りすぎず、しつこくない"絶妙な距離感"でお客さま1人ひとりのビューティーを目指すための伴走ができるようになったかなと。
「このデザインは可愛いけれど、自分には似合わない……」とおっしゃるお客さまが意外と多いのですが、そんなときは「とりあえず試しにのせてみません?」と提案するようにしています。爪の形やパーソナルカラーを気にして「自分には似合わない」と思い込んでいるだけの場合もあって、実際に試してみると全然そんなことなかったりするんです。
せっかく可愛いと思っているのに、固定観念で諦めるのはもったいない。新たな一面を引き出すお手伝いができればと思っています。
立地上、海外のお客さまも多い。「明るい色の単色ネイルも人気です」。
Instagramは日々チェックするようにしています。でもやっぱり女性スタッフやお客さまの“リアルな声”が一番参考になる。
今は個人で開業される人も増えていますが、サロンで働く良さは、スタッフやお客さまから自然と情報が入ってくることですね。1人だとどうしても情報収集に時間を割く必要がありますが、サロンだと日常の会話の中でいろいろな情報が集まってきます。
デザインのアイデアは、実際に素材を見ているときに浮かぶことが多いですね。問屋さんに行って、「このラメきれい!」「これとこれを合わせたら素敵かも」と考えているうちに、どんどん新しいデザインが思い浮かんできます。去年韓国旅行に行った時も、現地の問屋さんに3時間もいました(笑)。
知り合いのネイリストには、写真集を眺めたり、美術館に行く人もいます。それぞれの方法でインスピレーションを得ていると思います。
そうですね。あとは、アウトプットも大切だと思っていて。自分が担当したデザインをSNSで発信することで、得意分野が整理できるようになります。お客さまからの反応を見て、次の提案に活かすことも。
それに、お客さまもInstagramでデザインを探されることが多いので、投稿を見て来店してくださる人もいらっしゃいます。韓国系デザインが得意なら積極的に発信することで、そのテイストが好きなお客様が集まってくれる。自分の強みはどんどん出していった方がいいと思います。
ネイリストの一番のやりがい、向いている人とは?
やっぱりお客さまが幸せな気持ちになってくれるのが一番うれしいです。子どものころに姉にマニキュアを塗ってあげて、喜ぶ姿を見ることが嬉しかった感覚が、未だにずっとあるかもしれません。完成したネイルを見て、「わあ、可愛い!」などと、お客さまが言ってくれることが、僕にとっての喜びですね。
今年39歳になるんですが、年齢的にはサロンワークではなく、マネジメント側に従事してほしいと言われていて、実際去年までは店長、今はディレクターとして、マネジメントも任されています。でも、僕は現場だけは絶対に離れたくなくて。ずっと現場に出ていたいし、マネジメントやるからと、セーブもしたくないですね。
「ネイルが好き」という気持ちは大前提ですが、なにか1つのことに徹底的にマニアックになれる人が向いているんじゃないかと思います。
韓国ネイルやニュアンスネイルなど、ネイルといってもさまざまなテイストがあります。どれか1つだけでも得意なものがあれば、自分の自信にもつながって、ちょっと辛いことがあったときにも「でも、私には○○が得意という強みがある!」と、前を向く原動力になるはずです。
ネイリスト業界がもっと働きやすくなればいいなと思っています。この業界は女性が多いので、結婚や出産などのライフイベントに左右されやすいですし、勤務時間の問題もあります。
前々から気づいていましたが、マネジメントをするようになってから、より強く思うようになりました。それで今、実は「社会保険労務士」(以下、「社労士」)を目指しています。
ネイリストは天職だと話す西橋さん。業界全体の発展を願い、「社労士」取得に挑戦している。
仕事の日は帰宅後に1時間必ず勉強して、休みの日には3~4時間以上やるようにしています。それと、教材のアプリがあるので、通勤などのすき間時間も活用しています。
ちなみに、去年初めて受験したものの不合格で。やっぱり合格率7%の壁は高いですね。でも、せっかく新たな目標ができたので、あきらめずに頑張りたいと思います!
働きながら「ネイリスト技能検定」の資格を取得し、業界で活躍し続ける西橋さん。現在は新たな目標として「社労士」取得に挑戦中だ。
子どもの頃の「遊び」が天職となり、今度はその経験を業界全体の発展に活かそうとする姿勢。西橋さんのキャリアは、好きなことを追求し続けることで道が開けることを教えてくれている。
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文=岩崎 幸