「簿記3級」は現代の“読み書きそろばん”。公認会計士・小山晃弘先生が語る、すべての人に簿記が必要な理由
『日本の資格・検定』が実施する「取って良かった資格・検定ランキング」や「就職・転職に役立つ資格・検定ランキング」で、TOP3の常連となっている「日商簿記(以下、簿記)」。
名前は知っていても、「経理担当者が取る資格でしょ?」「数字に苦手意識があるから難しそう」と、自分には関係のない資格だと思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、公認会計士の小山 晃弘先生は、経理職を目指す人に限らず、すべての人が「簿記3級」レベルの知識を身につけておくべきだと話します。仕事の場面だけでなく、日々の暮らしや人生の選択にも関わってくるというのです。それは、いったいどういうことなのでしょうか。
今回は、『資格試験ムビスタ 小山のたった7時間で簿記3級』(Gakken)を出版した小山先生に、「簿記」を学ぶと仕事や人生の見え方がどう変わるのかを伺いました。
お話を伺ったのは……

小山 晃弘(こやま あきひろ)先生
税理士法人小山・ミカタパートナーズ代表。YouTuber公認会計士。同志社大学卒業後、4大監査法人の1つであるトーマツで勤めたのち、独立。「型破りな会計士」としてYouTubeでは10.8万人超の熱狂的なファンに支えられ、再生回数は異例の2,000万回を超える。自社を経営しながらも、大学や資格の学校であこがれの人気講師として活躍中。
YouTube:公認会計士/小山あきひろ
「簿記3級」で、社会とお金の“地図”が手に入る
「僕は、『簿記3級』を『現代の読み書きそろばん』に近いものだと考えています。専門職だけに必要な知識ではなく、現代社会を生きる上での常識だということです。資本主義社会の中で経済やお金のルールを知らずに働いたり生活したりするのは、ルールを知らないままゲームに参加するようなもの。実はとてもリスクのあることなんです」(小山先生。以下同)。
「簿記」を学ぶと、売上や費用、利益、資産、負債といったお金にまつわる言葉の意味と、それらの繋がりが見えてきます。いわば、会社やお金がどう動いているかを示す“地図”が、頭の中にできあがるのです。
「その地図を持たないままビジネスをするのは、目的地も道順もわからないまま、知らない街を歩き回るようなものですよ」。
さらに小山先生は、「簿記」を単なる「マネー教育」ではなく、人生に関わる「ライフ教育」だと表現します。
「人によって事情が異なりますが、例えば奨学金も、単に『借金だから避けるべき』と考えるのではなく、進学によって得られる経験や将来の可能性と、返済の負担を合わせて考える必要があります。住宅購入についても同じです。ローンや支出など、お金が出ていくことだけ考えるのではなく、将来的にどれだけの価値があり、何が残るのかまで考える。『簿記』を学ぶと、こうした会計思考が身についてくるんです」。
もちろん、簿記を学んだからといって、こうした人生の大きな選択に対して、たった1つの正解が導き出せるわけではありません。それでも、会計思考を土台にして、自分自身で納得のいく決断を下す。それこそが、「簿記」を学ぶ大きな価値なのでしょう。
キャリアに活かすなら2級、専門職を目指すなら1級
すべての人に身につけてほしいのは、会社や社会のお金の流れを理解するための3級レベルの知識。一方、経理・財務の仕事や会計の専門職を目指すなら、その先の級が選択肢になります。
3級で学ぶ商業簿記に加え、2級では工業簿記も学ぶことに。会社がどこにコストをかけ、どう利益を生んでいるかまで見えてくるので、経理や管理部門を目指す人の武器になります。さらに1級では、上場企業でも使われる高度な会計処理を扱い、公認会計士や税理士といった専門職への道に繋がっていきます。
「万人向けという意味では3級、キャリアの武器という意味では2級、専門職の入り口という意味では1級。自分が目指す仕事や働き方に合わせて選ぶと良いでしょう」。
とはいえ、資格を持っているだけで市場価値が自動的に上がるわけではありません。大切なのは、資格を通じて「数字で考えられる人」になること。そこにこそ価値があると、小山先生は語ります。
「会社は、数字を根拠に考えられる人に仕事を任せやすい。そこが結果として、キャリアにも効いてくるんです」。
「簿記」に必要なのは、計算力より翻訳する力
「数字が苦手だから、『簿記』なんて無理」。そう思う人もいるかもしれません。しかし、「簿記」を理解する上で大切なのは、複雑な計算力ではないと小山先生は言います。
では、計算力の代わりに何が求められるのでしょうか。それは、会社で起きたお金の動きをルールに当てはめて、正しく分類・記録していく「仕訳」というプロセス。一見難しそうですが、その仕組みはいたってシンプルです。
「一番大切なのは、『仕訳は会社の取引を翻訳しているだけだ』と理解することです。会社で起きた出来事を、会計の言葉に置き換えているだけ。仕訳の方法を暗記で乗り越えようとする人もいますが、それでは『簿記』の本質はつかめません」。
つまり、小山先生の言う「仕訳=翻訳」とは、会社で日々起きる出来事を簿記のルールに当てはめて記録し直す作業のこと。
具体的には、日々会社で行われる「商品を売った」「備品を買った」「銀行からお金を借りた」といった取引の1つひとつについて、会社の資産・負債・純資産・収益・費用のどれが増減したのかを整理し、借方と貸方に分けて記録していく。これが、取引を会計の言葉に「翻訳」するということなんだそう。
「僕自身も、ここが腑に落ちた瞬間に、急に勉強が頭に入ってくるようになって。『仕訳』は現実のビジネスを数字で表すということなんです」。
だからこそ、ビジネスの動きを考えずに、暗記だけで「仕訳」をクリアしようとすると、最終的には「簿記」の論理が理解できていないので、つまずく原因になるのだそう。
「簿記3級」合格への近道は、最初に「全体像」をつかむこと
簿記を効率よく学ぶには、細かな仕訳を一つずつ覚える前に、まず全体像をつかむことが大切だと小山先生は言います。一見遠回りに思えますが、自分が今何を学び、それが最終的にどこへつながるのかがわかることで、理解は格段に進みやすくなります。
「最初から細かな処理に入りすぎると、自分が何を学んでいるのかわからなくなります。まず『資産・負債・純資産・収益・費用』という5つの要素と、仕訳から財務諸表までの流れを理解することが重要です」。
会社で起きた取引を仕訳し、その記録を集計して、最終的に決算書である財務諸表にまとめる。この一連の流れを先につかむことが大切です。こうした考え方をもとにつくられたのが、『資格試験ムビスタ 小山のたった7時間で簿記3級』(Gakken)。
「7時間で合格できるという意味ではありません。合格に必要な全体像と、その後の勉強の軸をつかむための7時間です」と小山先生。
全体像を理解した後は、問題演習を重ね、間違えた原因を1つずつ確認していく。細部を最初から完璧にしようとせず、必要な内容を正しい順番で身につける。これが小山先生流「簿記3級」の学び方なのです。
「『簿記』の勉強は、最初の入り方がとても大切。専門用語や細かな仕訳から入ると難しく感じますが、まず全体の仕組みを理解すれば、1つひとつの処理にも意味が見えてくる。過去につまずいた人も、学ぶ順番を変えることで、『簿記』への見方が変わると思います。『簿記』はスポーツや楽器と同じで、見ているだけでは身につきません。問題を解いて、間違えた理由を確認し、次に同じミスをしないようにする。この積み重ねは必須ですね」。
「簿記3級」を学ぶことは、単に資格を増やすことではなく、会社や社会のお金の流れを読み、自分の仕事や人生について、数字を根拠に考えるための“地図”を手に入れること。
「数字が苦手だから」「経理の仕事とは関係ないから」と、これまで「簿記」を自分に必要な学びとして捉えてこなかった人も、世の中の見え方がちょっと変わる面白さを、まずは「簿記3級」から味わってみませんか。
書籍紹介

資格試験ムビスタ 小山のたった7時間で簿記3級
小山 晃弘(解説)長尾 由芳(文) Gakken 1,540円
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カリスマ講師・小山晃弘先生が教える、「日商簿記3級」のスピード攻略に最適な対策本。理解しやすいテキストに加え、全章に「超」面白くて分かりやすい授業動画が付いているため、効率良く学べるのがうれしいポイント。さらに仕訳問題100問が解けるミニブックも付属しており、スキマ時間で着実にマスターできる。「簿記3級」を初めて受験する方はもちろん、短期間で手軽に合格レベルの知識を身につけたい人にもおすすめの1冊となっている。
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