未経験でYouTubeを始めてみて、見えたもの。井筒麻三子さんに聞く、大人の「伸びしろ」の広げ方
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「やってみたい」と思うことがあっても、経験がない、もう若くない、失敗したらどうしよう——。年齢を重ねてから新しい世界へ踏み出そうとすると、できない理由はいくつも浮かんできます。
一方で、大人になってからの挑戦には、これまで積み重ねてきた経験が思わぬところで力になることも。
2014年に40代でフランスへ移住し、2020年には未経験だったYouTubeの世界へ飛び込んだエッセイスト・井筒 麻三子さん。現在、『GOROGORO KITCHEN(ゴロゴロキッチン)』は登録者数約50万人の人気チャンネルへと成長しています。
もともと長年、雑誌編集者としてキャリアを重ねてきた井筒さん。そこで培ったリサーチ力は、YouTubeという新しい舞台でも大きな武器になりました。
新しいことに挑戦するとき、これまでの経験をどう活かし、自分の可能性を広げていけばいいのか。そのヒントを伺います。
【エッセイスト・井筒麻三子に学ぶ、学びの伸びしろの育て方】
40代でフランスへ移住し、未経験から始めたYouTubeを世界的人気チャンネルへと育て上げた井筒 麻三子さん。年齢や環境の壁を、彼女はどのようにして軽やかに飛び越えてきたのか。空間づくりから語学習得、未知への挑戦まで、大人になっても学びの歩みを止めないための実践的なヒントをお届け。
コロナ禍が転機に。「5年は続ける」と決めたYouTube
写真提供=井筒麻三子『パリの幸せおこもり暮らし』(講談社)
パリでの料理や蚤の市での買い物、日々の暮らしを届けるYouTubeチャンネル『GOROGORO KITCHEN』。今では世界中に視聴者を持つ人気チャンネルですが、開設の背景には、仕事が減ったことへの危機感がありました。
「YouTubeチャンネルを始めたのは、コロナ禍の2020年です。予定していた仕事が次々とキャンセルになってしまって。とにかく何か新しいことを始めなければ、と気持ちが焦っていました」(井筒さん。以下同)。
そんなとき、友人から「YouTubeをやってみたら?」とすすめられたことが、新たな挑戦のきっかけに。長年、雑誌編集者としてキャリアを積んできた井筒さんにとって、動画制作に取り組むのは初めて。
「夫がプロのフォトグラファー&ビデオグラファーだったということもあり、YouTubeの話を相談してみたんです。『始めるなら本気でやろう』と、撮影から動画編集まで手掛けてくれることに。内容については、自分が一番好きなことは何だろうと考えて、料理のレシピをテーマに決めました」。
こうしてスタートしたレシピ動画ですが、「誰も知らない素人のレシピはなかなか見てもらえなかった」と振り返ります。
それでも、すぐに諦めることはなかったそう。背景にあったのは、スタート時からの1つの覚悟です。
「結果が出なくても、すぐに収益に繋がらなくても、5年間は続けようと決めていました。その覚悟があったからこそ、試行錯誤を繰り返せたのだと思います」。
伸び悩みを打開した、編集者時代の経験
再生数が思うように伸びない時期を経て、ある動画をきっかけに『GOROGORO KITCHEN』は注目を集めるように。
その転機を生んだのは、地道な分析の積み重ねでした。
「注目してもらえるキッカケになった動画は、実はものすごく戦略的に作ったものなんです。世の中でどんなテーマが話題になっているのか、他のチャンネルを徹底的に研究しました。
ただ人気動画を見るだけではなく、自分たちと近いジャンルで伸びている動画を探し、扱われているテーマやタイトルの付け方、サムネイルで何を見せているのかまで細かくチェック。そこで見つけた要素を、自分たちの企画へ落とし込んでいきました」。
一見すると、パリでの日々の暮らしを自然体で切り取っているように見える『GOROGORO KITCHEN』。けれど、その動画づくりは「まずタイトルを考える」ところから始まります。そこから企画を立て、どんな場面を撮るのかを決めていく。日常を撮ってから動画に仕立てるのではなく、「何をどう見せるか」を先に考え、必要なシーンを組み立てているのです。
「やっていることは、雑誌の編集者時代とまったく変わりません。まずタイトルを考えて、企画を立て、それに合わせてどういう撮影をするかを決める。見てくれる人のフックになるツボを探すために、世の中でヒットしているものを調べて反映する。長年、編集者として当たり前にやってきた『超リサーチする』というスキルが、YouTubeという新しいフィールドでも武器になりました」。
動画づくりは初めてでも、コンテンツの作成過程は、井筒さんが長年続けてきた仕事そのもの。新しい場所でも、これまで培ってきた力が思いがけないかたちで活きることになりました。
完璧な答えを探す前に、まず動く。違ったら途中で変えればいい
新しいことを始めるとき、失敗しない方法を十分に調べてから動きたいと思う人も少なくないはず。
けれど、井筒さんはどちらかというと逆なのだそう。
「あまり考えすぎず、まず行動してみるというのが私流です。以前はロンドンで暮らしていたのですが、イギリスでのビザ取得が難しくなって。それなら比較的ビザを取りやすいフランスへ行こう、と決めました。周囲からは、年齢を重ねてから生活の基盤を大きく変えることを心配されたことも。
でも私は、すでにそこで暮らしている人たちがいるなら、自分も何とかなるかもしれない、くらいに考えていたんです(笑)。まじめに考えすぎると、ずっと先の将来まで心配になってしまいますよね。でも、やってみて『違ったな』と思ったら、そのときに次の一手を考えるのもアリなのでは。それくらいの心構えで、新しいことを始めてみても良いと思うのです」。
40代で、言語もままならない中でフランスへ移住し、コロナ禍には未経験からYouTubeを始めた井筒さん。そこで力になったのが、編集者時代に培った経験でした。
これまで身につけてきたものをベースに、別の世界に挑戦し、やってみながら対応していく。自分でも知らなかった可能性が、その先に見えてくる。井筒さんの歩みを見ていると、「伸びしろ」とは、まだ持っていない能力のことだけを指すものではなさそうです。
大人になってからの新しい学びや挑戦は、意外と軽やかに始めてもいいのかもしれません。
書籍紹介
この記事の連載
◆専用デスクはいらない。家で集中するための空間づくり
◆40代・ゼロからのフランス語習得。井筒麻三子流・大人の学び方
◆未経験に飛び込み見えた、大人の「伸びしろ」の広げ方……今回はコチラ
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