広瀬アリスはどう覚える? 「書く・音読・寝る」暗記術
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映画『沖晴くんの涙を殺して』で、余命宣告を受けた音楽教師・踊場 京香を演じる広瀬 アリスさん。
前編では、未経験から挑んだピアノの演技への取り組み方や、思うようにいかないときも「今はしゃがんでいる時期」と捉える、広瀬さんならではの向き合い方について聞いた。
後編では、俳優として役と向き合ううえで欠かせない、セリフの暗記に注目。何ページにも及ぶ長いセリフを、広瀬さんは普段どのように頭に入れているのだろう。聞いてみると、自分に合うやり方を重ねてきた広瀬さんらしい方法があった。
書いて、音読して、潔く寝る! 広瀬 アリス流「暗記術」
新しいことを覚えようとするとき、なかなか頭に入らず苦戦した経験がある人も多いはず。俳優にとっても、セリフの暗記は避けて通れない。何ページにも及ぶ長いシーンを前に、広瀬さんはどんな工夫をしているのだろうか。
「覚えたいセリフは、ノートに書きます。セリフの間なんかを考えながら、覚えやすいように改行も効果的に使いながら書き写して、それから音読するんです。ものすごく長いシーンの場合は、全部を3回書き出してから音読をして、寝るギリギリまで練習します」(広瀬さん。以下同)。
自分が覚えやすい形にととのえながら、手と声を使うのが広瀬さん流だ。
では、それでも思うように進まなくなったら? そこで広瀬さんが選ぶのが、「寝ること」だという。
「『今日はもう疲れたな』と限界を感じたら、私はいったん寝ます。無理せず休むと、起きたときには頭がさえていて。寝る前にはなかなか覚えられなかったセリフも、意外と頭に残っているんです。煮詰まった状態のまま続けても、立て直すのに時間がかかるので、潔く寝るようにしています」。
睡眠は、学習した情報の記憶を定着させるうえで重要な役割を果たすことが、多くの研究でも示されている。
不安が残るときは、少し早めにアラームをかけ、翌朝あらためてセリフを確認するという広瀬さん。夜は無理に粘るのではなく、眠るための準備にも意識を向ける。
「『今日はここまで』と決めたら、あとはしっかり眠れるように過ごします。スープを飲んで身体を温めたり、ゆっくりお風呂に入ったりして、早めに寝る。その分、朝少し早く起きて、残っていることをやるようにしています」。
夜のうちに何とかしようと抱え込まず、十分に休み、翌朝あらためて確認する。広瀬さんにとって「寝ること」も、セリフを覚えるための大切な時間なのだろう。
料理をしながらセリフも。日常に取り入れる「ながら練習」
自分に合う方法を見つけている広瀬さん。普段の生活の中でも、ふとした時間を暗記に使っているという。その1つが、料理の時間だ。
「作り置きのおかずを作りながら、セリフを口にすることもあります。『これ、焦がしちゃダメだ』などと料理のことも考えるので、ずっとセリフだけに集中しているときとは違って、いい気分転換になるんです」。
料理に意識を向けることで、気持ちがふっと切り替わる。広瀬さんにとっては、その感覚が心地良いのだろう。
もちろん、同じ方法が誰にでも合うとは限らない。けれど、自分はどうすれば覚えたいことが一番頭に入ってきやすいのかを知っておくことは、学びを続けるうえでもヒントになりそうだ。
「やりたい」という気持ちを、学びの出発点に
ここまで、仕事に欠かせないセリフの覚え方について聞いてきた。一方、仕事とは別に、今あらためて学んでいることもある。それが英語だ。
海外へ行く機会が増え、「もっとコミュニケーションを取りたい」と感じたことから、中学1年生の内容まで戻って学び直しているという。
セリフの暗記ではノートに書いていた広瀬さん。英語でも、選んでいるのは紙の教材だ。
「スマホのアプリだと、なんだか頭に入ってこないんです。紙のドリルに書き込んでいくのが一番覚えやすいです。まずは頭で7割ぐらい理解できたらいいな、というペースで進めています」。
大人になってからの学び直しでは、早く効率的に学びたくなるもの。けれど広瀬さんのように、基礎まで戻ることも、紙を選ぶことも、完璧を目指しすぎないことも、自分が続けやすいなら、それでいい。広瀬さんの英語学習からは、そんな肩の力の抜き方が見えてくる。
そして、これからさらに学んでみたい分野について聞くと、以前から関心を持っていた福祉の話に。
「昔、パラリンピック関連のお仕事をしたとき、選手がご自身で義足を調整している姿を見て、とても印象に残ったんです。
小さい頃から福祉に興味があったこともあり、パラアスリートをサポートする義肢装具士の仕事について、もっと知りたいと思うようになりました。いつか自分もそういった知識を学んで、日本の素晴らしい技術を世界に広めるようなお手伝いができたら良いなと思っています」。
「もっと話したい」から始めた英語も、「もっと知りたい」と感じた福祉の世界も、その出発点にあるのは広瀬さん自身の興味や好奇心だ。
学ぶ理由は、それぞれ違う。
自身の「やりたい」を学びに繋げていく広瀬さんは、学びに向かう気持ちについて、こんなふうに語る。
「勉強したいと思えること自体が、すごく貴重だと思うんです。今はまだ自信がなくても、『やってみたい』と思っている時点で、もう一歩踏み出しているんじゃないかなって。だから、その気持ちはそのまま大事にできたらいいですよね」。
広瀬さんの話から見えてきたのは、流行の方法や効率の良さにとらわれず、自分が取り組みやすいやり方を選んでいること。そして、その先には「もっと話したい」「もっと知りたい」という好奇心がある。
どんな方法で、どこから始めるかに、決まった正解があるわけではない。試しながら、自分に合うやり方を見つけていくこともまた、学びの1つなのかもしれない。
映画『沖晴くんの涙を殺して』
末期の乳がんで余命1年と宣告されて故郷に戻ってきた音楽教師の踊場京香(広瀬アリス)が、常に笑顔を絶やさない高校生・沖晴(木戸大聖)との交流をきっかけに自分自身と向き合っていく物語。人とのふれあいが心を動かし、生きることに前向きになっていく。命をテーマにしながらも悲壮感は感じさせず、登場人物たちの人生が心に沁みわたるように広がっていく感動作。
2026年10月2日(金)より全国ロードショー
監督:矢崎 仁司
原作:額賀 澪『沖晴くんの涙を殺して』(双葉文庫)
出演:広瀬 アリス、木戸 大聖、満島 真之介、北乃 きい、戸田 菜穂、根岸 季衣ほか
配給:彩プロ
©2026 額賀澪/双葉社「沖晴くんの涙を殺して」製作委員会
この記事の連載
◆学びが上手くいかない日に思い出したいこと
◆「書く・音読・寝る」暗記術……今回はコチラ
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撮影=佐野 美樹
取材=斎藤 香
文=学びのメディア『日本の資格・検定』編集部










