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40代でフランスへ移住、ほぼゼロから語学を習得。エッセイスト・井筒麻三子さんに聞く、大人の学び方

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40代でフランスへ移住、ほぼゼロから語学を習得。エッセイスト・井筒麻三子さんに聞く、大人の学び方

語学や資格の習得に興味はあるけれど、なかなか一歩を踏み出せない。

年齢を重ねるにつれ、「今から始めても遅いのでは」と、新しい学びへの一歩をためらってしまうことがあります。

しかし、エッセイストの井筒 麻三子さんが、ほぼゼロからフランス語を学び始めたのは40代。短期留学やホームステイを経験したのち、パリへ移住し、現地で暮らしながら学びを続けてきました。

新しいことを始めたいと思いながら、なかなか一歩を踏み出せないとき、どうすれば自分の背中を押せるのでしょうか。井筒さんの経験から、大人が学び始め、続けていくためのヒントを探ります。

【エッセイスト・井筒麻三子に学ぶ、学びの伸びしろの育て方】
40代でフランスへ移住し、未経験から始めたYouTubeを世界的人気チャンネルへと育て上げた井筒 麻三子さん。年齢や環境の壁を、彼女はどのようにして軽やかに飛び越えてきたのか。空間づくりから語学習得、未知への挑戦まで、大人になっても学びの歩みを止めないための実践的なヒントをお届け。

お話を伺ったのは……

井筒 麻三子さん
エッセイスト。米ボストン大学大学院修了後、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。『25ans』等の編集者として7年勤めたのち退職し、フリーランスに。ビューティエディター&ライターとして活動する傍ら、文藝春秋『クレア・トラベラー』編集部にも5年在籍し、旅取材などを担当。2014年よりフランス在住。2020年より、パリでの日々の暮らしや蚤の市での買い物、レシピなどを紹介するYouTubeチャンネル『GOROGORO KITCHEN』をスタート。2025年には、自身のECストア『GOROGORO BOUTIQUE』もオープン。新著に『パリの幸せおこもり暮らし』(講談社)。

写真提供=井筒麻三子『パリの幸せおこもり暮らし』(講談社)

好きから始まり、やがて本気へ。猛勉強が自信に変わるまで

写真提供=井筒麻三子『パリの幸せおこもり暮らし』(講談社)

パリでの日々の暮らしや蚤の市での買い物、料理レシピなどを紹介する井筒さんのYouTubeチャンネル『GOROGORO KITCHEN』は、いまや世界中で愛される存在に。

動画の翻訳字幕は英語やフランス語をはじめ、なんと全26カ国語に対応。ご自身で英仏語を正しくととのえた後、それをAIで多言語へ展開し、世界中のファンへ動画を届けているというから驚きです。

言葉の壁を越えて活躍する井筒さんですが、最初の語学への目覚めは、洋楽がきっかけでした。

「中学生の頃から洋楽が大好きだったんです。

歌詞の意味を調べてみたり、あわせて歌ってみたり……。そんなところから自然と英語に興味を持って勉強するようになりました。当時は『楽しいからやる』というシンプルな気持ちでしたね」(井筒さん。以下同)。

その後、大学留学などを経てアメリカ英語をベースに習得。30代後半には、語学学校に通うためのビザを取得して、ロンドンへ移住しました。しかし、そこで大きな壁に直面することに。

「同じ英語だから大丈夫だろうと簡単に考えていましたが、イギリス英語がまったく聞き取れなくて本当にショックを受けました」。

さらに翌年、ビザ取得の関係で大学院の準備コースに進むと、状況はさらに過酷なものになったといいます。

「私以外の生徒は、みんな若者。大学院への進学を本気で目指す20代とグループワークやプレゼンテーションをやらなければならず、私が彼らの足を引っ張るわけにはいかないから、もう必死です(笑)。

毎日のように夜中の3時まで、同じコースの友人と英語で電話をしながら泣きながら宿題をこなす日々。でも、あの時期を必死で乗り越えたからこそ、自分の英語に心から自信が持てるようになりました」。

必要に迫られたとはいえ、心身を削るような猛勉強の経験。それが、英語への確かな自信に繋がっていきました。

楽しいという気持ちだけで乗り越えられない壁にぶつかったときこそ、逃げ場のない環境に身を置き、自分を追い込んでみる。その覚悟とやり切った経験が、大人になってからの学びに揺るぎない自信をもたらしてくれるのかもしれません。

40代、ゼロからのフランス語。「留守電すら分からない」絶望からのスタート

そして2014年、40代にして次なる大きな転機が訪れます。イギリスのビザ取得が難しくなったことから、急遽フランスへの移住を決めました。

「フランス語はほぼゼロからのスタートでした。一時帰国した日本で週に1回レッスンに通い、移住直前にはロワール地方で1カ月間、40歳にしてホームステイを経験しながら語学学校へ通いました。

当時のレベルは、初心者クラスの少し上あたり。旅行や買い物での簡単なやり取りならなんとかなっても、家に届く荷物の不在票の留守番電話メッセージはさっぱり聞き取れず……。

語学学校の先生に『これ、一体なんて言っているのでしょうか』と毎日のように泣きついたりしていましたね。とはいえ、生活に支障をきたすので、やるしかない状況でした」。

そんな手探りの始まりから、早いものでもう12年。現在はYouTubeの翻訳字幕の管理をはじめ、言葉に関わる仕事をされている井筒さんですが、今でもフランス語の勉強は続けていると言います。

「語学をマスターするには、毎日の積み重ねこそが重要。そんなに簡単ではないけれど、年齢を理由に無理だと思ったことはないですね。いつでも今が一番若いから、やりたいと思ったときに始めてみては」。

40代からのスタートでも、地道に続ければ必ず道は開ける。そんな自身の経験をもとに、大人の学びのコツを教えてくれました。

大人だから無理、はない。自分に合った環境を”投資”でつくる

大人になってから新しい言語を習得する過程では、井筒さんも学生時代とは異なる歯がゆさを感じることも多かったそう。

「学生の頃に比べて単語などの記憶の定着に時間はかかります。けれど、『大人だからもう無理』ということはないと思っています」。

むしろ、経験を重ねたからこそのメリットもあるそう。

「自分のことはもうよく分かっている歳なので、性格や生活に合った効率的なやり方を客観的に見つけやすくなりましたね。

私の場合、音声教材を聞きながら一人で復唱するような反復練習は、まったく長続きしませんでした。その代わりに、語学学校で人と関わりながら学ぶスタイルは、とても自分に向いていたのです」。

自分に合った学習方法を見つけた井筒さん。長年語学の勉強を続けてきて、一番大切だと感じるのは「インプットの後に、必ずリアクションが返ってくるアウトプットの場をもつこと」だと言います。

「相手からのリアクションをすぐに返してもらえるような環境に身を置いて、学んだことをすぐに実践できるかどうかが、私にとっては重要でした。

今はオンラインレッスンも一般的になっていますし、外国の方と話せるアプリなどもあります。また、実際に旅行してみて、現地で生きた言語を浴びることで刺激を受けるのもいいですね。そうやって、『人と対面して話す場』を強制的に予定に組み込んでしまうのも手です。

私の場合、うまく話せなかった体験や拙いフランス語に現地の人がリアクションしてくれた喜びなど、対人でのコミュニケーションから『もっと話せるようになりたい』という気持ちが膨らみ、学びへの意欲に繋がりました」。

そして何より、学生時代と違って大人には、自分に必要な環境にお金を投資できるという大きな強みがあります。

「学びに必要であれば、お金をしっかりかけて、モチベーションが続く仕組みをととのえてしまうこと。それが挫折しないための一番のコツかもしれません」。


仕事や家事に追われる日々の中で、新しい学びを始めるのは誰にとっても勇気がいるものです。しかし、井筒さんが自身の経験から実感しているのは、「語学であれ資格であれ、学んでおいて損をすることは絶対にない」ということ。

私たちはつい、「今から始めても遅いかも」「忙しいし、続けられないかも」と、学ぶ前から足踏みしてしまいがちです。

けれど、最初から自分に合った方法を見つける必要はありません。1人での反復練習が続かなければ、人と話す機会をつくる。予定がないと先延ばしにしてしまうなら、先にレッスンを予約する。必要であれば、続けやすい環境にしっかりお金をかけてみる。

自分の性格や生活をよく知り、無理なく続けられる仕組みをととのえること。それが、大人になってからの学びを支える力になるようです。

書籍紹介

『パリの幸せおこもり暮らし』 井筒 麻三子 著 講談社 1,980円

大人気YouTubeチャンネル『GOROGORO KITCHEN』でおなじみ、Mamiko(井筒 麻三子)さんが贈るライフスタイルエッセイ。パリのアパルトマンで実践するリアルな“おこもり生活”をはじめ、家で心地良く過ごすための小さな習慣や、パリのおすすめスポットをたっぷりと紹介。フォトグラファーの夫・Yas氏による美しい写真と、著者直筆のほっこりとしたイラストも必見。毎日の暮らしを豊かにする、幸せのヒントがギュッと凝縮された一冊。

写真提供=井筒麻三子『パリの幸せおこもり暮らし』(講談社)

文=金子 優子


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