石田ひかりのしなやかな行動力。YouTube挑戦で見えた新たな視点
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映画『さとこはいつも』で石田 ひかりさんが演じるのは、子育てがひと段落し、自分のやりたかったことに目を向けていく専業主婦の里子。そんな役柄と重なるように、石田さんご自身もまた、日々の暮らしのなかで軽やかに新しい挑戦を楽しんでいる。
大人の学び直しについて伺った前編に続き、後編では、彼女の行動力にフォーカス。今後の目標について語ってもらった。
お話を伺ったのは……

石田 ひかりさん
東京都出身。1991年、初主演映画『ふたり』ほか『咬みつきたい』『あいつ』の演技で第15回日本アカデミー賞新人俳優賞ほか数々の新人賞を受賞。1992年、連続テレビ小説『ひらり』(NHK)のヒロインに抜擢され人気を博す。以降、数々の映画、ドラマで活躍。近年の映画作品は『ブルーピリオド』(2024)、『リライト』(2025)、第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作『ルノワール』(2025)。YouTube『まぁるい生活 石田ひかり』を配信中。トリプル主演映画『さとこはいつも』が2026年9月18日より公開。Instagram:hikaringo0525 YouTube:まぁるい生活 石田ひかり
始まりは“勘違い”から。悩むより先に行動して得たもの
現在、石田さんが配信しているYouTubeチャンネル『まぁるい生活 石田ひかり』が好評だ。
驚くべきは、編集以外の企画からディレクション、ナレーション原稿の執筆まで、すべて自身で手掛けていること。しかし、そもそもYouTubeを始めたきっかけは、ちょっとした勘違いからだったと笑う。
「芸能界でも、ほとんどの方がYouTubeで配信をされていると聞いて、私もやらなくては取り残されてしまう! と焦ったのがきっかけです。本当はそんなことなかったのに、俳優業の方もみんなやっていると勘違いをしてしまったんですね(笑)」(石田さん。以下同)。
きっかけこそ勘違いだったものの、そこで実際にチャンネルを開設してしまう。そんな「とりあえずやってみる」のが石田さん流だ。
「忙しいから後で」「もう少し調べてからやろう」。大人になるほど、新しいことを始めるのには勇気がいるものだ。しかし石田さんは、結果を気にして一歩を踏み出さないのは「もったいない」と語る。
「新しいことに挑戦するときはドキドキします。私も『誰も見てくれなかったらどうしよう、恥をかくのではないか』と悩みました。でも、やってみてダメだったら、やめればいいだけの話。挑戦しないのはもったいないと思います」。
成功しても失敗しても、行動に移した結果として見えてくるものが必ずある。石田さんの場合は、YouTube配信を経験したことで、作り手の視点を知るという大きな発見があったそうだ。
「動画配信で撮影をディレクションしたり、撮影の裏方を経験したりすることで、自分には『撮る側の視点』が全くなかったということに気づいたんです。これは大きな学びでした」。
愛犬たちと散歩する穏やかな時間や、気の置けない友人と京都を歩き回る姿、さらには"寺の嫁”として年末年始のお手伝いに奮闘する様子など、飾らない自分自身の日常をコンテンツとして届ける作業は、これまでにない未知の領域だったという。
俳優として「誰か別の人生」を表現するのが本業である彼女にとって、自身のチャンネル『まぁるい生活』で発信する内容は、まさに真逆のアプローチといえるかもしれない。
「普段のお芝居は、与えられた台本や役柄に命を吹き込む仕事ですが、YouTubeは自分のありのままの暮らしのなかから『何をどう切り取れば楽しんでいただけるか』をゼロから考えますよね。それがすごく新鮮で、表現者として全く新しい筋肉を使っているような感覚があったんです」。
作り手としての試行錯誤。そのなかで彼女が得た一番の学びは、視聴者からの温かい反響にあったという。
「私の本当に何気ない日々の様子に、たくさんの方が共感してくださって。特別じゃないごく普通の毎日のなかにも、豊かな価値があるんだと気づけたことは、大きな発見でした」。
始まりはちょっとした勘違い。それでも、あれこれ悩む前にまずは一歩を踏み出してみる。その軽やかなフットワークこそが、いくつになっても新鮮な気づきに出会える一番の秘訣なのだろう。
暮らしを守る、学びの面白さ
等身大の暮らしを慈しみ、軽やかに世界を広げていく石田さん。そんな彼女の好奇心のアンテナは今、生活をより良くするための具体的な学びにも向いている。現在、「薬膳マイスター」や「防災士」の資格取得にも興味があるという。
「私が取得している資格は、普通車の運転免許だけなんですが、年齢を重ねると、食や健康、いざというときの備えなど『自分の暮らしや命を守る知識』の大切さを痛感するようになって。だからこそ、今は薬膳や防災など、生活に直結する学びを深めて、資格取得という形に残してみたいんです」。
実は20年近くにわたり、娘さんたちのために毎日お弁当を作り続けてきたという石田さん。食べる人の健康を思い、日々のコンディションに合わせて台所に立ち続けてきたその姿勢は、まさに「その日の体調や体質に合わせて食材を選ぶ」という薬膳の根本的な考え方そのものだ。彼女が「薬膳マイスター」に惹かれるのも、長年の台所仕事の自然な延長線上にあるからなのだろう。
そして「防災士」もまた、予測困難な災害が頻発する今だからこそ、手に入れておくべき極めて実用的なスキル。どちらも、今の時代を自分らしく、安心して生き抜くための暮らしのお守りのような存在だ。
何か新しいことを始めたいと思ったとき、ゼロから新しいスキルを身につけるような、ハードルの高いものでなくていい。石田さんのように、今自分が興味を持っていることや、日々の習慣のその先に、自分に合った学びのテーマを見つければいいのかもしれない。
自分の好奇心に素直に従う等身大の学びが、日々の暮らしに心地良い刺激を与えてくれそうだ。
日常の中で新しい学びを軽やかに楽しむ石田さんだが、その一方で、ひとつの道を歩み続けたからこその喜びを感じているのが、今回の映画『さとこはいつも』だ。長く俳優を続けてきたからこそ、今回の映画では筒井道隆さんと30年ぶりのうれしい再会を果たし、ずっと憧れていた沖田監督の作品に参加するという、ご褒美のような経験ができたと目を細める。
ひとつの道を長く続けることで得られることがある一方で、大人になってから新しい道へ歩み始めることで出会える景色もある。映画『さとこはいつも』で彼女が演じた里子のように、やりたいことに向かって歩み始めるのに遅すぎることはない。
スクリーンの中で新しい挑戦を楽しむ里子の姿に勇気をもらいながら、今の自分の暮らしのなかで、まずは気になる世界をそっと覗いてみる。その小さな一歩が、これからの人生をもっと味わい深いものにしてくれるはずだ。
映画『さとこはいつも』
人生のふとした瞬間にそっと背中を押してくれる、愛とユーモアにあふれた物語。沖田 修一監督のもとに豪華キャストが集結し、誰もが共感できる等身大の悩みや喜びを鮮やかに切り取る。年齢もまちまち、生きてきた時間も道もまるで違う3人の“さとこ”たちが、胸に秘めた想いを書き始めたとき、動き出した彼女たちの人生が少しずつ交差していく。
2026年9月18日(金)より、全国ロードショー。
監督・脚本:沖田 修一
出演:有村 架純、石田 ひかり、姫野 花春/
吉田 羊、オダギリジョー、筒井 道隆ほか
©2026「さとこはいつも」製作委員会
この記事の連載
◆大人の学び直しのコツ
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撮影時衣装
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撮影=奥村 恵子
取材=斎藤 香
スタイリング=Lim Lean Lee
ヘアメイク=神戸 春美








